第1章 宝くじ1等の方が嬉しいんだけど②
恐る恐る、それを受けとる。
「どうすんの、これ?」
《あそこに入れるのです》
彼女が示した先には、神社のお社の前にある賽銭箱。普段は地味な色の木製の箱が、今は虹色に輝いている。
よく分からなかったが、なんかスマホゲームのガチャみたいで面白そうだ。言うなればチュートリアルの無料ガチャを6回引けるってところか。
俺は言われるがままに、賽銭箱に受け取った金貨を放り込んだ。
ついでに、がらがらと鈴を鳴らして、二礼二拍手一礼。
これまで不運な人生を送ってる俺に、一瞬だけでもいいから幸運が舞い込んできますように。
全身全霊をかけて祈り終えると、ごごごごっと低く静かな音とともに、お社の前にブラックホールのような穴が出現する。
目を丸くしながらその穴を凝視していると、奥のほうで6個の光の玉が輝くのが見えた。かと思うと、穴の奥から俺の頭の上へと飛び出してくる。
きぃぃいいぃぃぃん!!
「んなっ、なっ、なんだ!?」
全身が振動するかのような高音が響き渡る。でも、不思議なことに嫌な感じはしないし、爆音で鼓膜が破れそうな訳でもない。
なんだか心が洗われるような、そんな神聖な音だ。
やがて、白い光を放っていた6個の光の玉の全てが、白から青へ、青から銀へ、銀から金へ、そして虹色へと変化していく。
《あ、ありえないのですっ!? まさか、6個全てが七ツ星の戦霊を呼び出したとでもいうのですかっ!!》
クコが驚愕の声を挙げているが、俺はそれどころじゃない。
6個の玉が、目の前でその形を変えていく。そして2つは人型に、2つは武器に、2つは防具のようになっていった。
《せ、戦霊の降臨を確認したのです! 戦神が2体、武具の付喪神が2体、防具の付喪神が2体。陽ノ丸様に情報を送ります》
クコの声と共に、目の前に巨大な図鑑のようなものが出現する。表紙には、『神界御朱印帳』と書いてあった。
中は蛇腹折になっているようで、ぽかんとしている俺の前でばらばらと開かれると、6つの頁に朱色の印と文字が刻まれていく。
【[国士無双]宮本武蔵(★★★★★★★):近距離型:奥義・二天一刀鬼桜】
【[月影覇者]かぐや(★★★★★★★):支援型:奥義・満月鏡】
【[武具]風神雷神(★★★★★★★):近距離型:固有技・疾風迅雷】
【[武具]芭蕉扇(★★★★★★★):支援型:固有技・絶界防御】
【[防具]阿国の勝負服(★★★★★★★):万能型:固有技・柳の舞】
【[防具]優艶花魁紬(★★★★★★★):万能型:固有技・無限魅了】
一通り刻印が終わると、武具と防具は神界御朱印帳へと吸い込まれ、2人の人影が降り立った。
まず1人目は、「お前は人気アイドルグループのセンターか!?」っていう感じの、小柄で細身の美少女だ。頭の高い位置で黒髪を結わえ、腰には2本の刀を携えている。シンプルな羽織袴姿だが、胸元からやや膨らんだ更級が覗いていて、悪いことをしている気持ちになってくる。恐らく、こちらが二刀流で有名な宮本武蔵。まさか女子だとは思わなかったけど。
続いて2人目は、俺と同じくらいの背丈で、「お前は一流グラビアアイドルか!?」っていう感じの、メリハリボディもいい加減にして欲しいお姉さんだ。美しいアッシュブロンドの髪を華やかなアップにまとめていて、着物の帯にはち切れんばかりの胸が乗っている。とにかく、派手派手だ。何だか昔話のかぐや姫とはイメージが異なるが、多分、彼女がかぐやだろう。
「この男がマスター? 何だか冴えないなぁ」
「ふふ、そう言うでない、武蔵。こういう男を妾だけの色に染め上げるのが一興なのじゃ」
口々にそう言いながら、じりじりと俺ににじりよってくる。
やばい、心拍数が上がりすぎて、冗談抜きに口から心臓を吐き出しそうだ。
「こ、こ、これどうしたらいいんだよ!?」
2人の視線に耐えきれず、助けを求めるようにクコに顔を向ける。
彼女は彼女で頭を抱えたまま、《おかしいのです》とか《こんなことありえないのです》とか、何やらぶつぶつと言っていた。
ええい、いざってときに使えないやつ! このまま俺が襲われてもいいのか!?
あ、いや、ちょっと嬉しいかもしれないけど……お、おほん。
「おい、ク……」
再度呼び掛けようとそこまで言って、俺は思わず言葉を切る。
先程、彼女たちが飛び出してきたお社の前。その空間に、白い穴が出現していた。禍々しい気配に満ちたその穴は、徐々に広がっていき、その奥底で黒い玉を光らせている。




