十二話 トマス&ガーベラ2回目
辺境の地へと戻るとまた地獄のような依頼をこなす日々に追われていた。そしてこの日はリンと一緒にギャングウルフの討伐が終わった帰り道
「今日はありがとね。。。助かった。」
ギャングウルフの群れを迎え撃つ予定が、リンの魔法の発動が遅れ、危うくリンに襲いかかる寸前の距離まで近づいて来たのを俺が慌てて戻り倒した一幕があった。
「いや、気にしないでよ。でも何かあった?あっ!そー言えばガーベラさんがたまには会いに来なさいって言ってたの忘れてた。」
「師匠が?」
「あー!何?師匠なんだ。」
「そうなの。小さな頃から色々それこそ魔法以外も教えて貰ったわ。そうね。久しぶりに会いに行こうかしら。」
「ねぇ、依頼も終わったし、ちょっと王都に寄り道して帰らない?今日のお詫びもあるし、ご飯奢るから!ねっ!」
そんな上目遣いで可愛く言われたら、断れる男はいるのだろうか、、、
(いやー、何回見ても立派な街だなぁー。)
俺たち二人は並びながら歩き、
「ってゆーかリン。ガーベラさんがどこいるか知ってんの?」
「知ってるわよ!何回も家に行った事だってあるし。」
「でも、もう夜遅いしいきなり行ってもいいのかな?」
「少し顔見せに行くだけなんだから大丈夫よ!」
(なんか元気になってきたし、いいのかな?)
しばらく歩くと大きい住宅ばかりが並ぶエリアに入ってきた。
「たしか、この辺だった、、あー!ここよ!ここ!」
リンが呼び鈴を鳴らすと、ガーベラさんが出てきて、リンの顔を見て驚いていた。
「リン!それに斗真君も。どーしたの?」
「ちょっと近くで依頼があったから顔見せに来たの。」
すると、奥の方から金髪の優しそうな男性がやって来て、
「やぁ、リンちゃんじゃないか!?久しぶり。それと…」
「はじめまして。辺境で冒険者やってる斗真です。」
「はじめまして、トマスだ。君が斗真君か!?ガーベラから聞いてるよ。タイガさんに鍛えてもらってるんだって!?とりあえず中に入って!」
中に入ってお茶を出してもらいながらガーベラさんは
「いきなり来ても、何もないわよー!もぉー!来るなら来るで連絡ぐらい入れなさいよ!」
そう言ってはいるが、顔は嬉しそうだ。
「だって、今日斗真から顔見せにおいでって言ってたの聞いたし。。斗真が悪いのよ。」
「えーっ!まぁー伝えるの遅くなったけど………」
「じゃあ、斗真君のせいね!」
「そうそう。」
「えー!すいません。」
「「ふふっ。」」
二人は目を合わせて笑っていて、対する俺はチラッとトマスさんの方を見ると両手を上げてお手上げ状態だ。
「今日はゆっくりして、泊まって行ってちょーだい。」
~リン目線~
お風呂に入って一息ついていると師匠が入ってきた。
「今日はどーした?何かあった?」
すべて師匠にはお見通しのようだ。今日の討伐でミスしたこと、斗真が随分強くなってるのに対し自分は成長していないことなど、不安に思っていることを話した。
「へー。斗真君って強いのね。」
「そうなの。斗真が最初の討伐に一緒に行ったことあるから、そこから考えるとすごく強くなったわ。」
「ふーん。斗真君の事好きなの?」
「ちょ、ちょっとどーしてそんな話になるの?」
私は慌てて噛んでしまった。
「えっ。だって嬉しそうに話すじゃない?つまりあれね。好きな人の隣に立っていたいけど、好きな人がどんどん遠くにいっちゃって不安なのね。」
「ち、違うもん。」
私はなんだか恥ずかしくなって、湯船に口まで隠れるくらい入った。
「私は魔術師、あなたは精霊魔術師。ごめんね。精霊魔法は使い手がいなくて、あなたには魔術の基礎ぐらいしか教えられてこれなかったわ。でも、それなのに貴方はここまで成長出来てるじゃない。」
「きっとリンはこれからまだまだ伸びる可能性を秘めてるわ。自分を信じて!」
「ありがと。」