12 賢者の女王2
「その……私が『魔族の力』を持っていることは、あまり公にしないでいただけるとありがたいのですが」
俺はコーネリアに切り出した。
「ええ、もちろんです。あなたが魔王を討ち、世界の平和を守るために最前線で戦ってきた英雄中の英雄といっても、その力が魔族に由来するものと知れば、民の印象も変わりましょう。このことは私の胸の内だけに留めておきます」
彼女は微笑んだ。
「ただ、あなたの力に興味があっただけなのです。一人の魔術師として――研究者として、ね」
「そう言っていただけると助かります」
「あなたの力、日々増大しているのではありませんか?」
コーネリアがたずねた。
「えっ……」
ギクリとなる。
白の世界でシャドウに言われたことを思い出していた。
確かに俺の『魔族の力』は以前より大きくなっている。
そして、際限なく力が増していけば、いずれ俺は力に飲みこまれる――。
「私があなたに声をかけたのは……あなたから、ある種の『危うさ』を感じたからです、カイン殿」
コーネリアが言った。
「世界の平和を守る先鋒たるあなたが、いずれ世界の危機になるかもしれない……それを放っておくことはできません」
彼女は何を言おうとしているのだろうか。
俺は警戒心を強めた。
まさか『世界の危機になる前に、俺を討つ』なんて言い出さないだろうか。
「あら、身構えないでくださいね。私はあなたを救うための力になりたいのです」
コーネリアが微笑んだ。
「魔を抑え込むために必要なものは、何だと思いますか、カイン殿?」
その問いかけに俺はハッとなった。
白の世界で、シャドウが俺に伝えようとした言葉――。
俺が魔族の力に侵食されるのを防ぐための方法がある、と言っていた。
肝心の内容を聞くまで、白の世界に留まることができず、聞き逃してしまったのだが――。
「魔を抑えるだけの強大な力、でしょうか」
たぶん違うだろうな、と思いつつ、他に思い浮かばないため、俺はそんな答えを告げてみる。
「ふふ、最強の英雄らしいお答えですね。確かにあなたは今まで自分の『魔』を自分自身の精神力で抑え込んできたのでしょう。ですが、それには限度があります」
コーネリアが言った。
俺は黙って彼女の言葉を聞いていた。
「魔を抑えるために必要なものは、聖なる力。あなたに必要なのは、一年前の勇者選定儀式でこの世界に具現化した勇者の武器――」
どくん、と心臓が高鳴った。
まさか――。
彼女が言おうとしていることを予想し、俺は呆然となる。
「聖剣ラスヴァール。あなたはそれを手にしなければなりません」
コーネリアが告げた。
「聖剣……ですか」
俺は彼女を見つめる。
「ですが、私は勇者として選ばれた存在ではありません。果たして聖剣を手にできるかどうか……」
「あら、ご謙遜を」
コーネリアが微笑む。
「あなたがしてきたこと……そして、今もしていること。それはまさしく――勇者の行動そのものではありませんか?」
「えっ……」
呆然と彼女を見つめる。
「カイン殿……あなたは一年前に非業の死を遂げた勇者リーヴァルよりも、すでに勇者にふさわしい働きをしていますよ。いえ、あなたこそが勇者と言っても過言ではないでしょう――勇者カイン・ベルスト」
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