10 カインとアベル、最後の対峙4
「っ……!?」
地面に降りた瞬間、俺は信じられないものを見た。
うかつ、だった。
俺の戦闘能力はアベルよりも上だと判断し、心のどこかに油断が生じていたのか。
「アリシア……!」
アベルの足元から黒い魔力のロープが伸び、その先に一人の女を拘束していた。
「くくく、形勢逆転だ」
勝ち誇るカイン。
どうやら今の一連の行動は俺から逃げるためではなく、アリシアを捕らえて人質にするためだったらしい。
たぶん空中を飛びながら、魔力のロープを伸ばしてアリシアを探したんだろう。
そして俺がここに来るまでに彼女を捕らえ、拘束した――。
「知っているぞ……お前にとって弱点はこの女だ」
アベルはニヤリと笑った。
「くっ、離しなさい――」
アリシアがもがく。
「うるさい」
アベルの目が妖しい光を放つ。
「がっ……!?」
アリシアの体がビクンと震えた。
「魔剣の力を使って【麻痺】【毒】そして【痛み】を同時にかけてある。お前が少しでも抵抗するなら、これを強めて殺すからな」
「が……は……あぁ……」
アリシアは目を見開き、口から涎をこぼして苦悶の表情を浮かべていた。
「やめろ!」
「お前が抵抗しないならな」
アベルが魔剣を掲げる。
「武装を解け」
「……分かった」
俺は魔力剣を解除し、手にした鉄の剣も放り捨てた。
チラリと周囲に視線を向けるが、大量召喚された魔族を前にシリルたちは手こずっている様子だ。
すぐに俺のところまで加勢に来るのは無理だろう。
ここは――俺がなんとかするしかない。
「アリシア――」
俺は彼女に視線を向けた。
すでに意識もうろうとしているのか、返答はない。
俺は構わず言葉と継いだ。
「必ず助ける」
『一周目の世界』では助けられなかった君を。
この世界では立場が違いすぎるし、彼女と結ばれることはないかもしれないけど――。
でも、構わない。
アリシアが生きていてくれるだけで。
だから、絶対に助ける……!
ざんっ!
「ぐっ……ああああああああああああああああっ……」
俺の右腕に熱い衝撃が走った。
見れば、肘から先が消し飛んでいる。
「まず一本」
アベルが笑った。
血に濡れた魔剣がその側に浮かんでいた。
両腕を失っても、魔力で遠隔操作して魔剣を操れる、ということか……。
「このまま腕も足も全部もいでやるからな」
抵抗すれば、アリシアが殺される。
このまま無抵抗に、奴に切り刻まれるしかないのか。
「絶体絶命、ってやつだな」
「……何を落ち着き払っている」
アベルが不快そうに吐き捨てた。
「お前はこれから俺に斬り殺されるんだぞ。できるだけ苦痛が長く続くように、少しずつ少しずつ……お前の肉と骨と皮を斬って斬って斬って斬って斬って斬って……くくく、楽しみだ」
「そうか」
俺はアベルを冷ややかに見つめた。
「でも、お前にとって楽しい事態にはならないようだ」
「あ?」
アベルが俺をにらむ。
何を言っているのか分からない、という顔。
あるいは俺が捨て台詞を言っているとでも思ったのか。
次の瞬間、
どんっ……!
「が……は……」
アベルが口からゴボリと血の塊を噴き出した。
「な、なん……で……」
呆然と背後を振り返る。
そこには――、
「油断したな」
ガードナーが立っていた。
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