10 運命を変えるために
「で、俺が現れた理由だが――お前に一つ伝えたいことがあってな」
「伝えたいこと?」
「お前の中の『魔族の力』が増大していることは今伝えたよな。で、それに関連してもう一つ――あの『塔』のことを教える必要がある」
「塔?」
ここからはるか遠い先に一本の塔が立っている。
雲間にまで届く長大な塔だ。
以前、この世界に来たときと塔の様子は変わらない。
「あれは、封印装置なんだ」
シャドウが言った。
「封印?」
「『一周目の世界』において、お前は聖剣と魔族の力――つまり聖と魔の力を両方使って戦っていた。だからバランスが取れていた。だが今、お前からは聖剣が失われている」
シャドウが語る。
「お前は魔の力だけで戦っている。するとどうなるか分かるか?」
俺は黙って奴の次の言葉を待つ。
心臓の鼓動がさらに跳ね上がった。
「お前はこのままでは魔の力に乗っ取られる。そして――やがては完全な魔族になるだろう」
「何……!?」
「そう、かつての魔王を超える存在――いや、お前こそが新たな魔王になるんだ」
シャドウの説明に、俺はとっさに言葉を返せなかった。
今や心臓は痛いほどに早鐘を打っていた。
「俺が……新たな魔王に……!?」
突然聞かされた衝撃的な話に、俺は呆然と立ち尽くしていた。
「……それがさっき言った『俺がお前になる』という話につながるのか」
「ご名答」
シャドウは嬉しそうだ。
「まあ、悲観するな。それを止める方法もちゃんとあるさ」
シャドウが笑う。
「俺はそれを伝えるために、わざわざここまで主を呼び出したんだからな」
「シャドウ……」
「さっき言ったように、もともとお前は聖剣の『聖なる力』と魔族の『魔の力』の両方でバランスを取り、戦ってきた。で、聖剣が失われてバランスが崩れた……なら、それを取り戻す方法は一つだ」
シャドウの笑みが消えた。
真剣な表情で俺を見つめる。
「その方法とは――」
そこで突然、景色が切り替わった。
「えっ……!?」
気が付けば、俺は元の部屋の中にいた。
「肝心なことを聞けなかったな……」
俺はため息をつく。
あらためて、奴から言われた言葉を反芻した。
「俺は――」
グッと拳を握り締める。
「シャドウ、お前にこの体は明け渡さない。そうだ、俺は」
魔王になんて、ならない。
夜になり、俺は宴の会場にいた。
アリシアに用意してもらった黒い正装姿である。
会場内には各国のお偉いさんが集結していた。
その中には、もちろんアリシアの姿もあった。
今日は赤いドレス姿で、一段と美しい――。
「カイン様!」
俺に気づいたアリシアが駆け寄ってくる。
「色々と用立てていただき、ありがとうございました」
俺は正装を用意してもらった礼を言った。
「いえ、こちらが突然お誘いしたので……その、お似合いですよ」
アリシアが微笑んだ。
「アリシア様もお美しい」
同じく微笑む俺。
「まあ……」
たちまちアリシアの顔が真っ赤になった。
こういう台詞は――社交辞令を含め――言われ慣れてると思うけど、そうでもないのかな?
「カイン様に言っていただけると嬉しいです。あたし」
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