表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/108

2 俺はかつての強さをそのまま持ち越している


 村での生活が始まった。


 平穏な日々が戻ってきた――と思いきや、そういうわけでもなく。


「おい、昨日言ってた金は持ってきたのかよ?」


 領主の息子オットーが俺をにらんだ。


 そうだ、俺はこの村でいじめられてたんだ。


 領主の息子はこの辺り一帯を回り、俺みたいに気弱な人間にこうして金を貢がせていた。


 こいつにとっては、ただの遊びだろう。

 けど俺にとっては苦しくて、屈辱的で、本当にこいつを憎んだもんだ。


「金は、ない」

「ああ?」

「父親の威光で偉そうにするのは、いい加減に辞めたらどうだ? 見苦しいぞ」

「てめぇ……この俺様になんて口の利き方だよ!」


 オットーが怒声を上げる。


「おい、こいつにお仕置きだ! 徹底的に痛めつけてやれ!」


 と、取り巻きの大男たちに言った。


 彼らはいずれもオットーの忠実な手下である。

 その体格に比して腕っぷしも強い。


 当時の俺にとって脅威そのものだった。


 けど、今は――。




 ぱりぱりぱりっ。




 軽い雷撃を当てるだけで、全員失神した。


「……………………へっ?」

「ごく少量の雷撃魔法だ。命に別状はない」


 叩きのめしてもよかったんだが、手っ取り早い手段を取らせてもらった。

 ちなみに、魔法に関しては俺には元々まったく素質がなかった。


 けど、【吸収】スキルで魔族と融合することで、いきなり使えるようになった。


 どうやら過去に戻ってきて、若返った状態になっても魔法は引き続き使えるようだ。


 ……ということは、俺の体は魔族と融合した状態のまま若くなってる、ってことか……?

 その辺りの『現在の俺の能力』は早いうちにテストしておかないとな。


 さっきまでは、その気力さえ湧いていなかった。


 ただ、差し迫ったピンチのおかげで、こうして魔法を発動できたし、ちょっとだけ気力も回復した。


「ありがとう、オットー」


 これは皮肉ではなく、本心からの感謝だ。


「後はお前だけだ」

「ひ、ひいっ」

「自分の力で戦ってみたらどうだ、オットー?」

「な、なんで……あのヘタレのカインが、こんな……ま、魔法を……?」


 オットーはすでに戦意喪失しているようだ。


「お前が領地を巡回して、村や町でいじめを行っていることは聞いてるぞ」


 俺は彼をにらむ。


「もう二度といじめをしないと誓え。そして、今までにお前がいじめた人間すべてに謝罪し、同時に十分な慰謝料を払うんだ。いいな?」

「うううう……」

「返事は?」

「ひいいいい、わ、分かりましたぁぁぁぁっ!」


 オットーはその場に這いつくばって頭を下げた。


 ……よし、これだけ脅せば、もういじめはしないだろう。

 もし万が一、再犯するようなら今度はもっときついお仕置きをすることにしよう。


 ――といっても、こんな奴に構っている場合じゃない。


 俺にはもっと――大事な使命がある。




 しばらく歩き、俺は村の外れまでやって来た。


 この辺りには小さな森がある。


「カイドールの木が伸びてる……!」


 俺は周囲の木々より長く伸びている白い樹木を見て、呆然とつぶやいた。


「これがあと数センチ生長するころ、魔族が攻めてくる――」


 確か、そのはずだ。


 俺の記憶が確かなら……。

 数か月以内に、ここに最初の魔族が現れる。


 そして両親や友人たちを含めた村人すべてが殺される――。

 と、


「カイン……?」


 幼なじみのリアムがやって来た。

 キョトンとした顔で俺を見つめる。


「どうしたの、こんな場所で? 畑から随分と離れてるじゃない」

「いや、畑仕事はもう終わらせたんだ」

「えっ、もう!?」


 まあ、今の俺の体力は常人をぶっちぎってるからな。


 ……なんて言えないんだけど、




「ここが人間界か」




 突然、声が響いた。


「えっ……?」


 まさか、と思って振り返る。


 そこには赤黒い体をした男たちが立っていた。

 頭からは角が、背からは翼が生えた異形。

 それが、全部で三体。


「魔族――!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑の☆☆☆☆☆評価欄↑をポチっと押して
★★★★★にしていただけると作者への応援となります!


執筆の励みになりますので、ぜひよろしくお願いします!


▼カクヨムでの新作です! ★やフォローで応援いただけると嬉しいです~!▼

忌み子として処刑された僕は、敵国で最強の黒騎士皇子に転生した。超絶の剣技とチート魔眼で無敵の存在になり、非道な祖国に復讐する。


― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ