15 そして、世界に平和が訪れる
魔王との、そしてアベルとの戦いから一週間が過ぎていた。
この一週間は目まぐるしかった。
世界を救った英雄として各国に招かれ、連日のパーティ。
もちろんアリシアとも色々と話すことができた。
正直、彼女を見ていると、想いがあふれそうになる。
『一周目の世界』では恋人同士だったからな。
とはいえ、この世界のアリシアは『一周目』のように国を滅ぼされて、レジスタンスの剣士になったりはしていない。
当然、王女としての生活を送っている。
俺とは住む世界が違う――。
「寂しそうだね、カイン」
シリルが声をかけてきた。
彼女もあの戦いで各国のお偉方を超魔族の手から救った功績で、俺と同じく英雄として称えられていた。
他にクレインやターニャ、ガードナーも同じだ。
「平和っていいなぁ、って思ってさ」
「そうだね。もう戦わなくていいなんて嘘みたい」
シリルが微笑む。
「まあ、魔王軍の残党が各地に潜んでいるみたいだから、これを倒すためにまだまだ戦闘に長けた人間は必要だ。もうひと踏ん張り、ってところかな」
俺は気を引き締めた。
それから右腕に視線を向ける。
黒い甲冑に覆われた右腕。
それは魔法技術によって造り出された義手だった。
アベルに斬り落とされた右腕は結局、再生できなかったのだ。
といっても、この義手は以前の腕と変わりなく動くし、日常生活においては不便を感じていない。
戦闘になると、壊さないように戦い方に工夫が必要だが――。
「カイン様、シリル様、こちらにいらっしゃいましたか!」
一人の兵士が走ってきた。
胸元に月の紋章が刻まれた黒い鎧を着ている。
『戦団』の兵士のようだ。
連合王国戦団。
通称を『戦団』。
それは魔王軍の残党を倒すため、各国が手を取り合い、設立した世界組織的な軍である。
俺やシリル、クレイン、ターニャ、そしてガードナーはここに所属し、魔王軍の残党を日々戦っているのだった。
「新たな魔王軍残党がディルム公国を攻めている模様――ご助力願います」
「分かった。すぐに向かう」
「私も一緒に」
と俺を見つめるシリン。
「じゃあ、行くか。魔王軍を打ち滅ぼす日まで――」
「そうだね」
俺たちは歩き始めた。
「ねえ、カイン」
「ん?」
「魔王軍が地上からいなくなったら……その後、カインはどうするの?」
「んー、そうだな……」
俺は思案する。
完全に平和な世界が訪れた後、俺がしたいことは――。
※
彼らは、世界を憂いていた。
「カイン・ベルスト?」
「はい、魔王を討ち滅ぼした――まさに真の勇者といえる存在です」
「しかし、この反応……あまりにも禍々しすぎる」
「一説によれば、魔王すら超えるほどの魔力を持っているとか」
「あるいは、彼こそが新たな魔王という可能性も」
「魔王の脅威が去っても、まだまだ世界平和というわけにはいかんか」
「むしろ、これから先が真の世界の危機という可能性もありますな……」
彼らはただ、世界を憂いていた。
そして、彼らの憂いが現実のものになるのは――。
それから一年後のこととなる。
※次回から新章になります。二週間ほどお休みをいただき、12月1日から再開予定です<m(__)m>
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