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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ドクトルテイマー

作者: モフモフのモブ

シナリオの本体を朝の連続テレビ小説とするなら、先行予告2時間スペシャル版的な?


 健斗の目の前には、三階建ての家ほどの大きさの生き物が、鼻息も荒く、健斗をにらみつける。全身を固いうろこでおおわれ、爬虫類に特有の大きな口から覗くのは健斗の顔のサイズを上回る牙


漆黒の巨体にひときわ凄みを強調される黄色くする度奥光眼光が容赦なく健斗を睨み、その牙の根元まで見えるほどに大きく開かれた口から言葉が発せられる。

「お前はなぜここにいるのだ」


そんなことは僕のほうが知りたい。

健斗は頭に浮かぶその言葉が口からこぼれ出ないよう、ようやく押しとどまると、代わりにそっとつぶやく

「どうしてこうなった。」



僕は13歳の時、両親を事故でなくした。高速道路を飲酒運転で逆走してきた車にオフセット衝突され、助手席にいた母は即死だった。運転席にいた父親は、救急搬送されたが、救急医の尽力もむなしく息を引き取った。

後部座席にいた僕も、事故による損傷を見た救急隊員は絶望視していたが、父親の心臓を移植する12時間の手術の末、奇跡的に生還した。

以来僕は、親戚中をたらいまわしにされたが、強く前を向いて生きることが、自分の命を投げ出して自分の命を救ってくれた両親への恩返しだと考え、親戚に感謝することはあれ、恨むことなどなかった。

僕は義務教育を修了するまでは世間体を気にした親戚たちに疎まれながらも生活していくことができたが、中学卒業とともに、自立することになった。

本当は自分の命を救ってくれた救急救命委を目指したかったっが、日本社会で医者になるには多額のお金が必要だった。幼くして両親を失った孤児の僕にそのようなお金はなく、早々に夢をあきらめ日々を生きるしかないと思われた。

そんな僕に転記が訪れたのは、両親の事故と心臓移植で九死に一生を得た僕をマスコミが世紀の美談として報道ことで、その話題性に目を付けた東京の医療法人が、広告塔に利用するために、僕に接触、僕は医者になる夢を目の前にぶら下げられて、二つ返事でその機会に飛びついた。

貧しい環境で医者を目指す僕は、夢を原動力に医学部を目指すが、親子三代にわたる医者の家系にありがちな医学会のヒエラルキーには太刀打ちできず、地方の医科大学を何とか卒業し、医師の国家試験に合格して無事医者の資格を得ることができた。

それでも一度マスコミに美談通して取り上げられて人気はそう簡単に収まらず、節目節目でドキュメンタリーが組まれて、僕を広告等にした医療法人の収益はうなぎのぼりだった。

しかし、これに面白くないのは職場のほかの医師たちである。もともと、東京の姉もちをターゲットにする病院には医局による学閥がある。地方の三流医科大学卒業にもかかわらずマスコミの弔事である僕など、妬みの対象にしかならない。

かくして職場では雑用の押し付けから、足を引っ張る嫌がらせまで、僕の心労は途切れることはなかった。

そんな生活を一年も続ければ、自律神経に変調をきたすことにもなり、ある冬の晩、職場で胸の痛みを訴えた僕は一人寂しく当直室で短すぎる人生を終えるのだた。

 もう駄目なんだと自覚した僕は、父親にもらった命を、長寿を全うするという誓いを果たせなかったことを悔やみながら、静かに息を引き取った。その死に顔には一筋の涙のあとが残っていた。


僕の物語は本来なら、そこで終わるはずだった。しかし、死んだはずなのに目が覚めると、そこは光まぶしい、しかし何にもない部屋の中だった。

手術室で麻酔が切れて意識が戻ったのかな、と考えた。

けど、目の中に飛び込んできたまぶしい光が落ち着いて、次第に周りの景色が像を結ぶようになっていくと、そこが手術室ではないことが、僕にもわかるようになった。

「起きたかな」

突然部屋の中に響く声、僕は驚きながら声がする法に顔を向ける。曽於湖には白いローブを着た老人が立っていた。

「突然驚かしてすまんの」

老人は何もなかったかのように話をする。

「わしは、『アストラル』おぬしらの世界で言う創造神というやつだ。

おぬしをここに呼んだのは、前世でのおぬしの人生があまりにも不憫でのう。それに日本人には珍しいくらい綺麗な魂じゃのう。それで、人生をやり直す機会を与えようと思ったのじゃ。が、その前に、おぬしの持つ力で、わしの眷属をちょっと助けてもらえんんかの。そこにおるのじゃが、このままだと死んでしまうのじゃ。眷属でなければなんとかできるんじゃが、自分の眷属を神の力をもって救済するのは身内びいきになるで、禁忌なのじゃ。

よろしくたのむよ。」

なんとものんびりした声でそう話すが、その声につられて老人の示す指の先を見れば、そこには銀色に輝く毛皮に包まれた一匹の大きな犬が脇腹から血を流して横たわっていた。

僕は慌ててそばに駆け寄り、患部を確認する。

「ちょっと痛むけど我慢して」言葉が通じるはずもない犬にそう話かけながら犬の体を引き起こす。痛みにうめく犬に、ごめんねと謝りながらも、躊躇はしない。犬も激痛に耐えながらも、僕が危害を加えようとしているのではないことを知っているのか、おとなしくしている。

僕は、老人に、救急治療用の器具がないかと尋ねる。僕がどこに出かけるにも離さず持置歩いている鞄があれば。

まああるはずもないんだけどね、と無い物ねだりのつもりだったが。

ところが、老人は、僕の脇を指さし、そこにあるという。不思議に思い指さす方に顔を向けると、そこには僕の鞄がいつの間にかおいてあった。

頭の中は混乱していたが、今はとにかく時間が惜しいし、一刻を争う。僕はカバンの中からペアンと雌メスを取り出すと医療用のグローブをはめて、消毒液を患部にまき散らし、つぃまった血管をペアンで止血する。術野を確保するためにメスで切り込みを入れてで開く。犬の腹は血の海だったが、自家輸血のため、シリンジで吸引しておく。しかs、救急用のっシリンジでは、容量が足りない。術野も血の海に埋もれたままだ。焦る心が顔にでいたらしい。老人が「どうしたのじゃ」と尋ねる。

僕は、目の前の大きな犬の腹にあふれる血を輸血として再利用したい。そのためには、汚染された血液をろ過して、再び犬の血管に戻す必要があるのだが、さすがに救急医療器具の中にそのようなものはないと説明する。

すると、老人は「そういうことなら」と言いながら、ゼリー状の球体を呼び出す。

「これはスライムじゃ。ファンタジー世界の定番じゃの。スライムは知っておろう。ラノベでおなじみ、スライ医務は万能じゃぞ。」

スライムって、ゲームに出てくるやつか?

いかに、健人がサブカルチャーに無縁で、ラノベなど呼んだこともなくても、25年間生きていれば、その程度の情報くらいは入ってくる。

とはいえ、目の前のゼリーが動いている現実を飲み込めない。

ところが、老人は絶賛困惑中の健斗を置き去りに、そのゼリー状の球体に向かって、「そこにいるフェンリルの流れ出ている血液を吸収して上下肢、再びフェンリルに戻してやってくれ。」と告げた。

その言葉を聞いた球体はぴょんぴょん跳ねると、近づいてきた。目の前で止まると、体の中から突起を伸ばすと、小名完夫中の血液を吸入していく。

目の前の行動に戸惑う僕だったが、すぐに気を取り戻し、ぺ案で止血した箇所のそれぞれ外側、正常な血管を1.5cm感覚を開けて、別のペアんで止血して血液が流れていない血管を同じ長さだけ確保すると、メスで血管に切り込みを入れて、目の前のスライ医務?に、ここから血液を体内に戻せるか?と尋ねる。

すると、その生き物は先ほどまで血液を吸入していた突起をもう一つ体内からのばすと突起の先端で切り込みを多い、血液を循環させるように送り込んでいった。

目の前の超常現象はとりあえず思考の斜め上辺りに放り投げておくとして、足跡の血管バイパスが出来たことをまずは歓迎しよう。

僕はこみ上げてくる乾いた笑いをなんとか押しとどめて、術式を進める。血管を留めることで、壊死がさけられれなあったはずの器官が確保され、タイムリミットが相当延長されたが、それでも手術が与える負担は大きい。手術時間は短いに越したことはない。

僕は敗れた血管の再建に取りかかる。そのまま縫い合わせることで再建出来る血管と、体内の別の部分から血管を借用して移植しなければならない血管を選別し、再建の優先順位を決めていく。

 幸いそのもっとも重要な血流が確保されている。

 僕は、目の前の犬に、術式を説明する。人間の言葉分かるのかな?でもそういう手順になっているから。

 「それでは大動脈およびかく支脈参照の血管交換・縫合再建術を始めます。メス」

 まあ、自分でメスを交換しないといけないんだけどね。

 こういうのは雰囲気だ。

 目の前のスライム?が時間を確保してくれているので、まずは、臓器に本当に損傷がないかを確認する。欠損がな猪野が不幸中の幸いだ。次に、再建する血管の長さと本数を確認する。人間と体の作りは異なるため、支流の血管がどこにどのようにつながっているのかわからないけど、主動脈をつなげば、あとは末端に後遺障害が残る似しても、一名はとりとめるだろう。それでよしとしなければ。

 僕は、神ちぎられた血管の断片の数と口径から、主要動脈からつながる血管のうち再建にようするものを2本と確定し、犬の大腿部の血管のうち1本を移植用に回す。少し眺めにに血管を切り取り、さらに、各臓器への血管吻合部2カ所への接続部を切り取った血管を切ってつなぎ合わせ、再建する血管部分を作成する。大腿部の血管は枝分かれする一本を外しても、他の血管が必要な血液を送り込むために、太くなるので、最終的には、少し動きが訴外される後遺障害が残るかもしれないが、命には代えられないだろう。

 次に、吻合部の口径を会わせるため、大腿部から取った血管の、各吻合部を斜めに切ることで、口径を会わせる。心臓に近いところを流れる血管は枝分かれする前の太い血管であるため、四肢からとる血管よりも太くなり、吻合部で口径があわなくなるためだ。血管は元々弾力性のある組織で構成されているので、接合部分さえ、血液が漏れ出さないようつなげば、自然と血管の太さはそろっていくようになる。

 血流が確保されているとはいえ、開腹の時間が長いほど、感染のリスクは高くなる。そういえば、この部屋の除菌はどうなっているのだろう。

 まあ、今は大きなリスクを回避するために、小さなリスクには目をつぶる必要がある。

 僕は再建した血管の吻合のため、鞄の中からめがね型のルーペを取り出す。その都度、滅菌の作業をしなければならないのだが、その方法がない。

 僕が顔をしかめると、老人が「どうしたのじゃ」と尋ねてくるので、手術器具を取り替え、あるいは道具を取り出すたびに手に雑菌がついて、犬の血管を通じて体内に雑菌が入り込み感染するおそれがあることを告げる。

 すると老人は「それならば問題はないぞ。クリーン。」そう叫ぶと、淡い光が僕と犬を包み込んだ。

 理由も根拠も全く不明だが、光の中にあるものを無菌状態に浄化する魔法なのだそうだ。

 魔法?なにそれおいしいの?といった状態だが、深く考えるのはやめよう。どうせ感染以上のリスクが目の前にあるのだから。

 僕は再建した血管を移植する手術に移る。ルーペをセットし、わずか1mmの間を5回縫い止めて、結紮を五重にするという気が遠くなる作業を繰り返す。本当なら主要動脈から循環を確保するのだが、幸いスライム?が主要動脈の血流を確保してくれている。僕は各臓器との血管再構築を優先することが出来る。

 そして、最後に心臓から直接出ている大動脈をつなぎ合わせる術式に突入する。

 血管をつなぎ合わせた後、バイパスがあったところをふさいで血流を本線に戻さなければならない。このときばかりは、血流を止めて手術を行わなければならないが、大病院の手術室でもないのに、本来こにょうな手術が出来ること自体が奇跡でしかない。

 しかも血管同士をつなぎ合わせる縫合は立体的であるため、困難を極めるのだが、血管に切れ込みを入れた箇所を縫い綴じるのは皮膚の縫合と代わらない。無論縫い目から血が漏れないよう、細い糸で縫い目も細かくする作業にはなるが、吻合と比較すればはるかに用意である。

 止血の時間が短いことでコンパートメント症候群のリスクも極めて低い。

 最後にペアン鉗子を外して血流を再開させ、出血がないことを確認し、開口部を綴じて6時間に及ぶ手術を終えたとき、僕は立っているのも困難なくらい疲弊していた。

 緊張感と集中力だけで自分の体重を支えていた。

 バイタルがどうなっているかを知る術はないのだが、時折微動する目の前の体が一名をとりとめることには成功したようだということを伝えてくる。


 動けずにその場にへたり込んだ僕に老人はゆっくり話しかけてきた。

「世話になったの。神でありながら、自分の眷属の危機に手が出せないというのも歯がゆいが、おぬしに危ないところを救ってもらった。感謝するぞい。それでこそ、新しい人生の機会を与えるにふさわしいというところかの。ところで、こう見えても、ワシは結構忙しい身での。そろそろ行かねばならんのじゃ。後のことは、おぬしが転生する先の世界を管轄する女神のアルテミアスに任せておくのでな、またそのうちに話をする機会もあろうて。最後に、創造神たるワシの加護をおぬしには与えておくでの。まあ何かの役にはたつだろう。ではのう。」

 目の前の老人は明かりが消えるようにその場から動かずに消えていった。

 よし、もう考えるのは辞めよう。

 これは夢だろうし。


 「自己完結しているところ、申し訳ないんだけど、お話いいかな?」

 突然、後ろから声がしたので振り向くと、そこには綺麗なお姉さん?がいた。

 結構露出多めの服装で、左肩からドレープが斜めに体に纏い、右肩が向きだしになった状態の代のワンピースドレスを身につけていた。

 体のラインを強調する服装ではないが、むき出しの右肩と鎖骨が悩ましい。どうもごちそうさまです。

 「何をみているのかしら?」

 目の前のお姉さんの言葉で正気に戻った僕は、「いえ、なでもないでしゅ。」と弁解しようとして噛んだ。

 男の噛みトークなんてどこに需要があるんだ、とあまりの恥ずかしさに一人落ち込む。

「これから、あなたに言ってもらう新しい世界なんだけど。」

あ、スルーされた。

「剣と魔法のファンタジーな世界って言えば分かるかしら?」

「言葉の意味は分かるんですけど、ちょっと何を言っているのか分かりません。」

おそるおそるながら正直に答えた。

「あなた日本人よね?RPGとかラノベとか知らないの。」

「RPGは分かりますが、ラノベってなんでしょう?」

「ええ?ラノベ知らない日本人が居るの?」

「いや、普通に居るんじゃないですか?25年間生きてましたけど、聞いたことないですし。」

「うーん、まあいいや。RPGが分かるならなんとかイメージはつかめるわね。」

そういって女神はおもむろに話しだす。

「あなたが今から生まれ変わる世界は、あなたが元居た世界では『ファンタジーの世界』って言われている世界だと思ってもらっておおむね間違いはないわね。

 その世界は、『アルテミリア』って名前なんだけど、見て分かるように私の名前からとっているので、私が管理している世界なの。で、その世界には人間のほかに、ドワーフとか、エルフとか、獣人とか、魔族って呼ばれている人間似よく似た種族も生活しているので。その一方で魔物って呼ばれているちょっと凶暴な生き物も居るの。ここまではいい?まあRPGの世界とおおむね同じだと思ってもらえればいいわ。

 でね、人っていうのは、魔物と隣り合わせで生活しているので、お互いに攻撃しあったりするのね。だからどうしても寿命が短いの。それに、あなたが住んでいるような世界みたいに科学が発達していないの。だかあ病気になっても怪我をしても、すぐに死んでしまうような世界なの。」

「医者はいないのですか?」職業柄当然そこが一番気になるので、話の腰を折るのはためらわれたが、尋ねてみる。

「医者という職業はなくてね、RPGと同じで、ポーションと呼ばれる薬を使うか、ヒールと呼ばれる魔法を使う方法しかないのよ。そしてこれが一番問題なんだけど、病気や傷を治すためのポーションを作る職業の人を薬師と言い、魔法で怪我や病気を治す職業の人を治癒師というのだけど、薬師は薬師ギルドが治癒師は協会が囲い込んじゃって、料金をつり上げtれしまい、一般の人がおいそれと利用出来るっようなものじゃなくなってしまっているのね。

 そこで、あなたにはその医術の知識で、新しい治療の風を吹き込んで欲しいのよ。もちろんラノベお約束の異世界転生チートは用意するわよ。」

「異世界転生チートって何ですか?」

「ああ、もう良いわ。話進めるね。」

「まず、転生者お約束セットとして。『全言語理解技能』ね。転生先では日本語を話す訳ではないから、けどこの技能のおかげであなたは生活に何一つ不自由なく会話出来るし、文字を書くことも出来るの。転生者にもれなくついてくる特典とはいえ、転生先の世界での識字率は決して高くないから、何気にお得なのよ。」

 そして次は『四次元ポケット』これは使い方一つで大金持ちになれる技能だから、よからぬ人に目をつけられることもあるので注意してね。文字通りあなたの世界の国民的アニメに出てくるものと同じ機能よ。四次元だから三次元の立体だけでなく、時間軸まで支配下におくの。ラノベなんかだと時間停止とかいうのが定番だけど、時間軸を支配下におくというのは、時間を止めるだけでなく、自由に進めることも止めることも出来るのよ、けど、当然生き物は収納できないので、たとえば植物なんかも苗木や株分けなんかは無理だから気をつけてね。

 最後に『鑑定』これはゲームと違ってあなたの生前の医者としての知識に依拠して、医療可燃に限定して相手の情報を見ることが出来る能力ね。まあ使っていくうちにその内容を把握出来ると思うけど、ラノベのような使い方は出来ないから気をつけてね。」

そして、これだけの能力を授けるからには、あなたに転生先の世界でやってもらうことがあるわ。それがさっきも言った、一人でも多くの命を救うこと。そのためにまずは、「ステータス」って言ってみて。」

何かよく分からないけど「ステータス」と叫んでみた。

すると目の前に文字が浮かび上がる。


 蔵久クラヒサ 健斗ケント

 25歳 男性 種族 人

 HP 100

 MP 500000

 STR 50

 VIT 20

 AGI 35

 INT 120

 DEX 150


 CARMA +5000


 技能 全言語理解

    四次元ポケット

医療鑑定

医療魔法

医療従魔術


 称号 アストレアスの加護

    アルテミアスの加護


 所持金 5800000G


 「その数字があなたの今の能力を数値化したものよ。さすがに知能(INT)と器用さ(DEX)は高いわね。で注目して欲しいのがCARMAという項目ね。これはこの先あなたが助けた命や奪った命がカルマとして上下するの。この数字が出来るだけ多くなうりょうな第二の人生を送っていって欲しいの。そしてそれは自分の医療の知識を出来るだけ多くの人のために役立てたいと考えていたあなたの願いにも合致すると思うわ。

 あと、お金については、こちらの世界の通過に換算して、あなたの生前のお金を移しておいたわ。大体1円=1Gと思ってもらって大丈夫。結構お金持ちだったのね。」

「は、はあ。いや、僕の貯金なんて1円もなかったはずですよ。」

そう、子供のころは厄介者の扱いを受けて親戚中をたらい回しにされたはずなのだが、マスコミの寵児扱いされ、医者を志して医者になった途端に、親戚中から、返す予定もないのにお金を貸してくれと言われ、断ることなんか出来ない僕は持っているお金を全部取られていたのだから。

「ふふっ そのお金はサービス残業と称してあなたに時間外勤務をさせていた病院から残業代として、あとは過労が理由でなくなっちゃったから損害賠償ね。医療法人の裏口座から抜いておいたから心配しなくていいわよ。」

「うわあ・・・」

よし、聞かなかったことにしよう。

 そのとき、苦しそうなうめき声が聞こえ、僕は瞬時にそちらに顔を向ける。

 手術を終えたばかりの犬が意識を取り戻したようだが、痛みに苦しんでいた。麻酔は持っていなかったし、あったとしても適量が分からないので、使えない。意識を取り戻したことで、痛みも感じるようになったのだろう。

 僕はすぐに駆けよって、頭から首筋をなでながら励ますが、動きは弱々しい。大分血を失っていたので、血管を再建したとはいえ、失われた血が生命維持に十分かどうかは分からない。別のところで怪我をしていたらしく、ここに運ばれる前にどれだけ血を失ったのかが分からない。

 「だ、大丈夫なのですか?」女神(?)の女の人が尋ねてくる。

僕は「手術前に失われた血液がどれだけなのか、生命維持に十分な血液を体内に戻せたのかが分かりません。出来るだけのことはしましたが。」と答えた。

「ふむ。」アルテミアス?はそう言うと、さっきまで活躍してくれたスライムを呼び寄せると、手術で血の付いた器具やガーゼを指さし、その血液を全部取り込ませた上で、「増幅」と命じた。

 すると、スライムはその場で光り出したかと思うと一つが二つになり、二つが四つに、1分後には部屋を埋め尽くすほどに増えていった。

そして、アルテミアスが差し出す容器にスライムが1匹ずつ覆い被さると容器の中に器具についていた血液を排出していく。その1匹1匹が、全部取り込んだ量をそのまま排出していくため、わずか数mlだったはずの血液が瞬く間に何リットルもの血液となって容器の中に収まるのだった。

 何を言っているか分からねえと思うが、オレも何をされたのか分からねえ。質量保存の法則が完全に無視されて血液が突然目の前で増えた。

 アルテミアスは最後のスライムが容器に血液を排出し、再び1匹のスライムに戻った後、僕に向かってにっこりほほえみかけ、容器を差し出すと、「これをそこのフェンリルに。」と差し出してきた。

 目の前の出来事に到底理解は追いつかなかったが、僕は鞄の中から輸血パックを取り出すと、その中に血液を移し替え、犬の前足をさすりながら血管を探し当て、点滴用の針を犬に刺してパックからのびているチューブに接続する。

 「一応説明しておきますが、あなたが犬だと思っているそこの獣はフェンリルといって神である私の眷属です。本来なら生半可な勤続ではそのフェンリルの皮膚を貫くことは出来ませんが、それでは治療にならないので、あなたの道具は全部最上級の強度と切れ味を持つアダマンタイト製にして、破壊不能の性能にしておいたので、取り扱いには気をつけて下さいね。まあ譲渡も盗難も不可能にしておいたけど、念のため正規の所持者であるあなたが使い方を誤らないように注意をしておくわ。」

 うん、やっぱり何を言っているのか分からない。

 「それから、そこのスライムとフェンリルはあなたの従魔としてつれていってあげてね。スライムはあなたの治療に、フェンリルは今は怪我しているけど、治癒すれば結構強いので、ボディーガードにはなるわよ。国一つくらいなら真正面から戦っても遅れは取らないし。」

 えーと、今の爆弾は?突然耳が遠くなったかな?今、国一つを相手にしても互角だとかなんとか聞こえましたけど。

 「スライムに名前を付けてあげてくれる。」

 僕が絶賛混乱中にもかかわらず、マイペースで話を進めるアルテミアスさん。目の前でスライムがぽんぽんと跳ねている。

 名前を付けるって・・・「じゃあ、ぷるん?」

 子供の頃はゲームをするような環境ではなかったし、医者を目指せるようになってからは、毎日が勉強でそれどころではなかったから、こういうのは勝手が分からない。

 名前名前と考えている間ずっと目の前で飛び跳ねていたスライムを見ているうちに、頭の中にはその見た目がプルンとしているということしか浮かばなくなってしまっていた。

 結構ひねりもない格好もよくない名前だったが、少なくともかわいさはあると自己弁護していたが、僕が「ぷるん」と言葉に出した瞬間、目の前のスライムが光り、そして光が落ち着くと、ぽんぽん跳ねていた勢いのままに僕の腕の中に飛び込んで来た。

 そのままあわてて抱き留めると、腕の中でぷるぷるっと震えたかと思うと、突然頭の中に声がする。

「ご主人、ありがとー。ボク一生懸命役立つね。」

へっ?今の何?

あわててきょろきょろ見回すが、誰の声なのか分からない。

「ボクだよー。ぷるんだよー」

その声でようやくなんとなく状況を理解した僕は、腕の中のスライムを抱え上げて目の前まで持ってくる。

「よろしくねー」

再び声が聞こえたと思うと、その声に合わせるかのように目の前のスライムがぷるぷる震える。

・・・ちょっと可愛い。

「そのスライムはさっきも見たと思うけど、いらんなことが出来るわ。こっちの世界には科学技術と呼べるものがほとんどないから、スライムを始めとした特殊な技能を持つ魔物などを従魔にして、うまく使いこなしてね。」

「あの、従魔ってなんですか?」

「え?そこから?」

 アルテミアスさんはため息をついて、子供に諭すように説明を始めた。

 「従魔っていうのは、あなたの言うことを聞く魔物のこと、まあペットみたいなものよ。

 さて、そろそろフェンリルも動けるようになったかしら。」

 「いえ、まだまだしばらく安静にしていないとっ・・・・って ええ!?」

 ついさっきまで生死の境をさまよってた犬が、血液が足りずに予断を許さない状態だったのに、僕の目の前で大きくのびをして、こちらに歩いてくる。

 今まで気がつかなかったけど、立ち上がると、僕よりも背が大きく、姿形は犬なのに、全然別の生き物にしか見えない・・・

 犬は僕の目の前まで歩いてくると見下ろすように立ち止まり、顔を近づけてきた。

 自分より大きな動物が目の前に顔を近づけてくるのは恐怖しかなく、僕は目をギュッと閉じる。

 襲われると思ったのだが、顔に鼻息が掛かっただけで、創造していた痛みはなかった。

 突然、頬を舐められ、おそるおそる目を開けると、犬は僕に頭をこすりつけてきた。

 まあ、じゃれているつもりなんだろうけど、圧がすごく、後ろによろめいてしまった。

 「そろそろ動けるみたいねー。無事でよかったわ。」

 アルテミアスさんが安心したようにのんびりした声で話す。

「あ、あと、その子、犬じゃなくてフェンリルっていう動物なのね。あなたに助けてもらったのが嬉しくて一緒について行くって言っているから、連れて行ってあげてね。あなたがこれから暮らす世界は残念ながら危険と隣り合わせだし、人の命も軽く扱われる世界なの、でもその子がいれば少しは安心できるわ。」

 アルテミアスさんの言葉に合わせるかのように、犬は頬をすりすりしてくる。動作は完全に犬なんだけど。

 僕はおそるおそる手を差し出して、目の前の犬?の首もとをなでると、尻尾をぶんぶんと振り回している。

 仕草が可愛いのに、回る尻尾で結構な暴風が起こっているのはちょっと情報として処理しきれない。フェンリルって何だ?犬とは別なのか?

「フェンリルっていうのはね、ファンタジーな世界では定番の生き物で、狼の種類で言うと一番上の位に居る動物なのよ。とっても強くて、ドラゴンかフェンリルかっていうくらい強い生き物なの。」

「そんなフェンリルにあんな大きな怪我をさせる生き物も居るんですね。」

僕がそういうと、少し悲しそうにほえた。

「人間にやられたの。同族の子供を庇ったために、怪我をして動きが鈍くなったところを取り囲まれて。」

ハンデはなければ負けないのに、そんな気持ちが目の前の生き物から伝わってきた。

「ところで、何時までもフェンリル、フェンリルって呼ぶわけにはいかないでしょ。名前をつけてあげてね。」

「名前はないのですか?」

コロとかポチとか。と考えてたら、目の前のフェンリルがちょっと悲しい顔をした。なんとなく名前の響きに強いイメージがしなかったのだろう。

「じゃあ、『ギン』ってどうかな?ギンというのは、僕の国の言葉で光沢のあるちょうどその毛皮の色を差す言葉だよ。」

僕がそういうと、嬉しそうに尻尾を振って僕に頭をこすりつける。だから、手加減をと思うまもなく、後ろに吹っ飛ばされる。まあ元気になって何より。

「その名前気に入ったみたいね」アルテミアスさんが賛成してくれた。

「じゃあ、今からギンということで。」

僕がそういった瞬間、ギンの体が光り、そしてその光が消えていく。

「あるじ、ありがとう。」

「へっ?」あまりに突然のことで、ちょっと間抜けな声が出てしまった。今の誰?パート2

「あるじに名前をもらったので、お話出来るようになったんだよ。」

言葉の感じからして、フェンリルのギンはまだ子供だったらしい。


「そろそろ転生の時間ね。さっきのステータスっていうのは、こっちの世界の定番で自分の情報を知るためのものだけど、いつでもどこでも確認できるというものではなくて、修道院で私にお祈りを捧げることで使えるんだけど、一度使ったら1ヶ月は使えないから、沿う頻繁でなくてもいいから、時々は修道院に顔を見せにいらっしゃいね。そのときのカルマの数値次第でいろいろ良いこと起こるかもしれないし、逆に数値が低いと悪いことも起こるかもしれないから。じゃあね。分からないことがあったら、お祈りのときに聞いてね。今よりもずっと時間が短いけど、少しくらいなら教えてあげられると思うから。」

そういうと、アルテミアスさんは手を僕の目の前に差し出す。

目の前がまぶしき光だし、そして・・・


まぶしさが落ち着いてきて、僕は薄目を開けると助助に視界を取り戻す。

そして場面は最初に


見たこともない、というか特撮映画ものでなんとなく見たことがあるような生き物が目の前にいます。

どうしてこうなった。


目の前の巨大な生き物から、張りつめた緊張感と共に言いしれようのない圧が伝わってくる。

「どこから来た、なぜ人間がこんなところに居る」


こんなところ?

辺りを見回してみる。一面砂礫と岩に覆われた森林限界を超えた高い山の上で見かけるような光景がそこにあった。

さっきまで、よく分からない光に包まれた空間に居たのに。

よし、とりあえず考えることはあきらめよう。


「答えぬか。」

その言葉と共に現実?に引き戻される。現実でいいのかな?

「えーと、私にもよく分かりません。」僕はおそるおそる答える。

僕の前に庇うようにギンが立ちはだかる。

殺気を向けられたことで、低いうなり声を上げながら警戒し、僕を守るような位置取りで、その大きな生き物の前に立ちはだかる。

「ほう、フェンリルか。人間と一緒にいるとはな。」

あ、今気がついたけど、普通に会話しているよ。なぜだろう?

「我の主だ。古龍といえど、主に危害を加えようとするなら承知はせんぞ。」

「フェンリルが人間に従うだと?」

「我の恩人だ。」

言葉を交わすごとに、両者の空気が張りつめていく。なんとなくだけど、このままはよくないな、うん。

僕は後ろからギンに近づいて、首のあたりをもふもふする。

「ちょっ、主、何をしているのだ。今ちょっとシリアスなモーメントだということは見て分かるだろう。」

うん、知ってた。

このままだと一触即発だよね。

それに、なんだろう、目の前のドラゴン?こっちに敵意を向けるというより、落ち着かないような、どこか悲しげな目をしている気がする。


「グ、グルゥ・・・」

張りつめた緊張感を切り裂くようなうめき声が、別の方角から聞こえてきた。

その声につられて、そちらを向くと、そこには複数の色とりどりのドラゴン?が横たわっていた。

一体何が?

僕は、反射的にそちらに向かって走り出した。目の前のひときわ大きなドラゴンが、大声で静止するのも耳に入らなかった。

僕は駆け寄ると、鞄の中から、聴診器を取り出し、横たわっている竜のうちの一匹に当てる。

心臓がどこにあるのか分からないので、少しずつ場所を変えながら聴診器を当てていく。横たわって居る竜は困惑していたが、拒む気力もなかったうぴだ。

「最初に立ちはだかったドラゴンが、殺気をだだ漏れにしながら、「すぐにそこを離れろ!」と怒鳴った。

 僕はその言葉を無視して、その近くに横たわる別の色のドラゴンに駆け寄り、同じ場所に聴診器を当てる。

 そして、マズ間違いないと思うけど、今までドラゴンに聴診器を当てたことないので、正常な心拍数がどのようなものか分からない。種類が違うと個体差以上の違いもあるのかもしれないが、基本的に体が大きいほどストロークは襲いはずだが、比較対象になる正常な心拍数のデータが欲しい。

僕は、先ほどから怒鳴り散らしているドラゴンに向き直ると、近づいていく。

「なんだ、人間、我と戦うのか?」

「主、おやめ下さい。そこのドラゴンは竜種の中でも最高位に位置する古龍、我でも庇い切れません。」ギンが必死に服の裾を加えて引っ張りとどめようとする。言葉とは対照的に仕草はじゃれている子犬のそれでなんか可愛い。

僕はあ、古龍に近づくと、おもむろに話しかける「見てたと思うけど、今から同じように、この器具を当てるから、興奮せずに落ち着いてゆっくり呼吸をしてくれるかな。正常な龍の心拍数を他のと比較するから。」

「なんで我がそんなことをせねばならんのだ。」

「争っている時間がないんだ!」古龍の拒否に僕は怒鳴った。

「お、おう。」

僕の剣幕に驚いたのか、目の前の古龍が瞬きをしている。

僕は古龍の心臓に・・・届かない。さすがに3階建ての家、2階の窓ぐらいにある場所まで聴診器を当てる野は無理がある。

そうなると

「ちょっと、右手を僕の前に差し出してくれるかな。?」

「なんで我が矮小なおぬしの言うことを聞かねばならないのだ。」

「良いから早く!」

「お、おう。

僕は差し出された手から腕を伝わって肩に回り、そこから、鱗をつかみながら、クライムダウンして、心臓の辺りまでたどり着くと、聴診器を当てる。

やはり、このサイズの龍の心拍数に対しても、横たわる竜の心拍は弱すぎる。

「伏している竜はいつからこの状態だ?」

敬語で話をするのも時間がもったいない。

「3日前からだ。」

「体調が変わる前に何か変わったことがあったか。」

「いや特に思い当たるものはない。」

「一番最初似体調が悪くなったのは誰だ。」

「おそらく我だろう。そこにいる竜たちは、ここに来てから弱っていった。元々、ここには我と我の子供だけが住んでおった。」

なんだって?

「あんたの子供?今どこにいるんだ!」

「む、向こうの洞窟に、もはや長くはないだろう。最強を誇る龍が原因不明の病に倒れるとは。」

目の前の古龍は絞り出すようなうめき声で悲痛な声を上げた。それでも子供の側にいないのは、一族の長としての責任感だろうか。

気がついたら示された洞窟に向かって駆けだしていた。あわてて古龍が後を追ってくる。

洞窟野中に飛び込むと、果たしてそこには他の竜に比べても遙かに小さな、とはいえ僕やギンよりは大きな竜の子供が浅い呼吸で横たわっていた。

僕は鞄の中から、注射器を取り出すと、後をすぐに追ってきた古龍は、それを見て再び殺気を全開にする。

「一体何をするつもりだ!」

僕は、親である龍に、出来るだけ落ち着かせようと心がけながら説明する。

「今竜が苦しんでいる原因として、もっとも考えられるのは、なにがしかの病原菌が体内、おそらくは血液内に入ったということだ。他の龍がこの場所に来る前に、あなたが真っ先に病気になったときに他の今苦しんでいる竜が居なかったということは、あなたから他の竜に感染していると考えるのが自然だ。ポイントオブオリジン、つまり一番最初に発症し感染の根源になったのはあなたと考えられ、そこからなにがしかの方法で他に感染している。おそらくは空気感染する病気だろう。ギンや僕たちにも感染のおそれはあるが、今はそんなことを言っていられない。まず、間違いなく血液中に病原菌が存在するはずだ。そして、これはあくまでも希望も含めた推測だが、病気から回復したあなたの血液中には病原菌に対する抗体が存在するのではないか。」

「あーーーっ」

僕の言葉は古龍のひときわ大きなうめき声でかき消された。

荒い息づかいだった子供の竜の呼吸が途絶えていた。

覚悟はしていたとはいえ、目の前で自分の子供を失った苦しみは想像に難くない、けど・・・あきらめるのはまだ早い。

僕は、注射器をもって悲痛な叫び声を上げている竜に近づく。

その気配を察知し、古龍がひときわ鋭い目でにらみつけてくる。それでなくてもたった今子供を失ったばかりで、やり場のない憤りをこの場に居る異分子である自分に向けようとしているのは誰の目から見ても明らかだった。

「何がしたい。」

怒りを押し殺して、低い声で話す古龍の声はちょっと、いやかなり怖い。

「あなたの血をこの容器の分だけもらう。」

「何が目的だ?」

「とりあえず、今急ぐのはあんたの子供を助けるためだな。」

「何を馬鹿なことを言っている。息子が死ぬところをおぬしも見ていただろう!」

「確かに今は心臓が止まっているようだな。」

「だから何訳の分からんことを言っている!」

「詳しく説明しているひまなどない!うまくいく保障などどこにもないが、やってみて損はないだろう!」

会話がヒートアップしてしまう。

そこへため息をつきながらギンが割り込んでくる。

「なあ、古龍の。ここに居る人間は我の主だが、我もこの主に命を助けられたのだぞ。失った血も血管も修復して。駄目かもしれんが、このまま何もしなければあんたの息子はそこで亡くなったままじゃないのか。さすがに我も、この人間が支社を生き返らせることが出来るとは思わないが、全く無駄なことを、おぬしを怒鳴ってまでするとは思わんぞ。」

「うーぬ。」

古龍は考え込んだが、答えを待っている余裕などない。心臓停止して最初の3分が最もクリティカルで、その時間を過ぎると蘇生率は極端に下がっていく。

僕は、返事を待たずに、古龍の足の爪の間に注射器を突き刺し、採血する。

「そんな細い針で我の体を突き抜けるなどと・・・なん・・・だと?」

手際よく採血すると、特殊なゴムで封印した容器の中に注射器から血液を半分移し、すぐにプルンにその容器を渡し、ギンのときのように増殖させるよう告げる。

僕は残りの半分を心停止した竜の子供に注射する。

心停止後もしばらくは血流が生じていることは研究により分かっている。・・・まあドラゴンについては知らないけど。

もっとも、このまま心停止の状態を長時間放置する訳にはいかない。

僕は、CPR(心肺蘇生施術」を開始することにする。

人工呼吸は不可能であるから、心臓マッサージ、この場合電気ショックによる心肺機能回復措置である。

こんなところにAEDなど存在しないが、なぜか先ほど目覚めたときから、頭の中に医療魔法として手に雷魔法をまとわせて、電気ショックを与える方法が可能だという情報が浮かんでいる。

僕は何時覚えたのかも記憶のないその魔法を発動させる。右手にプラスの左手にマイナスの電極をイメージしながら、体全体を雷にまとわせる。

ドンッ

目の前の仔竜の体がビクンと波打つが、再び止まってしまった。

まだまだだ

そこにプルンが分裂した個体に容器を持たせて1体ずつ並んで容器を渡してくる。

僕は、1回1回血管を探して注射しなくてすむように、鞄の中から点滴用の針と接合部分を取り出して、すぐに仔竜の血管に差し込んで、手セットされている吸入部から、血液を注入していく。

一瓶ごとに、CPRを繰り返す。

「戻ってこい!未来を簡単にあきらめるな!」

目の前で動かない仔竜に呼びかけながら、僕はSPRを繰り返した。

「もう、・・・いい」

古龍がそうつぶやくのと、仔竜の体がぴくんと動いたのは同時だった。

「あっ・・・」

僕は、発動しかけていた電気ショックをあわてて止める。止まっている心臓に電気ショックを与えるのは動かすためだけど、動いている心臓にショックを与えると止まっちゃいからね。

そう、すんでの所で止めたはずだったのが、なぜか僕の手が仔竜の体から離れなくなり、そしてそのまま吸い込まれるように強い力で手がくっついてしまった。

何が起こったのか分からないうちにどんどん力が抜けていく感覚が。

「リ、リヴァイヴ・・・だと?術者など何千年も現れなかった神聖魔法の最上位じゃないか、こんな何の脅威も感じられない男が伝説の魔法使いだというのか・・・」

古龍が何か言っているが、正直言葉は分かるが意味が分からない。

「どうだ」、我の主はすごいだろう?」ギンはなぜかドヤ顔だな。

あ、駄目だ、意識が遠のく・・・


・・・・・・・・・


・・・・・・・・・


・・・「我、ウィルヘルム・バハムート7世が一子、をヴィルヘルム八世、真の名において、ここに主ケントと契約する。生ある限り、主の側に・・・」

そこで、僕の意識は無くなった。



・・・


・・・


ぺちぺち


ぺろぺろ


?????


何だ?


顔に何かが当たる感触で僕は目を覚ます。


目をゆっくりと目を開けると、まぶたの隙間から少しずつ光が差し込まれ、そして少しずつ目の前の景色が象を結び、彩られていく・・・

そこにあったのは、額に乗っかってぺちぺちと頬をたたくプルンと反対側の頬を心配そうに舐めるギンの姿だった。


「あ、ご主人起きたー、おおはよー」

プルンの間延びした元気な声が少しおかしくなって微笑んでしまう。

「あ、主、よかった。」

あ、ギンが普通の子犬に戻った。なんか「我はー」とか大人ぶっちゃったこと言ってたのにー、ってあれ夢かな?

僕はゆっくり起きあがろうっ・・・・・えっ?


「ドーーーン」

大きな音と衝撃と共に、僕は突然吹き飛ばされ、地面を転がる。

あ、死んだ?

「「こら、主に「ご主人に」何をするんだ!」」

なんとか生きているな、と立ち上がって声のする方に目を向けると、そこには項垂れた古龍の姿があった。

「ご、ごめんなさい、嬉しくて飛びついたの、悪気はないの。」

プルンとギンにひたすら謝り続けていた。

「ああ、元気になったのか、それにしても生き返って良かった。」

僕の声を聞いた仔竜は僕の方を向くと、目を輝かせ、再び飛びかかろうとしてきた。

「ちょっと待った。僕が何を下か知らないが、怒っているなら、まず理由を教えてくれ、話し合えば分かる。」

僕はエネルギーって質量掛ける速度だよなあ、とどうでも良いことを考えながら、あわてて飛びかかろうとしてくる仔竜に思いとどまるようお願いする。

「あ、そんなつもりじゃ・・・」思い出したように仔竜が項垂れてしまったので、「まあ持ち直したようでよかった。」と言葉を掛けると、歌旅嬉しそうに顔を上げてゆっくりと歩いて近づいてきて、顔を僕の頬にこすりつけてきた。どうやら感謝のジェスチャーかな?

「息子を助けてくれてありがとう。」

背後から重低音で声が響く。振り向くと古龍がそこに居た。

「あ、いえ、なんとかなってよかったです。」

そう答えて僕は思い出す。

「どれくらい僕は機を失っていたのですか?」

おなかがすいているので、けっこぷな時間が経過しているはずだ。

「人間の時間の単位は知らんが、日の出から日が真上にくるくらいか」

約6時間と考えるべか、こんなところで寝ている閑はない。

「もう一度血液を頂きます。」

僕はそういって、注射器を魔法で「洗浄」した後、再度古龍の足の爪の間から採血する。

「そう、その武器なんだが、なぜ我の鱗を貫通して血管にまでたどり着けるのだ。我の体表に傷を付けることが出来る武器など、特急遺物くらい用意しないと無理なのだが?」

「あ、そういうのはまた今度にしてもらっていいですか?他にも助けたい命があるので。」

僕は採取した血液を容器に移すと、注射器を洗浄しながら、洞窟の外へ走り出す。

赤、青、緑、黄色の竜が最初に見た時よりも病状が悪化した状態で横たわっていた。

僕は、それぞれの竜から、同じように採血し、それぞれ容器に移すと、混同しないように、容器に竜の色のひもを巻き付けておく。鞄の中には大規模な事故現場で治療の優先順位を決めて患者を区別するためのトリアージのタグが入っているのだが、なぜか同じ色のひもになっていた。青、緑、黄色、赤の準に生命への危険度が増し、治療の優先順位が上になる。ちなみに、古龍と仔竜の体色である黒は、治療が間に合わないので、あきらめるという意味の色だけどね、ここではその通りにならなくてよかった、はは。

なので、ちょうど同じ色のひもがあるんだよね。

次に、僕は、それぞれの竜の血液をシャーレに一滴ずつ垂らして、拡大鏡で観る。

神経縫合用の拡大鏡で細菌まで視認するのは無理なはずなんだが、なぜか僕の手元にある拡大鏡は顕微鏡の倍率までカバーしてしまっている。理由は分からないが、もう考えることはあきらめた。プルンに血液を増やしてもらっている時点で、現代科学では説明できない何かがあるとしか言いようがないからね。

ルーペの先には、想定通り、血液の細胞を破壊しながら増殖する細菌が確認出来た。細菌を攻撃し、無効化する細胞も確認出来たが、細菌の数が多すぎて、攻撃細胞が時間のけ以下と共に数を減らしていくのが確認出来た。これが病気の原因であることが特定出来た。

僕は、次に、それっぞれの竜の血液に病原への抗体を含む古龍の血液を加えてみる。

確認したいのは病原菌にだけ抗体が働くのか、それとも竜の血液細胞まで異物と判断して攻撃してしまうのか、である。本当は仔竜にもこの手順は必要だったのだけど、親子で、同一種だからと賭に出てみた。さすがに今回は種族も違うようだし、変にアナフィラキシーショックを起こされてもたまらない。

拡大鏡下で観察していると、抗体は病原菌だけを攻撃するのだが、元の竜の遺物を攻撃する役割の細胞、竜の場合でも白血球でいいのかな?、は古龍の血液を遺物そのものと見なしてしまっていた。

そこで、僕は神経縫合用の針を取り出し、古龍の血液のをシャーレの上で、細胞同士が立体的に重ならないように薄く広げると、古龍の血液の中の病原を攻撃する細胞以外の正常な細胞をつついてその細胞壁を壊して、白血球も含めて除去し、病原に対する抗体だけ残るようにした。

今度はそれを各血液に加えて行くと、抗体は病原細胞だけを攻撃し始めた。

これならいけるだろう。本当はこんな単純な話ではないいんだけど、思考は放棄しておこう。

そうやって抗体だけを残した血液を再び必要な量に増やさなければならない。

1mgの何十分の1程度の抗体を。何トンの竜が十匹以上居る状態で確保しなければならないのだが、プルンは優秀だった、というより優秀すぎた。

10秒ごとに2の自乗で増えていくその数は、わずか10分も経たないうちに計測不能な数値になる。場所が足りなくなったところで容器を移し替えて量を増やしてさらに増殖を続けていくが、10分経過したところで2の59乗倍にふくれあがり、必要にして十分過ぎるほどの抗体が確保出来た。

それを、一帯ずつ何度かに分けて注射していく。点滴の針はそれほそ多くはないので、公平になるように、一回一回か血管を探り当てて注射することになるが、注射器に対してあまりに血管が太すぎて、ミスする懸念は全くなかった。

針が体表を貫くことについては再度驚かれたが、そうでないと注射器の意味がないので、この世界の常識?らしいドラゴンには文字通り歯が立たない、は知らなかったことで済ませることにする。

全部の竜に抗体の接種が終わると、熱が出るから、間違っても油断しないようにと告げて、急速を取ることにする。

それにしても、お腹がすいた。

あ、そういえば救急セットの中に非常食が入っていたはずだ。


「それにしても、ここはどこなんだろう?」

少し落ち着いてきたので、辺りを見回す。やっぱりどこかの山の上だよな?

「ここは、竜の住む山。麓の森を抜けたところに人間の住む村がある。なぜおぬしらがここに来たのかは知らんが、本来人が来る場所ではない。もっとも此度は助かった。」

古龍が重低音の声を響かせて、僕の独り言に答えてくれる。

「あ、一応、まだ容態が安定するのを見届けないと。あと、病原菌の感染方法が分からないので、念のため空気感染の可能性を考慮して、周囲一体を除染する必要があるよ。」

「じょせん、とはなんだ?」

「病気をもたらした細菌を全部死滅させることですね。空気中や体表についたものがどの程度で死滅するのか分かりませんが、消毒液を散布する作業を通常言います。」

「人間はそんなことも出来るのか。」

何に感心されたのか分からないけど。

「主なら浄化の魔法が使えるだろ?」

ギンが話に割り込んでくる。

「浄化って注射器を綺麗にしているやつ?」

「それも一つなんかも知れないけど、辺り一帯から悪い物を全部無くしてしまうイメージで。」

「ふーん、そんな魔法があるのか。じゃあ、浄化!」

何気なく僕がそうつぶやくと突然体中が光りだし、その光が母校を中信に周囲でと広がる。その光は辺り一帯を包み込み、そのまま光り続けて消える気配すらない。

「うわあ、何だこれ。」

あわてて、ギンの方を向いて「これなんとかならないのか?」と言うも、ギンは笑い出してしまい、放置されてしまった。

「もしかして、からかった?」

僕がギンにちょっとムッとした感じで言うと、隣の古龍が驚きを隠せない様子で、「ピュ、ピュリフィケーションだと?先ほどはリヴァイヴで今はぴゅりふぃけーション、それもここまでの範囲で、神聖魔法の使い手とは、神の化身か?」ブツブツと独り言を言い出す。

僕があたふたしていると、光が収まってきた。

ギンが「さすが主、この山全部浄化してしまったようだし、悪い気配も消えているよ。」

除染作業って大変だし危険なんだけどなあ。もう考えるのはあきらめよう。

もう何度目かも忘れてしまった思考放棄のプロセスを経て、僕らは洞窟の隅を借り、寝ることにした。

一応病原の古龍から竜たちへの発症の期間を考慮し、まる48時間そこで待機して患者の竜たちの経過観察をした後、古龍に聞いた山の麓の森の先の村を目指すことにした。

僕らは、並んで見送っている竜に別れの挨拶をして・・・あれ?なんで仔竜が竜たちに別れの挨拶を?

「では達者でな。竜種の誇りを忘れることなく、自らの主を守るのだぞ。」

えーと古龍さんは自分の息子に何を言っているのかな?

頭に疑問符を浮かべながらその光景を眺めていると、古龍がこちらを向く。

「主殿、竜という種族は自分より力の強い者、命を助けられた者には忠実に仕える生き物なのだ。普通はそんな者そうそうと居るはずもないのだが、主殿はまごう事なき強者、それも我より魔力の高い者などまさかこの世に存在するとは思わなかった。神の地上での仮の姿と言われても信じるぞ。ということなので、我が子をよろしくな。息子はまだ幼竜だが、その辺の魔物では相手にならんぞ。ここにいる成竜よりも力は上でだしな。」

「いやいやいや、なんでそんなことに?」

「は?これは異な事を?我が子は主殿の従魔になっておるぞ?あと、我の名はヴィルヘルム・バハムート7世、息子は8世である。ケント殿、名前はそこにおるフェンリルより聞いて折る。息子の従魔契約に必要だったのでな。竜が真名を教えるというのは、その相手に忠誠を尽くすという意味じゃ、決して軽いものではないので、そう思って頂けるとありがたい。竜族を束ねる長として、これよりケント殿は我ら一族にとって大切な客人である。困ったことがあったら遠慮無く頼られよ。」

ヴィルヘルム・バハムート7世がそういって胸を張る。

どうでもいいけど、名前長いな。

「失礼に聞こえたら申し訳ないんだが、ヴィルさんと呼んでいいだろうか。名前が長いので、その都度フルネームは煩わしい。」

「はっはっはおぬしも見かけによらず、勇気があるのだな。普通の人間は我らを前にして正気を保つのも難しいのに。それをこれだけの竜に囲まれて平常心とはな、さすがに我が子が惚れ込むだけのことはある。全然構わぬ。好きに呼ぶがよい。真名を他人に聞かれるのも面倒なので、こちらとしても、その方がよい。これより我ら竜種一族が未来永劫ケント殿の味方、他の者もよいな。」

ヴィルさんは後ろを向くと、整列している竜たちにそう告げる。竜たちは承服の証として、頭を下げた。

「おー、忘れるところじゃった。あれを持て。」

ヴィルさんが合図すると、後ろから竜が3頭出てきて、おもむろに羽の陰から、大量の金貨や銀貨、宝石類果ては、派手な装飾のついた剣やアクセサリーを僕の目の前に積み上げていった。

ヴィルさんは続ける「あのままケント殿がこの地を訪れなければ、我以外のここにいる全ての竜は死んでしまっていただろう。命を救ってもらったお礼として受け取ってくれ。」

えっ?

「いやいやいや、どう考えても多すぎるでしょ。そんなつもりで助けた訳じゃないし、元でも掛かってないですし。」

「ケント殿、命を救われた我らの立場にご配慮頂きたい。お礼もせずにケント殿を帰してしまっては我ら一族は恩知らずのそしりを受ける。それに、竜族は光る物を集める修正があるから、こうして、ここにある物だが、我らが持っていたところで、本来何の価値もないものなので、気にしてもらう必要はない。」

「いやそれにしても、」

僕がなおも断ろうとすると、ヴィルさんががっくりと項垂れてしまった。えーっ?そんなに落ち込まれると僕が悪いことをしているような罪悪感に苛まれる。

「あーっ、済みません、私が悪うございました。ありがたく頂戴致します。」

「うむ、そうか。遠慮無く受け取ってくれ。」

急に顔を上げてニカッと笑顔になるヴィルさん、あれ?もしかして演技だった?

「一応受け取りますが、こうしましょう。子供さん、えーっと、こっちも名前長い上に、7世と9世の違いしかないので、ムートと呼ぶことにしますね。ムートが里帰りするときに、この人間のお金で、欲しい物とか必要なものとかを買って持ってきますので、それで手打ちとしましょう。あと、今回の抗体は余ったものを保管していますので、万一、万一今回と同じ症状が出た場合、それも仲間内に一人でも出た場合、私に知らせて下さい。その上で、連絡するその一頭以外は、他の、特に病気になった個体に近づかないこと。それだけはお約束して下さい。」

「合い分かった。心遣い感謝する。」

それではケント殿も息災でのう。

会話が一段落したので、僕は目の前に山積みにされてしまった金銀財宝を四次元収納に納めると、さあ出発しようと思い立ち、そしてふと立ち止まる。

「いや、こんな山の上につれてきて、どうやって人の住む場所までたどり着けと?」

どう見ても元凶だろうアルテミアスさんに悪態をついていたら、ヴィルさんが「我が近くまで運んでやろう。乗るがいい。」

と大きな体を伏せて片方の羽を地面につけた、そこから背中によじ登れということらしい。

近くまでというのは、あまり人間の住む場所に近づきすぎると人間がパニックになるかららしい。まあさもありなん。

お言葉に甘えて、僕たちはビルさんの背中に乗る。

ドラゴンに乗って空を飛びました、なんて職場のど雨量に言ったら、「頭でも打ったか?」「過労で幻覚でも見たのだろう。死ぬ前に休養したほうが良いぞ。」とか言われるんだろうなあ、と暢気に考えていたけど、普通にドラゴンの背中に乗って山を降りるとか、怖すぎる。股間がスースーします。

生きた心地のしなかった3分後には、麓の森さえ抜けた原っぱに着いたけど、地面に降りた途端に、その場にしゃがみ込んでしまった。いわゆる腰が抜けたってやつ。

立ち上がれない状態を横目に、「此度は本当に世話になった。息子をよろしく頼む。」そういってヴィルさんは元来た山頂に向かって飛び立っていった。

しばらくへたり込んでいたけど、呼吸を整えていたら、どこかに行っていた気持ちが帰ってきたらしいので、立ち上がり、村がある方向とギンが示してくれた方向へと歩き出す。

ギンが背中に乗せてくれるというので、腰が抜けたばかりで、歩き続ける自身がないのと、お腹がすきすぎて力が出ないこともあって、言葉に甘えることにした。ムートは空を飛べるけど、ギンの走る速度に追いつけないとのことで、小さくなって、僕の肩の上に乗った。

この世界に来てから、質量保存の法則ってなんだっけ?と思う出来事を立て続け仁摩の辺りにしているので、まあそういうものか、と納得することにして、僕の両肩にプルンとムートが乗ったまま、ギンに乗せてもらい、村の方向に走りだした。

ギンの走る速度は車よりも速かったが、不思議と振り落とされる危険すらなかった。犬?狼?に鞍もなしに乗って騎乗姿勢が安定するはずもないのだが、うんやっぱり考えても分からないので、よしとしよう。


すぐに村?柵に囲まれた家が立ち並ぶ集落が見えてきた。

まだ、太陽は真上にある。

あまり近づきすぎないところでギンから降りて歩き出す。

あまり近くまでギンくらい大きな動物が走って近づくのもいらぬ騒ぎを起こしかねない。

どんどん、村が近づいてくる。もう少しでこの世界で初めて人間に遭遇することになる。


こうして、僕の新しい人生が始まることになった。

                        シーズン0 完


 アストリア歴893年

 医療の現場は崩壊の危機に瀕していた。

 治癒魔法は神より与えられた魔法であり、選ばれた者のみに許された魔法と、術者を囲い込む教会と怪我や状態異常から回復させるポーションを作る薬師はギルドに所属しなければならないと、ポーションの製造を独占しようとする薬師のギルドの勢力争いに、貴族や商人までが利益を求めて参戦し、人々にとって無くてはならない怪我や病気の治療はすっかり金儲けの手段となりはてていた。

折しも、いずれの組織にも属さない転生者が異世界の地に降り立つ。

権威を嫌い、束縛を嫌い、でももふもふの群れは大好き。

冒険者のライセンスと神にもらったチートなスキルだけが彼の武器だ。

救急医 蔵久健斗またの名をどドクトルテイマー


 もしかしたらTo be continued


ブックマークが500を超えるようであれば、時間を見つけて本編を書いてみようかと。


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