8 旅立ちの決意
俺はリアムとともに村長の家にやって来た。
「おお、カインか。村が今大変な状況なんだ。いや、村というよりも、この世界全体が――」
「魔族のことですよね?」
俺は村長に言った。
「この付近に侵攻してきた魔族の前線基地なら、すでに壊滅してますよ」
「えっ」
「たぶん、レーガ公国の魔術師たちが、近隣の町や村に報告に回ってると思いますけど――」
と、そこで上空から一人の魔術師が飛んできた。
シリルだ。
「ここってカインの村だったの?」
「報告に来たのか? ちょうどよかった」
俺はシリルに微笑んだ。
彼女の言葉なら、きっと村長も信じてくれるだろう。
「カインが――基地の魔族を全滅させた!?」
「嘘、さっきの話って本当だったの!?」
シリルの説明を受けて、村長もリアムも驚いていた。
リアムの方は村に現れた魔族を俺が倒すのを見ているが、さすがに前線基地の魔族を全滅させるほどの強さだとは思わなかったんだろう。
「カインは信じられないほどの魔法の使い手です。今後の魔王軍との戦いにおいて、きっと大きな戦力になってくれると思います」
シリルが二人に言った。
「そう、人類の中心戦力に――」
「カイン、なんだか遠い人になっちゃった……」
「はは、俺は何も変わらないって。ただ、しばらくは村から離れることになると思う。魔王軍との戦いが終わるまで――」
俺はリアムを見つめた。
「絶対に魔王を打ち倒して、ここに戻ってくるからな」
「カイン……」
リアムは涙目だった。
「行っちゃうの……?」
「俺がやらなきゃ、世界は魔王軍に滅ぼされてしまう」
そう、魔王軍を止められるのは俺しかいない。
俺が、魔王を殺すんだ。
リアムや村長の次は両親への報告だ。
俺は自分に魔法の力があることや前線基地の魔族を全滅させたこと、そして今後も魔王軍と戦うために村から旅立つことを説明した。
いちおうシリルに同行してもらい、一緒に説明してもらったため、両親とも俺の話をすんなり信じてくれた。
「カイン、お前にそんな力があったなんてな……」
「本当にカインがやったのかい? 魔法を使えるなんて素振りも見せずに……」
「父さんにも母さんにも黙っててごめん。それから、当分は村に戻れない。俺は魔族と戦わなきゃいけないからな」
俺は両親に言った。
「いちおう村を守るために仕掛けをしておいたけど、二人とも十分に気を付けて。魔族の侵攻部隊がまたここを襲わないとも限らない」
魔将のヴェイルが『死者兵』として村を守っている限り、まず大丈夫とは思うが――。
「出立はいつになるんだ?」
「明日の早朝に経つよ」
「……そうか。せめて今日はゆっくり休んでいけ」
父さんが俺の肩に手を置いた。
「お弁当作るからね」
母さんはもう泣きそうだ。
……っていうか、旅行に行くわけじゃないんだけど。
いや、でも弁当はありがたくもらおう。
あ、それと……出立前にやっておくことがある。
「俺、ちょっと寄りたい場所があるんだ」
魔族との戦いやその後の村長への報告とかでバタバタして、まだ『奴』に会えていない。
「アベルの家まで行ってくるよ」
そう、『一周目の世界』の彼に――。




