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しゃねるのにっき  作者: しゃねるちゃん
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8月13日

8月12日。


男は、色欲と闘っていた。


彼は日常において、禁欲を旨とした生活を営むのを好んでいた。

嗜好品(お菓子)を慎み、7時間の睡眠を毎日取るように心がけ、自慰行為は禁じていた。

そうすることで一日にメリハリが生まれ、特段何もしない日であってもある程度の充足感が得られたからだ。

もしくは、拘りを持って生きる自分に酔っていたとも言えよう。


その日は朝から頭痛に苛まれ、前日から続く性欲の高まりを沈めんと苦悩していた。

朝から晩までベットに寝転んだり椅子に座って本を読んでみたり、スマートフォンでSNSを確認して過ごす一日だ。

テレビの奥では高校球児が三年間の努力の結晶を身に宿し、己が望む未来へたどり着かんと闘っている。

私は自分の欲を抑えるために寝転がって一日を費やしている。


そうした生産性の無い生活は、さらなる怠惰への第一歩となる。




8月13日。


私の中の堤防が決壊した。


目が覚めた瞬間から情欲に支配された私は、そのまま朝食を取り、その後ついに自分を見失い、自慰にふけった。


私は自分を軽度のナルシストだと自覚している。

それ自身は短所ではなく長所であると捉えているし、むしろこの国の人間は自分に自信がなさ過ぎると思っている。


しかし、自慰に身を落としたときばかりはそのプライドが崩壊するのだ。


何もせずに過去に犯した過ちを繰り返すゴミくず。

それが今日の私だ。


人は一日のうち、自分にとってプラスになることがマイナスになることを上回らねばならないというのが私の持論である。


その理屈でいくと、私は今存在している価値のないゴミくずである。


一度決壊した堤防は瞬時に修繕されることはない。

それからの私は、なんの気力もなく伏せて一日を過ごした。

今日も厚さ1センチメートル強の板の向こうでは五体を太陽のもとに晒し、自分が主役たらんと戦う男たちがいた。


私はベットに寝転びスマホをいじるゴミくずだ。


だが、誠に気に食わないが、

アメリカ大統領にもローマ法王にも干からびたゴミくずにも平等に明日はやってくる。


それならば、いつまでも部屋に体を横たえるゴミくずでいるわけにはいかない。

それがナルシストという生き物だ。腐った自分がこの世界で一番嫌いなのだ。


そのために、3時間ほど前から音楽理論について改めて勉強を始めた。

無論理論などという大それたレベルには到達していないが、ピアノの調や音階、音名について勉強をし、

枕元に立ち尽くす電子ピアノで実践する。


それが気力と体力を枯らした私が今日できる汚名への反逆なのだ。


「カイジ」の地下チンチロ編に登場する大槻班長の言葉に、


「明日からがんばるんじゃない、今日。今日だけ頑張るんだ。」


というものがある。

行動を起こすのは思い立ったとき。それが私のこだわりだ。


ひとまずの目標として、

長調の運指を覚えつつ、

簡単なものでいいから12種類の調それぞれで1曲ずつ引けるようになる。


これを据えて頑張っていこうと思う。

ゴミくずは一日で聖人にはなれないが、一週間もあればきっとまともな人間にはなれるのだ。



8月12日がとんだから日記を止めるのは逆に甘え。

多少の妥協をしないと何事も成し遂げられないのさ。

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