7 カインとアベル、最後の対峙1
「アベル、これですべてを終わりにしよう――」
俺はアベルをまっすぐに見据えた。
『一周目の世界』から背負ってきた一つの因縁――魔王との決戦は、終わった。
あとはもう一つの因縁に決着をつけるときだ。
そう、アベルとのすべてに終止符を打つ――。
「な、なんだよ、幼なじみのよしみだろ。もう少し友好的にいかないか?」
アベルは明らかに弱腰になっていた。
「お前は魔王と一体化し、さらなる力を得ようとしているな。そうはさせない」
俺はアベルをにらんだ。
『一周目』のときからそうだった。
こいつは自分が生き残るためなら、どんな手段でも取る。
俺がようやく倒した魔王を、こいつは自分の中に取り込もうとしていた。
それはつまり、消滅寸前だった魔王を救うことに他ならない。
あるいは、魔王がアベルを乗っ取らないとも限らない。
そうならないためにも、
「お前も、魔王も、この場で滅する!」
「うう……」
そこでガードナーが苦悶の声をもらした。
「大丈夫か、ガードナー」
俺は彼の側にしゃがみこむ。
見れば、胸の傷は思った以上に深そうだ。
致命傷かもしれない――。
「今、応急手当てをする。待ってろ」
俺は視線でアベルが逃げないように牽制しつつ、
「【ヒーリング】」
上級の治癒魔法を発動する。
「痛みが引いていく――」
ガードナーが驚いたように俺を見つめた。
「お前、治癒魔法まで使えるのか……?」
「とりあえず命に別条がない程度までは治せた。ただ、それ以上の回復は……すぐには無理そうだ」
どうやらガードナーが受けたのは、普通の傷とは違うらしく、ある程度まで治癒するとそこで回復が止まってしまう。
おそらく魔剣によるダメージだからだろう。
なんらかの追加ダメージ効果があるのか、呪いでも付与されているのか。
どちらにせよ、この場で調べるのは難しい。
「……傷が治りきっていないのに気が引けるけど、一つ頼まれてもらえないか?」
俺はガードナーに耳打ちした。
「頼み?」
「これを――」
俺は魔力を集中し、小さな魔力弾を生み出した。
【魔弾】。
その名の通りの魔力弾で、威力は上級魔法並だ。
そして、この魔法は他人に【譲渡】できるという特徴がある。
「お前に託す。これを使う局面が来るかもしれないから……」
まあ、念のための保険だ。
俺はガードナーに【魔弾】を渡すと、アベルに近づいていった。
「さあ、最後の戦いと行こうか」
「くっ……」
「お前も『一周目の世界』から来たんだ。分かっているよな? お前じゃ、俺には勝てないと――」
「う、うるさい……!」
アベルは魔剣を構える。
「俺は魔王の力と、そこにいるガードナーの力も吸収した。今までの俺とは違うぞ!」
「そうか」
俺は地面を蹴って突進した。
「それでも――お前じゃ、俺に勝てない」
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