7 戦いの終わりと始まり
「終わった――」
今度こそ、魔王軍との戦いは終結だ。
「ラスヴァール……お前と一緒に、この戦いを終わらせることができたよ」
感無量だった。
一周目の世界で成しえなかったことを、この世界で――最高の相棒とともに決着をつけることができた。
これで、今度こそ世界に平和が訪れる。
「いいや、まだだな」
声が、聞こえた。
「な……に……!?」
その声は、俺の内側から聞こえたのだ。
次の瞬間、俺の視界が切り替わった。
白と黒に彩られた空間内に移動している。
いや――移動させられた。
「ここは……!?」
俺の精神の世界、か!?
ただ、以前は純白の世界だったけど、今は白黒二色になっている。
この変化は何を表しているのか――。
と、
「久しぶりだな、主……いや、カイン」
前方から俺そっくりの男が歩いてきた。
ただし、顔は同じだけど、角や翼を備えた魔族然とした姿だ。
「シャドウ――」
俺はそいつの名を呼んだ。
「突然この世界に俺を引きずり込んで、何をする気だ」
と、シャドウをにらむ。
「まさか、まだ俺という存在を乗っ取るつもりじゃないだろうな?」
「はは」
シャドウが口の端を歪めて笑う。
「そのつもりだよ」
「何?」
俺は聖剣を構えた。
「もう決着はついただろ。お前じゃ俺には勝てない」
「だろうな」
シャドウがニヤリとする。
「ただし、それはお前が万全なら――だ」
ばちばちばちぃっ!
瞬間、俺の全身を雷撃が貫いた。
「ぐ……あ……!?」
「ははははは! お前にはすでに呪具を仕掛けてある」
シャドウが勝ち誇った。
「お前の『力』に反応して発生し、『力』が強ければ強いほど、より強力な電撃がお前を襲う――」
「呪具だと……? いつの間に――」
「さっきお前がガードナーと戦っているときに隙ができていたのさ。そのときに仕掛けた」
「隙……?」
俺は眉を寄せた。
そんな隙があったんだろうか?
「あったのさ」
シャドウがニヤリと笑った。
「お前はかつての仲間を手にかけた。その心の痛みが、大きな隙を作った――お前自身も気づかない一瞬、な」
「シャドウ、お前……!?」
「だが、それでも俺一人ではお前の隙を付いて、お前を乗っ取るほどの力はない……だから、助っ人を呼んだ」
「えっ……!?」
「こいつは賭けだったが……くくく、奴は俺に呼応してくれたぞ」
「奴……だと……!?」
嫌な予感がした。
今までのどんな戦いよりも、嫌な予感が。
「さあ、我が元に来い――かつての仇敵よ!」
シャドウが朗々と叫ぶ。
「今こそ我らは手を組み、そしてカイン・ベルストを乗っ取るのだ」
【大切なお知らせ】
新作ラノベ『死亡ルート確定の悪役貴族 努力しない超天才魔術師に転生した俺、超絶努力で主人公すら瞬殺できる凶悪レベルになったので生き残れそう』がKADOKAWA・エンターブレイン様から発売中です! 広告下の書影をクリックすると公式ページに跳べますので、ぜひよろしくお願いします~!
なろう版から4割近く書き下ろしているので、既読の方もぜひ!




