十四話 ジャックの帰還
「おはよー、レイラさん。訓練室空いてる?」
冒険者になってから、朝は必ずレイラさんに聞くのが日課になってきた。たとえ今日が休みの日でもだ。
「今はギルマスが訓練室使用してますねぇー。」
「そっかー。ありがと。」
レイラさんにお礼を告げて訓練室に向かうとギルマスが誰かと打ち合っていた。よく見るとジャックさんだ。
「おら、もう終わりか!?」
「はぁー、はぁー。ちょっと、休憩させてください。」
「しょーがねーなー。全く。おっ!斗真!来ると思ってたぜ!籠手の性能試したいんだろ!?付き合うぜ!」
ギルマスは大の字に寝ているジャックさんを余所に、俺を見つけると次の獲物が来たかのようにこっちに呼び寄せた。
「よくわかりましたね。さすがはギルマス。じゃあ、撃ち合わせいいですか?それとジャックさんが何故ここに?」
「今日から戻って来たんだ。こんな体勢でごめんよ。よろしく斗真。」
「じゃあ、いいか?斗真。」
「えっ、あっ、はい。よろしくお願いします……って大剣っすか?」
「そりゃ、俺は剣士だからな。いいから早く来いよ!」
ギルマスに叩っ斬られないことを祈りながら、俺はギルマスに向かって駆けていく。そのタイミングで右から左へ大剣をなぎはらってくるも、しゃがんでかわしそのままの勢いで左ボディを放つ。
(くーっ。相変わらずかてーなー!)
すぐさま左下から右上に跳ね上げてくる剣をスウェーで避けて、バックステップで一旦離れる。
(あっぶねー。髪切れたぞ。)
「一段と早くなってねーか?じゃあ次は俺からだ!」
ギルマスが左手一本で切り下ろしてくる。
(そのスピードなら避けれる!!)
避けた瞬間また攻撃にかかろうかとしたら、蹴りが腹部に入り、息が一瞬止まる。その間にもギルマスの大剣が迫って来ている、
(ヤバそう!ガードだ。ガード!)
大剣を籠手でガードするも、あっけなくガードの上から吹っ飛ばされた。
「籠手大丈夫だろ!見てみな。」
籠手を見てみると傷1つついてない。
「いい籠手だろ!大事にしろよ。」
「たしかに!ギルマス。この右手の籠手だけここにくぼみがあるのは何ですか?」
「おーそれな。それは魔道具をはめ込む窪みだ。それより、俺が大剣持っているからと言って大剣だけで攻撃するとは言ってたないだろ!色んな武器があるし、色んな流派がある。どんな攻撃をしてくるのか常に予測しながら戦うんだ!」
「予測って言われても、経験するしかないんじゃないんですか?」
俺は見たことないものを予測なんて出来ないし、かもしれない。と考えてばかりいたら攻撃できるかー!と簡単に言うギルマスに内心で悪態をついた。
「おっ!反抗期か!?経験ももちろん大事だが、相手の気の流れを見るんだ。例えばさっき、俺にボディを入れたが俺には効いちゃいねー。なぜだかわかるか!?お前がそこを殴ってくると予測していたからだ。もっと詳しく言うと、左手に気を集めているのが見えたから予測出来たんだ。」
(俺には気なんて見えねー。)
「気なんて見えねーと思っているだろ!?でも、実際そこは鍛錬しかないな。よーく注意深く俺の両手を見てみな!」
そう言われて俺はギルマスの両手を見ると左手に力は入ってはいるが、右手の方が気が集まってる感じがする。
「右手に気が集まっている感じがします。」
「……………正解だ!」
(何!?今のタメ?)
「常にその状態で戦う事を意識しろ!そしたら、どの程度の攻撃が来るのか、防御するのか避けるのかがわかるようになってくる!」
(A級への道のりは長いねー…………ただ、やりがいはある。)
「よしっ!じゃあその事を踏まえてもう一番だ!」
また、ボコボコにされてしまった。。。