8 アリシア姫
アリシアの周囲には護衛の兵士や数名の大臣もいた。
「おお、カイン様」
「ご活躍ぶり、聞いておりますぞ」
「魔王を討ち、その残党もことごとく討ち、あなたのおかげで世界に平和がもたらされております」
「我らの軍も幾度救われたことか……」
「あなたこそ、まさしく稀代の英雄――」
大臣たちが笑顔で俺に一礼する。
「私ごときに過分なお言葉、恐れ入ります」
俺もかしこまった言葉遣いで答礼した。
国のお偉いさんたちが、俺にこぞって頭を下げてくると、こっちも恐縮してしまう。
『一周目の世界』では俺はただの荷物持ちだった。
その後、勇者以上の力を得て魔王軍と戦ったけど、そのときには世界の大半は魔王軍に支配されたり、滅ぼされていたし、こんなふうに感謝される機会はほとんどなかったからな……。
だけど、この『二周目』では世界への被害は最小限で済み、今では大半の国が平和を享受している。
もちろん魔王軍の脅威が完全に去ったわけじゃないけど、残党たちは俺やガードナーたちで片っ端から討伐しているから、世界にとって大きな脅威にはなっていない。
「世界の主要国で定例会議が行われているのはご存じですよね。今回はこの都市で行われておりまして――」
アリシアが俺に言った。
「会議の後には宴が催されます。どうでしょう? よろしければ、カイン様もご参加いただけませんか? 私たち各国の元首から、ぜひ感謝の意を表したく」
と、微笑む。
やっぱり――可憐だ。
その笑顔には思わず見とれてしまう。
もちろん、今のアリシアは俺の手の届くような女性ではないけれど。
彼女への想いは、ずっと変わらない。
「あ、急にこんなお誘いをしてしまって……申し訳ありません。ただ、あたしもカイン様が来て下さったら嬉しいというか、えっと……」
アリシアが照れたように頬を赤らめた。
そう、照れ屋なところは『一周目』と変わらない。
「アリシア様からのお誘いが嬉しくないはずはありません。もちろん伺います」
彼女の態度を微笑ましく思いながら、俺も微笑みを返した。
「ただ、戦闘用の格好で参るわけにもいきませんし、正装の用意に少し時間をいただければと……」
「も、もちろんです! あの、身の回りのものなどは、よろしければ我が国の方で手配させますので! カイン様はそのままお越しいただいて結構です! 来ていただけるだけで、みんな喜びますので! 特にあたしが!」
めちゃくちゃ前のめりになってアリシアがまくしたてた。
「お、おう……」
思わず『一周目』のときみたいな態度を取ってしまった。
「カイン様?」
「……失礼いたしました。では、宴の時間までに伺います」
「ふふ、楽しみにしていますね」
嬉しそうにするアリシアの笑顔は、どこまでも可憐だった。
俺もテンションが上がってきた――。
「宴かぁ」
俺は宿屋に行き、顔がにやけるのを抑えられなかった。
一直線に故郷に戻るつもりが、少し寄り道になってしまったけど、アリシアのいるパーティに出られるのは素直に嬉しかった。
身分違いで、結ばれない恋だろうけど――『一周目』のときの想いは、今もくすぶっている。
「――ふん、すっかり英雄様だな」
突然、声がした。
「えっ……!?」
次の瞬間、俺は――見渡す限り純白の世界にいた。
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