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魔王よりも強い【荷物持ち】は滅亡した世界から過去に戻り、『二周目の世界』を圧倒的な強さで無双する。  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第2章 今度こそ全てを守るために無双する

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6 村を守るために

「再会したばかりだけど――さよならだ、ヴェイル」


 俺は右手を突き出した。


 ヴ……ン。


 そこに魔力が溜まっていく。


「【ルーンスピア】」


 生み出された魔力の槍がヴェイルを貫いた。


「っ……」


 ヴェイルは悲鳴を上げることすらできずに倒れ、そのまま動かなくなる。


 絶命したようだ。


「ふう、とりあえず七魔将一体撃破、と」


 あと六体。


 さらに魔王を倒せば、今度こそ世界を滅ぼさずに――世界を、救える。


 この世界のどこかにいるはずのアリシアも。

 一周目の世界で魔族に苦しめられ、殺された人々も、全部。


 そして――。


「……アベル」


 勇者であり、人類を裏切って魔王側についた俺の幼なじみ。


 あいつは二周目の世界でどんな道をたどるんだろう。

 やっぱり聖剣に選ばれて、一周目の世界みたいに勇者になるんだろうか。


 そしてまた人類を裏切る……?


 いや、俺が対魔王軍で前線に立って戦う以上、一周目と同じシチュエーションが訪れるとは限らない。


 むしろ、そうなる前に俺が魔王を倒してしまえば済む話だ。


「そのためには……もっと鍛えないとな」


 今のままでも七魔将相手なら楽勝だ。

 けど、魔王だけは別格だった。


「今のままだと……五分五分くらいの可能性があるな」


 もっとも、俺自身の現在の能力を正確に把握できていないし、いずれ回復するのか、現状のままなのかも分からない。

 どうなるにせよ、俺は確実に勝たなければならない。


滅亡の結末(バッドエンド)は一度でたくさんだ」


 二周目の世界では、必ずハッピーエンドに変えてみせる――。


「【作成・死者兵】」


 俺は呪術系の魔法を使い、ヴェイルを死者兵として再生した。


「う……ぎぎ……」


 さすがは七魔将だけあって、死者兵の状態でもある程度の会話はできるようだった。


「お前はこれから俺の村を守るんだ。できるだけ村人たちに気づかれないようにな」


 と、命令を与える。


「し、承知……した……」


 うなずくヴェイル。


 現在、村を守っている死者兵よりも、このヴェイルの方がはるかに強いはずだ。

 村の死者兵はいずれ呪術を解き、消滅させておこう。


 この魔法は便利ではあるが、大量の魔力を消費する。

 何体も死者兵を使役するのは難しい。


「まあ、魔将クラスなら魔族の侵攻から村を守るには十分な戦力だな」


 ヴェイルを村に配置すれば、とりあえずは安心だ。




 俺は飛行魔法で城の最上階から地上へと降り立った。


 シリルたちは、まだ待っていたようだ。

 彼女以外には五人の女魔術師がいる。


 レーガ公国魔法師団の、おそらくエース格たちだろう。

 いずれも若く、美しかった。


「よかった、無事だった」


 シリルが俺を見て、ホッとした顔をする。


「最上階にいた魔将ヴェイル――つまり魔王軍の最高幹部の一人を倒してきた」


 俺は簡潔に説明した。


「ねえ、その魔王軍ってどういう組織なの? あなた、随分と内情に詳しそうね」


 シリルが突っこむ。


 いい機会だ、魔王軍について説明しておくか。




「七人の魔将を率いた魔王が、この世界に侵攻する……!?」

「ああ。俺は……その、『とある事情』でその情報を知っている。先行して魔将の一人をこうして倒しに来たのが、その証拠だと思ってくれ」


 俺はシリルたちに魔王軍の侵攻について簡単に説明した。


「私からも質問していい? なぜ、あなたはそれほどの能力を身に付けているの?」


 と、シリル。


「私たちは世界で最高峰の戦闘魔術師を自負している。でも、あなたはそんな私たちをはるかに超えている……一体、どうやって――」

「鍛えたから」


 俺は簡潔に答えた。


「……それだけ?」


 シリルがジト目になった。


 怪しまれてるな……。


「少なくとも人類を守るために魔族と戦おうと思ってるよ。つまり味方だ」


 それ以上、あんまり詮索するなという雰囲気を醸し出しながら、俺はシリルに言った。


「……分かった。あなたが私たちを救ってくれたことは事実。レーガ公国魔法師団を代表して礼を言うわ。ありがとう」


 シリルが深々と一礼する。


「じゃあ、次に――」


 俺は話題を変えた。


「他の場所での魔族の侵攻状況を知りたい。ここ以外にも魔将たちが侵攻している地域があるのか、どうか」


 もともと、一周目の世界での魔王軍侵攻と、この世界でのそれはタイミングが微妙にズレている気がするんだよな。

 それは俺が過去に来たからなのか、それとも――。


「今のところ、他の魔族の情報はない。もしあれば、あなたにも伝えればいい?」

「頼む」

「では、これを。レーガ公国魔法師団専用の通信魔動機よ」


 シリルが俺に小さな箱型の機械を手渡した。


 これで通信手段は確保できたか。

 シリルといつでも連絡を取れる、というのは大きい。


「ところで――俺も一つ聞きたいんだが、いいか?」


 俺はシリルにたずねた。


「何かしら?」

「魔力を回復するための道具か、場所か……君は何か知らないか?」

「魔力の回復?」

「ああ、ちょっと調子が悪くてな」

「あれだけ規格外の魔法を連発したくせに不調なの?」

「……俺の本調子は、まだこんなものじゃない」


 シリルの問いに答える俺。


「力を、取り戻したい」


 魔王相手にも圧勝できるだけの力を。

 一周目の、俺の力を。


「そうね。魔力回復のためのパワースポットのような場所は世界各地に存在するわ。ただ魔力の回復値は場所によってまちまちだし、その魔術師の得意属性とか身長体重性別等の各条件によって異なる……というデータがあるの。あ、細かいデータを一つ一つ解説しましょうか?」

「いや、細かい数字はいい」

「えっ、どうして? 私の華麗なデータ分析、聞きたくない?」


 シリルが身を乗り出した。


 データマニアだから、こういう話はグイグイ来るな。


 実際、彼女は戦闘よりも研究や分析の方が向いているんだろう。

 性格的に、あまり戦いには向いていない。


 優しくて、穏やかだからな。


 ただ、それでも――当代随一と言われる魔法の才能から戦場に駆り出された。


 そして、一周目の世界ではアベルに惨殺された――。


「? どうかした?」

「……いや」


 今度は、君を死なせないからな。

 俺が守るよ、シリル。


「やっぱり私の華麗なデータ分析とか解説を」

「それは別にいい」

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忌み子として処刑された僕は、敵国で最強の黒騎士皇子に転生した。超絶の剣技とチート魔眼で無敵の存在になり、非道な祖国に復讐する。


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