十六話 誕生日プレゼント2
執事のセバスに案内されながらもさっきのギルマスの言葉が頭をよぎる。
「なぁー、ギルマスが旅に出るってどこに行くのかな?」
「いや、次期ギルマス。検討もつかないっす。」
「おい!やめろよ。なんで俺が次期ギルマスなんだろ?出来ると思うか?はぁー。」
(たしかに英雄の次のギルマスは大変そうだ。)
俺はジャックに少し同情しながらグッと笑って見せた。
「お前、からかってるたろ!?次期ギルマス権限で休みなしだな!」
「えーっ!そんな殺生な!ただでさえ、地獄の日々なのに」
軽くふざけていると宿舎の前まで着いてセバスから少し待つように言われた。しばらくすると身長二メートルはありそうな大男がやって来て、
「はじめまして、辺境伯ペンタゴン様の騎士団で団長を務めてるサイコスだ。よろしく頼む。ジャックは王都で騎士団にいたんだろ!?ってことはダニエル様にも教えてもらってたんだろ!?色々ご指導を賜りたい。」
俺は貴族のお抱え騎士団だから偉そうにしてくるのかと思っていたが、予想外に下手に出てこられてびっくりしていた。隣のジャックを見るとジャックも唖然としていた。
「こちらこそよろしくお願いします。俺が教えるって何を教えたらいいのか!?」
「陣形が得意だと聞いておる。早速いかがですか?」
とジャックの返事を待たずに、半ば強引にジャックはサイコスに連れて行かれた。一人になった俺はじゃあこれでとセバスさんにお伝えし、伯爵宅を後にした。
一人で歩きながらホテル?下宿先に帰ってると、リンが後ろから
「何やってんの?」
「いや、ギルマスとジャックさんと一緒にペンタゴン様に挨拶に行ってきた帰りだけど。」
「何であんたがペンタゴン様に会うのよー?」
「うーん。3人で訓練してたから、そのついでかな?」
「ふーん。怪しいわね。まぁー、いーわ。」
(この様子だとまだ、ギルマスが旅に出ること知らないのかな?)
「そうだ!リン!ちょっと待ってて渡したいものがあるんだ。」
「ちょっと何よー?」
リンの返答を無視して自分の部屋に帰って、こないだリンと王都で観光していた時に見つけた綺麗な髪飾りをリンへ渡した。
「これ黒色の髪飾り!?」
「そう!赤いリンの髪型には黒が似合うかなーと思って。俺からの誕生日プレゼント。」
(俺の好きなバッシュも赤と黒だしな。)
するとリンはどうやって付けたらいいのか悪戦苦闘していたので俺が代わりに付けてあげた。
「どう!?似合う?」
「似合う!似合う、」
(これでユカタガあれば完璧だな!)
「でも、斗真ってやっぱり東の国の出身じゃないの?」
「東の国?」
「何!?知らないの?王都とかこの辺は西の国って呼ばれていて、砂漠を超えた向こう側にあるのが東の国なの。この髪飾りもきっと東の国のものよ。」
ちなみに西の国の西側にエルフの国、北側に獣族の国があるが、エルフの国に行くには大きな川を横切るかあの森をぬけるしかなく、獣族の国へ行くには山脈を越える必要があるんだって。
「へー。知らなかった。砂漠越えないと行けないのに交流はあるんだね。」
「交流はあるわよ。親父の元パーティーメンバーの虎太朗さんも東の国出身だし。」
(虎太朗!?急に日本人っぽい名前が。東の国には日本人の転生者がいたのかな?)
「へー。じゃあ両親がきっと東の国の出身か、知り合いがいたのかも。」
「そうね。私も母親がいたら、精霊魔法について色々聞けたりしたのかな………」
「って、しめっぽくなっちゃったね。ありがと。大事にするね。」
東の国の事を聞いたからかその日は日本の両親と一緒に事故に会った友達の事を考えながら床についた。