9 戦士ガードナー
ガードナー・アクス。
彼は当時、伝説の傭兵として名を馳せていた。
幾千の戦場を渡り、不敗――。
まさしく生ける伝説である。
勇者パーティにおいても最強の前衛として存分に腕を振るった。
アベルも、彼には幾度となく助けられたものだ。
その彼とこんな場所で出会うことになるとは。
……といっても、この世界の彼はアベルのことを知らないだろうが。
ガードナーは巨大な戦斧を掲げた。
「来い、魔族ども!」
「人間が!」
ボルグを始めとする五体が火炎や雷撃を降らせる。
「おおおおおっ、効かん!」
ガードナーはそれを斧を振り下ろして起こした風圧――いや、ほとんど衝撃波といっていいそれで吹き飛ばしてみせた。
「な、なんだと……!?」
「お前らだけ飛び道具ってのは、ちょっとずるくねぇか?」
ニヤリと笑って、ガードナーは大きく跳び上がった。
信じられないほどの跳躍力で、空中の魔族に迫る。
「【旋風斬り】!」
振り回した戦斧が、二体の魔族を両断した。
残り三体――。
「くっ……馬鹿な!」
慌てたように空中で後退しながら、ふたたび魔法攻撃を放つボルグたち。
が、先ほど同様にガードナーは戦斧の風圧で防いでみせた。
「むんっ!」
そして、戦斧を投げつける。
回転しながら飛んでいった戦斧が二体の魔族を斬り裂いた。
魔族の残りは一体――ボルグだけだ。
「つ、強い……やっぱりガードナーは強い――」
アベルはその戦いぶりに呆然となっていた。
これなら自分も解放されるだろう。
「……おのれ」
ボルグは空中から地面に降り立った。
「ほう。地上戦か。いい度胸じゃねーか」
「いつまでも空中に逃げているなど、魔族としての誇りが許さんからな」
ボルグが剣を抜く。
「気に入ったぜ」
ガードナーが戦斧を構えなおす。
と、ボルグがこちらに目配せをしていることに気づいた。
(あいつ……!)
おそらく彼はこう言っているのだ。
自分が正面から引きつけるから、背後からの不意打ちでガードナーを殺せ、と。
ボルグの味方をしてガードナーを殺すべきか、それともガードナーの勝利を信じて傍観あるいは加勢すべきか。
アベルは選択を迫られていた――。




