11 光と闇と影の戦い3
「――一つ、試したい方法がある」
俺はラスヴァールに言った。
「なんだ?」
「それは――」
俺は奴らに聞かれないよう、小声で『その方法』をラスヴァールに説明した。
「上手く行けば、奴らの虚を突ける。その一瞬の隙に、まずアベルを倒す」
俺が説明を続ける。
「そうなれば、俺とシャドウの二人っきりだ。後は精神世界で奴を屈服させ、完全に封じ込める。シャドウを殺せば、俺も死ぬ……封印するしかない」
「なるほど。賭けではあるが――可能性は十分にある」
ラスヴァールが言った。
「では、私も最大限に力を尽くそう」
「頼むぞ、相棒」
俺は聖剣を構えなおした。
ラスヴァールのサポートを受け、俺が『力』を最大限に発揮すれば、きっと通用する。
そう信じて、俺は地面を蹴った。
行くぞ、これが――最後の攻撃だ!
「おおおおおおおおおおっ!」
俺は雄たけびと共にアベルに向かって一直線に突進した。
「はっ! 自分から死にに来たか!」
アベルが魔剣を構えた。
その隣では、シャドウがこれ見よがしに剣を自分の太ももの辺りに突きつけている。
俺がもう少し近付いたら、シャドウは自分を傷つけ、俺も同じだけのダメージを負うだろう。
「だけど――構わない!」
俺はさらに加速した。
一気にアベルに迫り、渾身の一撃を――、
「馬鹿が」
その瞬間、シャドウがニヤリと笑った。
剣をそのまま太ももに突き立てる。
鮮血がしぶいた。
同時に、俺の右足のももに激痛が走る。
「ははは! その足じゃ踏ん張れねぇな! 終わりだ!」
シャドウが叫ぶ。
「そうだな」
俺は魔力を集中し、
「【エクスヒール】!」
最上級の治癒魔法を発動した。
俺に――ではなく、シャドウに向かって。
「えっ……?」
奴の右足の傷が一瞬で癒える。
それに連動して、俺の足の痛みも消えた。
「これなら――踏ん張れる!」
俺はふたたび右足を強く踏み出した。
一気に再加速する。
シャドウが体に受けたダメージが俺に伝わるなら、そのもとを遮断してしまえばいい。
単純極まりない策だけど上手くいったようだ。
ただ、おそらく二度目は対策されてしまう。
それに次の瞬間には、シャドウはふたたび自分の体を傷つけ、俺の体も連動して傷つくだろう。
だから、奴がその行動に移る前の――この一瞬がチャンスだった。
きっと最初で最後のチャンスだった。
「だからこそ、この一瞬で決める!」
俺はアベルに向かって最高速で迫る。
次の攻防で、俺たちの戦いのすべてに決着がつく――!
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