11 賢者の女王1
「カイン様? あの英雄の」
「まあ、本物よ!」
「お初にお目にかかります、カイン様!」
と、十数名の美女が四方から押し寄せ、アリシアごと俺を取り囲んだ。
たまにパーティに出ると、こういうふうに囲まれることがあるんだよな。
「カイン様の武勇伝は常日頃からお聞きしております。素敵な方だと憧れていました」
「本物は一段と凛々しくて……ああ、お会いできて嬉しいです」
「カイン様、私のことも見てくださいな」
「ちょっと、カイン様は私とお話しするのよ!」
「はあ? あんたは引っこんでなさいよ!」
「ちょっと、この中で一番美人なのは私でしょ! ね、カイン様?」
「あたしの方がスタイルいいし!」
「私、脱いだらすごいですよ?」
なんだか、俺を巡って全員が火花を散らしているような……?
俺は彼女たちから逃げるようにして、その場から離れた。
いったんバルコニーに避難する。
と、
「カイン様は大人気ですね」
アリシアがジト目で待ち受けていた。
「アリシア……様?」
「ぷいっ」
拗ねたような顔をして、彼女は去っていった。
まさか、嫉妬……?
いや、それこそまさかな。
アリシアは本当に嫉妬してたんだろうか?
まさかとは思う反面、もしそうだったら少し嬉しい。
俺のことを多少は意識してくれてる、ってことだからな。
と、
「魔王軍残党との戦いも終わりが近い。その後、カイン殿はどうなさるおつもりですか?」
ふいに背後から声をかけられ、俺は振り返った。
そこには一人の少女が立っている。
当然、王族か貴族だろう。
「私はコーネリア。バズラ国を治める者です」
「コーネリア陛下……あの『賢者の女王』――」
俺はハッと目を見開いた。
世界でも有数の魔術師として知られ、古王国バズラの女王でもあるコーネリア――。
同じ『世界有数の魔術師』でも、シリルのように戦闘に長けているわけではない。
コーネリアの専門は『研究』だ。
魔法学の研究において、彼女は世界最高の権威だった。
「お目にかかれて光栄です、陛下」
「私も光栄ですよ、カイン殿」
コーネリアが微笑んだ。
それからスッと目を細め、
「……なるほど。噂通りに魔族の力を宿しているのですね」
その瞳に赤い光が宿っていることに気づいた。
【探査】系統の魔法だろうか?
だとしたら、初対面の人間に対して、さすがに不躾だと思うが――。
もちろん、角が立つといけないので、そんなことは口に出さない。
「はい。とある戦いにて、魔族と体の一部が融合し、それ以来――」
俺は適当に言葉を濁した。
本当の事情はだいぶ違うのだが、それを話すと必然的に『一周目の世界』のことまで話さなければならなくなる。
だから、俺の魔族の肉体について由来を話すときは、もっと簡略化した『偽りの由来』を話していた。
「魔族と体の一部が融合……そうは思えませんけど……うーん」
コーネリアは俺の言葉を否定した。
まさか、見抜かれている――のか?
「……あ、し、初対面の方に【探査】なんて失礼にもほどがありますね。申し訳ありません!」
と、いきなりコーネリアが頭を下げた。
今ごろになって、さっきの【探査】のことに思い至ったらしい。
一国の女王がここまで謝罪するとは……俺はちょっと面食らってしまった。
「私、夢中になると周りが見えなくなることがありまして……大変失礼いたしました。どうかお許しください」
「い、いえ、お気になさらないでください」
俺は両手を振った。
ちょっと癖がありそうな女性だな、コーネリアって――。
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