表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

04話

魔獣。今年になり突如として出現した巨大生物。その巨体はビルをなぎ倒し、人々には恐怖を植え付けた。

その出現のランダム性や市街地での出現に国は対応できずにいたが、現在に至るまで魔獣のすべては討伐されており、そのすべてにおいてとある存在の確認がされている。

それが「魔法少女」である。魔法少女はどこからともなく現れ、魔獣を討伐したのちにその姿を消す。彼女らに救われた人は数知れず、さらには魔術でも呪術でもない神秘の力を扱うためその存在を知る多くの人々に神聖視されている。

そしてもちろん、今回の襲撃にも彼女たちは現れる。オレンジ色のドレスを纏ったドロシーと、紫色のドレスを纏ったアリスと呼ばれる魔法少女たちは近辺の街では有名だ。


「今日は少し小さめ?少しは楽ができそうだね」

「ドロシー、油断。だめよ?」

「そ、そうでした~。よし!じゃ、気合い入れて……」


ドロシーが魔獣を向き、構えると背後から声が聞こえた。

緑色のドレスを纏った魔法少女が息を切らしながら合流する。


「ハァ……ハァ……ごめんなさいセンパイ!遅れました!」

「マルも来たの?ここまで遠かったでしょ?」

「ええ、ですが先輩たちの為ならたとえ火の中水の中……」


マルと呼ばれた魔法少女が語るが


「……行くわ」

「あ!?アリス!?」


そんなことはどうでもいいとアリスが魔獣へと駆けてゆく。


魔獣は3階建ての校舎をゆうに超える巨体であり、すでに多くの生徒たちが逃げていた。

もちろん体育館にいたセイマたちも逃げるために教師のあとをついていくが、「ミシリ」という軋む音のあとに弾けるような轟音が響き、避難経路はセイマの目の前が瓦礫によって分断された。


「椎堂!大丈夫か!」


教師の声が聞こえる。セイマの頭上は天井が吹き飛ばされてており崩れる心配は無いようだった。


「こっちは大丈夫そうです!先生はみんなを先に誘導しててください!」

「だ、だが……うぉお!?」


魔獣が地面を踏みしめ、地鳴りが響く。その振動せいか生徒たちの頭上からはパラパラと天井の破片が降ってくる。


「……すまない!待っていてくれ!」


そう残すと生徒たちを校舎の外に連れ出すのだった。


「さて、どうしたものか」


辺りを見回すセイマ。待っていろと言われたが吹き抜けとは言えここにとどまるのもかえって危険だと思い瓦礫を登って脱出を図る。

幸い大きな瓦礫が多く、登って崩れるということはなさそうだった。

ゆっくりと瓦礫の傾斜を登り本来天井があった高さまで到達、現在のフロアが一階なので二階の高さまで到達したことになる。


「ふぃ~。あとはここから飛び降りて……飛び降りるのか……」


セイマは二階から地面を見下ろし、ごくりと唾を飲み込む。


「ええい!背に腹は何とやらだ!腹くくって……!」


飛ぼうとする直前目の前に魔獣が現れる。

自分を狙いに来たのかと一瞬冷や汗をかくセイマだったが、それが魔法少女の攻撃に圧されたがためにこちらに移動したものだと理解する。


「……!!君!早く逃げて!ここは危ないから!」


オレンジの魔法少女、ドロシーが声をかける。


「つってもこの高さだ!ミスって怪我したら逆に迷惑だろー!?」

「だったらここは、私が」

「うん!アリス頼んだ!大丈夫……?って君は……」


何かを言おうとしたドロシーだったが


「きゃあ!?」


土煙と少女の悲鳴がそれを遮る。魔獣の振った尾によってアリスは弾かれ、地面に叩きつけられる。


「アリス!マルちゃんは……」


ドロシーが見回すと遠くでのびている緑色のドレスを見つける。


「やっぱりまだ実戦は早かったか……ごめんね、ここで待ってて。すぐ倒してくるから」


そういってドロシーは魔獣に向かって戦いを挑む。

光線技でけん制をしているが魔獣も連撃を繰り出し、一向にダメージを与えている様子は無かった。

多くはこの様子にピンチだと焦るだろう。そうでなくても心の中で彼女たちを応援するものだ。しかし彼は、椎堂(シドウ) 勢馬(セイマ)は違った。


(女の子が命張ってんだぞ……ここで黙ってたら……動かんと)


下ろした手が腰についた何かに当たる。それがなんなのかを思い出し口角を上げる。


「漢が廃る、よなぁ!!」


ホルダーから札を取り出し瓦礫に張り付ける。そして右手で照準を合わせる。


「へッ、ぶっつけ本番もいいとこだ。座学で聞いて即実行とか」


下手をこけば自身の命が失われてもおかしくないこの状況、セイマは笑っていた。


「ってぇえ!」


その声と共に札からは鎖が射出され魔獣の首に巻き付き拘束する。その光景を見てドロシーは驚愕し、同時に焦った。


「危険よ!死にたいの!?それに……」


札が貼られた瓦礫は「ズ、ズズ」とゆっくり動く。瓦礫の重さでは魔獣を縛り切れていないのだ。


「これじゃあすぐに動いて……」

「これでいいんだ!いいや、むしろ()()()()()!」


「ズズズ」と瓦礫は引っ張られ、ついには校舎から完全に離れ……

魔獣の頭部に直撃する。


「っしゃあ!クリ-ンヒットォ!」


ガッツポーズを決めるセイマ。札から伸びる鎖に発生する張力を利用した攻撃である。


「すごい……じゃない!ちょっと!」


呆気に取られていたドロシーはすぐに我を取り戻しセイマのもとに飛び寄る。


「なんでこんな危ないことを!」

「文句は後で聞いてやるから。次の攻撃の前に俺をここからおろしてくれ」

「……うん、わかった。けど次はこんなこと」

「いいから早く地面におろせ」


不満げな顔をするドロシーに命令をし、地面に下ろしてもらったセイマ。


「今の一撃できっとターゲットは俺になってるハズだ。俺が囮になって気を引からそれまで大技の準備しておいてくれ」

「それじゃあきっと君は死ぬよ?」

「へッ、これでやられたら恥ずかしくて死んでられんよ」


そういってセイマはしゃがみ、魔獣を見上げる。


「今は少し目を回してるけどこれじゃあすぐ戻ってくるだろうね。乗る?」


ドロシーは周りを見渡す。仲間は気を失い、戦線復帰までに時間はかかるハズだ。

ならばこの男を信じるしかない。そう考え覚悟を決める。


「うん、わかった。でも危険を感じたらすぐ逃げてね」

「善処します」


ため息を一つついてからドロシーは飛び上がり、魔獣の死角となる部分で魔力を溜める。

一方のセイマはいまだ目を回す魔獣の目の前に立っていた。

混乱していた魔獣は少しずつ焦点が合い、その瞳はしっかりとセイマを捉えた。

明らかな怒りの形相でセイマを睨みその巨大な尾で叩きつけようとする。


「それだ!そいつを待っていた!」


そう言って微笑むと再び右手で照準を合わせ


「いっけぇぇえ!!」


と叫ぶ。鎖は尾に巻き付き、地面に縛られる。正真正銘、今度こそ完全拘束である。


「どーだい!これで動けねえだろ!」


尾も縛られ身動きが完全に取れないと踏み、目の前で高笑いをするセイマだったが魔獣の動きの異変に気付く。

巨大な口から炎が零れ、その鎌首をもたげる。そしてその炎をセイマめがけて吐き出す。


「うぉおお!?」


間一発避けることができたセイマ。しかし避けた際の反動と熱波による強風で、ホルダーから札が飛ばされてしまう。

何とか一枚だけ回収はできたが残りは炎の中に飛び込んでしまった。


「チッ……残り一枚かよ……あっちは?」


空を見上げドロシーの方に視線を移す。ドロシーもセイマに気づき視線を合わせると顔を横に振った。


「まだなのか!クソッ、どうすれば!」


半分諦めそうになったセイマが視線を下ろす。その視界の端にはにはあるモノが転がっていた。


(こいつじゃどうにも……)


それでもどうにもならないだろうと膝をつきかける。しかしその脳内に一つの策を思い浮かべ、手の中にある札と地面に転がるモノを交互に見る。


「一か八か、やるしかない、か」


セイマは覚悟を決め再び魔獣を見据える。最後の一手をぶつけ、勝利を得るために。

ここまで見ていただきありがとうございます!

ブックマークと高評価よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ