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ELEMENT2019冬号  作者: ELEMENTメンバー
テーマ創作「対決」
2/13

仲良くね(作:奈月ねこ)

「いざ!」

「いざ!」



 事の起こりは15分前。近所の友達と拓実は遊んでいた。そこへやって来たのが正実。

 二人は名前が似ていることから、周囲にからかわれていた。「どっちが本物か」と。

 またしても周囲の友達は言い始めた。


「正実だ。おい、拓実、正実だぞ」


 拓実はうんざりしていた。名前が似ているなんてよくあることだし。でも友達は楽しそうだ。それが遊びになってしまっている。


「拓実、正実と勝負だ!どっちが本物か教えてやれ!」

「そうだ。そうだ」


 どうしてそこまで話が大きくなるのかわからない。それに勝負って?? と思っていると、友達の一人が木の棒を手渡してくれた。正実にも。正実は困っているようだ。当然だろう。こっちの都合で木の棒をわたされたのだから。


「拓実!勝負だ!」


 だから、何の!?


 この声に反応したのは正実。


「これで拓実を倒せばいいわけ?」

「お前に出来るのか?拓実が勝つに決まってる!」


 そして最初に至る。


 何故だ。何故僕は正実と木の棒で向き合っているんだ。


「やあ!」


 いきなりの正実の攻撃。かわすのが精一杯。


「拓実、頑張れ!」


 だから、倒してどうなるんだ!?


「たあ!」


 またも正実の攻撃。


「拓実、何やってんだよ!」

「うるせー」


 と、そんな時、大人が一人やって来た。近所の子のお母さんだ。


「何をやってるの、あなたたち!」

「やべっ、逃げろ!」


 友達は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。そこに残されたのは、正実と拓実。


「正実ちゃん、怪我はない?」

「うん」


「拓実くん、女の子相手に木の棒を振り回してはいけないわよ」

「うん……」


 僕の声は小さい。僕も悪いと思っていたからだ。

 そう。正実は女の子。それを皆でからかっていたのだ。


「まだ幼稚園なんだから、皆で仲良くね」

「うん」


 またもやうなだれて、僕は帰ることになった。正実と一緒に。正実に謝りたいけど、なんて言ったら……。


「正実、その……」

「何?」


 正実はきついように見えるが、単に正直なだけ。だから、直球な物言いをする。


「……ごめん」


 僕の声は蚊の鳴くほど小さかった。


「別に気にしてない」


 僕の声は正実に届いていた。

 ゆっくりと二人で家へ帰ってゆく。なんだかそわそわとしてきた。


「じゃあ、こっちだから」


 正実はさっさと自分の家の方へと行ってしまった。



 翌日。


「拓実!昨日は正実と楽しそうだったな!」


 今度はそっちか。


「だったら何だよ」


 僕の口からは意外な言葉が出た。あれ?これってなんだか……。


「拓実が正実のこと好きだってよ!」


 何でそうなる!?


「正実。拓実のことどう思ってるんだよ」


 との問いに、正実は答えた。


「いいんじゃない。あんたたちみたいにうるさくないし」


 え?それって……。


「カップル誕生!」


 またもや皆がうるさい。


「「うるさいなあ」」


 正実と声が重なった。

 それからだ。正実と仲良くなったのは。





「拓実!ボケッとするな!」


バシッ


「いてっ」


 高校生になった今では、剣道の腕は正実が上。俺をしごくのが楽しいらしい。

 皆には、「男女逆転カップル」と言われている。

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