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公募、企画もの短編集

コヨーテ・ホイホイは探すよね

作者: ぱいぽい

「どこにあるんだろうね。

 どこに落ちてるんだろうね。」


コヨーテ・ホイホイは探します。

野の花の間。大きな木の根元。お月様みたいな表情の岩の影。


あっちでホイホイ、こっちでホイホイ。

どこもかしこも探し回ります。



「何か探し物かね。」


通りがかりのお爺ちゃんヤマアラシが尋ねました。


「うん、僕の友達がね、落とし物をしたんだ。」


「ほぅほぅ、それはどういったものかね。」


「あのね、あのね。

 キラキラしたものだよ。」


お爺ちゃんヤマアラシは考えます。


「キラキラしたものか。

 それならここではなく宝石屋さんに行ってみたらいいんじゃないかな?」


「ありがとう、ありがとう!

 それじゃあ、そこに行ってみるね。」


コヨーテ・ホイホイは走ります。

しゅんしゅん走ります。


お爺ちゃんヤマアラシの、

「はて? 家はどっちだったか。」という後ろからの声に、後ろ髪が引かれます。

ちょっとだけ気になります。

コヨーテ・ホイホイに後ろ髪は無いのにね。




宝石屋さんにはキラキラしたものがたくさんありました。

キュラキュラでキャラキャラと、たくさんしています。

ショーウインドウを飾ります。


でも違うなぁ。違うよね。

コヨーテ・ホイホイは首を傾げます。


「何か探し物かな?」


通りがかりの筋肉質な若者エリマキトカゲが尋ねます。


「うん、僕の大切な友達がね、落とし物をしたんだ。」


「ふぅうむ、それはどういったものなのかな?」


「あのね、あのね。

 こんなに大きくないんだ。小さなものだよ。」


筋肉質な若者エリマキトカゲが考えます。


「ふふぅむ、それならあの露天商しかないね。おいらのお気に入りなんだ。

 この道をまーーーーーすぐ行ってね、そうしたらその角にとても美味しいポテトミートパイのお店があるんだ。そこのお店のポテトミートパイが格別に美味くてね。老若男女、みんな虜さ。

 そこの看板娘がこれまた別嬪なチータ娘でね。店長は厳つくてダンディなチータなんだけど、僕は知っている。とても人情味のある親父さんなのさ! それでそこの隠しメニューの卵サンドがね……」


コヨーテ・ホイホイは、ふむふむ聞きます。

かれこれ1時間近く、聞き続けます。


「……、そんなわけでな、自己鍛錬、筋トレこそが我々を裏切らないと思うんだよな!」


コヨーテ・ホイホイはうんうん頷きます。

よくわからなかったけれども、熱意だけはわかります。


「それでね、それでね。

 そのロテン・ショーにはどう行ったらいいの?」


「真っすぐだ!!」


コヨーテ・ホイホイは走ります。

びゃんびゃん走ります。



たくさんのお皿にテラテラ光る小さいものを並べて売ている、ハゲワシ老婆に出会いました。

「頭が良くなります」と立て札に書いてあります。


「これは何ですか?」


コヨーテ・ホイホイは尋ねます。


「魚の目さ。これをたくさん食べると頭が良くなるんだよ。」


「ふ~ん。」

コヨーテ・ホイホイは答えます。


でも違うなぁ。違うよね。

コヨーテ・ホイホイは首を傾げます。


「何を探しているんだい?」


ハゲワシ老婆が尋ねます。


「あのね、あのね。

 これぐらい小さくてピカピカしたものなんだけど、もっと美しかったんだ。」


ハゲワシ老婆は「これだって美しい」とか思いましたが考えます。


「それは誰かの落とし物なのかい?」


「うん、僕の大切な大切な友達がね、落としていったんだ。」


ハゲワシ老婆は全てを察します。

束ねた糸みたいに細めていた目を、カッと精一杯見開きます。

でも思っているほどは開いていません。


「それならね、中央広場の噴水のところにいるだろうね。

 今頃がマックス・ハイテンション・クライマックスだろうさ!

 行くがいい、坊やの探し人はそいつだよ!!」


「ありがとう、ありがとう!

 おばあちゃんも元気でね。」


コヨーテ・ホイホイは走ります。

ごうんごうん走ります。




そこには、中央広場の噴水の前には人だかりができていました。

コヨーテ・ホイホイは、人だかりを分け入って分け入って噴水の前まで進みます。


背丈の高い草原より高くそびえてるなぁ。

コヨーテ・ホイホイは思います。

いつだかの向かい風より強いなぁ。

コヨーテ・ホイホイは思います。


中央広場の前には踊りを終えた、瘦せ細ったアライグマ娘がバラまかれた金貨銀貨を拾っていました。


なんでお金が落ちているのでしょう?

コヨーテ・ホイホイは、不思議に思います。

お金が大切だとみんな言うのに。なんでこんなにたくさん落ちているのでしょう。

コヨーテ・ホイホイは、アライグマ娘は偉いなぁと思います。

でもそれは、コヨーテ・ホイホイが探しているものではありません。




アライグマ娘が金貨銀貨を拾い終え、中央広場の噴水のヘリに腰掛け休んでいます。

もう周りには人だかりはありません。

そこに留まっているのはコヨーテ・ホイホイだけでした。


コヨーテ・ホイホイは首を傾げます。


「ねぇねぇ、お姉さん。

 僕の大切な大切な大切な友達がね、落とし物をしたんだ。」


「それはそれは、一大事だね。」


アライグマ娘が答えました。


「それでね、それでね。僕はそれを探してるんだ。」


アライグマ娘は考えます。

でも答えは見つかりません。


「それは、

 それはどんなものなんだい?」


「あのねあのね、とてもとても小さくてキラキラしていて、

 そしてね、美しいものだったんだ。」




アライグマ娘はまた考えます。


「落とした人は、どんな人だったんだい?」


「あのねあのね、

 僕の大切な大切な、大切で大切な友達だよ。

 おうちの事情でね、遠く遠くへ行かなくちゃならなくなったんだ。」


「それはそれは、悲しいことだね。」


「うん、悲しいこと。」


アライグマ娘はまたまた、考えます。


「その時に、落としてしまったんだね。」


「うん、悲しくてね、寂しくてね、

 とてもとても優しい笑顔でね、

 ポトリ、ポトリって落としたんだ。」


アライグマ娘が、うんうんと頷きました。




「きっとね、

 きっと君の探しているものはね、あの夕日の下にあると思うよ。

 探し続けていたらね、きっと見つかるよ。」


「ありがとう、ありがとう、お姉さん!

 お姉さんも見つけられるといいね。」


「そうだね。

 私も探し続けるよ。」




コヨーテ・ホイホイは探します。


きっと見つかるよね。

大切な大切な、大切で大切で大切な友達が落としたもの。


きっときっと見つけるよね。


コヨーテ・ホイホイは今日も探します。

とんとことんとこ、今日も走ります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 冬童話2022が前作の続きということでまずはこちらから(・∀・)!! エリマキトカゲが好きです!!美味しいものの話をして自己鍛錬でしめるあたりわかってらっしゃる!! この作品、作者読み…
[良い点] シルヴァスタインの絵本「ぼくを探しに」を思い出しました。 かわいいですね! でもよく考えると切ない。 >大切な大切な、大切で大切で大切な友達 どんなに大切なのか。また会えることを願って…
[一言] コヨーテ・ホイホイ君がとても可愛いですね。 捜し物がいつかは見つかるといいね。 最初から最後までほっこりさせていただきました。 面白かったです!!
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