4 世界を救った荷物持ち
SIDE ガードナー
「あ、あいつ、魔王を倒したのか……」
ガードナーは呆然と空を見上げていた。
信じられなかった。
人類の総力を挙げてなお、討伐するのは不可能だと言われた魔王を――。
たった一人の戦士が、いとも簡単に討ち果たしたのだ。
「何者なんだ、あいつ……」
「カインなら、やると思っていたわ」
シリンがうっとりした顔で微笑む。
「大したものだな。あっさりと世界を救ってしまったわけだ」
と、クレインがニヤリと笑った。
彼女たちは誇らしげな顔をしていた。
「すごい奴だ……」
ガードナーがうなずく。
伝説の傭兵として幾多の戦場を駆け巡った彼だが、カインほどの戦士に出会ったことはない。
完全に『別格』だ。
ガードナー自身を含めて。
正直に言うと、そのことへの嫉妬を感じていた。
最強の戦士でありたい、というガードナーの夢を阻む邪魔者……ガードナーにとってカインとは、そういう存在だった。
もちろん、そんなことを他人に言えるはずがない。
器の小さな男だと揶揄されるだけだ。
だが、誰にも言えないからこそ、ガードナーのひそかな嫉妬心は胸の内でどこまでも膨らんでいく。
(あいつさえいなければ――)
俺が、最強なのに。
それがガードナー・アクスの偽らざる本音だった。
「……これで戦争が終わるわけじゃない」
ガードナーは自分の妄執を振り払うように、思考を切り替えた。
魔族軍の主力――サイクロプスや魔将たち、そして魔王までも倒したとはいえ、魔族の軍勢はまだ残っている。
「魔王が討たれた今、奴らは烏合の衆。とはいえ……そういった連中がかえって危険なこともある」
確実に掃討しなければならない。
そして、それはカインだけでなく、この場にいるすべての戦士たちの役割だ。
「次は俺も活躍しないとな」
ニヤリと笑みを浮かべるガードナーは、そこである『違和感』を覚えた。
「……ん?」
先ほど魔王が消滅したばかりの空中で、何かがうごめいている。
黒いモヤのような、何か。
どうやら、そこに背を向けているカインはまだ気づいていないようだが――。
モヤはゆっくりと地面に向かって『降りて』いく。
(あれは――)
彼はそっと場を離れ、モヤの向かう先に進んでいった。
他の者に声をかけなかった理由は、自分でも分からなかった。
ただ、引き寄せられる何かがあったのだ。
あのモヤに呼ばれているような――奇妙な感覚が。
やがて神殿の外れまでやって来たガードナーは、地面の上で揺らぐ黒いモヤを発見した。
「我を手にせよ……」
モヤから声が聞こえる。
「なんだ、これは……?」
戸惑うガードナー。
「お前は力を欲している……誰よりも強い力を……そんな願望を持つ者にのみ、我が声が聞こえる――」
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