7 力を取り戻すために
「回復の神殿?」
「そう。女神ルルファリアを祭った神殿がバルロット王国の東部にあるの。そこでの魔力回復効果は抜群だと言われているわ」
シリルが説明した。
「私のデータでは回復量の平均値は世界一」
「世界一なんだ」
「データマニアの私が言うから間違いない」
すごい自信だけど、その通りだな。
「なるほど、よさそうだ。ありがとう」
俺はシリルに礼を言った。
「場所は分かるの?」
「いや、とりあえず現地に飛んでから道を聞いてみるよ」
「……私が案内するわ」
シリルが言った。
「えっ」
「命を救われた礼代わり。それに……あなたの能力アップは魔王軍との戦果に直結するはず」
シリルは俺をジッと見つめている。
「私のデータにもない、魔王軍の襲来……いずれそれが本格化するなら、対抗する戦力が必須。あなたはその筆頭でしょ」
「シリル……」
「だから、私はそんなあなたをサポートする。いいかしら?」
「ああ、仲間がいるのは心強いよ」
俺はシリルにうなずいた。
正直、魔王以外の敵が相手なら俺一人で十分だ。
おつりがくる、と言ってもいいくらいだ。
けど、たとえばその『回復の神殿』に行く際の道案内とか、あるいは『回復の神殿』では効果がなかったときに、次の方法を考えるときの相談相手とか。
戦闘以外で力を貸してもらう局面はいくらでもある。
「分かった。案内よろしく頼む」
俺は彼女に手を差し出した。
シリルはその手を握り、微笑む。
「私はレーガ公国魔法師団筆頭魔術師シリル・アンハート……って、あなたは私の名前を知っているのね?」
「え、えっと、レーガ公国魔法師団のエースとして有名だったから……なんて」
俺は適当に言い訳をした。
「ふーん……?」
あ、疑われてる。
「俺の名前はカイン・ベルスト。これからよろしく」
話題を打ち切り、俺は彼女に言った。
「あ、それから『回復の神殿』に行く前に村に戻りたいんだ。その……出立の準備とかもあるし」
あとは魔将ヴェイルを村のガーディアンとして配置する作業もあるしな。
「じゃあ、出発はいつがいいかしら?」
「明日でもいいか?」
そう尋ねると、シリルは快諾してくれた。
待ち合わせの場所と日時も決め、俺は一人で村に戻った――。
「リアム!」
俺は村に戻ると、彼女の元を訪ねた。
幸い、村は新たな魔族の侵攻には遭っていないようだ。
魔族がこの世界に侵攻を始めたこと自体は、すでに村でも話題になり始めているようだった。
村長や村の有力者たちで今後の行動について話しているとか。
「カイン、大丈夫だったの……?」
「ああ、魔族の前線基地は攻略してきた」
「…………………………へっ?」
「ん? だから、基地の魔族を全滅させたんだけど?」
「いやいやいやいやいや」
リアムが唖然とした態度になった。




