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俺のアサシン  作者: 雪村宗
ハニームーン
27/30

消えたクリシュナと古城の謎

マーカムを旅立った二人は内陸に向かった。


古くからある王国ロワールの宿屋に二人は宿泊していた。


すっかり涼しい気候になり、夜は肌寒い。




リオ

「クリシュナーーーーーーー!」


ベッドで探偵小説を読んでいたクリシュナに風呂上がりのリオが走って飛び込んで来た。


リオ

「あははは。」



リオはしばらくコロコロ転がった後、クリシュナに抱きついて胸に顔を擦り付ける。


クリシュナは本を置いて、リオの頭を大きな手で撫でてやる。


リオ

「クリシュナのそばにいると安心するっす。」


リオは目をウルウルさせながらへにゃっと笑った。


リオ

「クリシュナとずっとこうしてくっついていられたらいいのに…。」


クリシュナは驚いて目を見開いた。


クリシュナ

「リオ………。」


クリシュナ

(う…嬉しい…。)


クリシュナはリオを強く抱きしめた。


クリシュナ

「そういえば…リオのポンくんはどうした?」


リオがハッという顔をした。


リオ

「シルダリアの宿屋に置いて来てしまったっす…。」


クリシュナ

「バタバタして出て来たもんな。」


リオ

「だけどもういらないっす。クリシュナがいてくれるから…。」


クリシュナ

(ポンくんに勝つ日が来るなんて思わなかった!)


リオ

「クリシュナ、大好きっす!」


リオがまた顔をスリスリこすりつけた。


クリシュナ

(ああ………もう幸せすぎて死にそうだ!)



クリシュナ

「リオ………。」


リオ

「………スー……スー……。」


リオは小さな寝息を立て始めた。


クリシュナ

「こら………人をその気にさせておいて寝るな。」


リオ

「スー………スー…………。」


クリシュナはリオの身体を仰向けにすると首筋に吸い付いた。


リオ

「ん〜ん〜…。」


あちこちにキスをしているとリオが手をバタバタ動かす。


リオ

「ん〜もう!眠いっ眠いっ眠いっす〜〜〜〜〜!」


クリシュナはリオの服を脱がしにかかった。


リオ

「んも〜〜〜〜〜! 人がせっかく気持ちよく寝てたっすに、何するっすか!」


リオは涙を浮かべてさらに手足をバタつかせる。


それをクリシュナががっしりと押さえつけた。


リオはとうとう泣き出してしまった。


リオ

「寝たいっす〜〜〜最高に寝たいっす〜〜〜〜うわ〜〜〜〜ん。」


クリシュナ

「頑張れ、もう一仕事。」


リオ

「クリシュナの鬼〜!悪魔〜!クリシュナなんて大嫌いっす〜!」





クリシュナ

「俺は好きだ。リオが好きだ。」


クリシュナはリオの耳元で囁いた。




リオは完全に目を開いて頰を赤らめる。




リオ

「もう…………ずるいっす………。」





………………………………………………



次の朝



リオは差し込んで来た朝日で目を覚ました。


とりあえずクリシュナに抱きつこうと手を動かして探すが、クリシュナはどこにもいない。


しょうがなく寝ぼけ眼でベッドに体を起こして辺りを見回すがやはりクリシュナの姿がどこにもない。


リオ

「クリシュナあ………。」


一応呼んでみたが返事はない。


部屋の小さなテーブルに何か置いてあるのが目に留まった。


リオはベッドから立ち上がろうとしたが腰に力が入らず床にバタンと倒れた。


リオ

「ん〜もう…クリシュナめ……。」


リオはそのままテーブルまで這いずった。


なんとかテーブルにしがみついて紙を掴み、また床に転がった。


リオ

「う〜ん、なになに…。」


*******


ピーテと古城の調査に行ってくる




*******


リオ

「ピーテ先輩きてたっすか。」


なんとかテーブルの横のソファーに座ってみると、テーブルの上に紙袋がある。


開けてみると柔らかそうな白いパンが入っている。


その横には蓋がされたコーヒーが置いてあった。まだ温かい。


リオは早速それに手をつける。


コーヒーは砂糖とミルクたっぷりだ。


リオ

「おいし……。」


リオはまた這いずってベッドに戻るとサイドボードに置きっ放しのクリシュナの探偵小説を読み出した。





…………………………




リオ

「ふう、面白かったっ!さてと、そろそろ観光にでも行こっかな。」


お昼前になってようやくリオは外に出ることにした。


まだ身体がだるかったので、アサシンのジャケットではなく普通にブラウスとショートパンツに着替えて石畳の古い町並みをゆっくり歩いた。


途中、小さな書店で観光マップを購入して噴水のベンチに座って古城の場所を確認する。


ついでに名物のジェラートを買って食べてみる。


リオ

(美味しい!クリシュナにも食べさせなきゃ!)


古城はこの王都から馬で2時間ほどの場所にあるらしい。


昔この国の不死の王、フィカス王が住んでいた城らしいが、その王がいなくなってからは観光名所になっているという。


城前から出る古城ツアーのポスターを見つけたリオはそれに参加することにした。


リオの他に5人のツアー客が集まり、まとめて馬車に乗せられた。


ツアー客はリオの白い髪と紫色の瞳を見てみんな驚いている。


5人は団体客のようで、男性二人、女性三人の若い貴族のグループらしい。


女性たちはリオを取り囲み、可愛い可愛いと髪を触りまくった。


リオはほっぺを赤くして俯いた。


女性客

「きゃああーーーーーー!可愛い!」


女性客はさらに黄色い声をあげる。





古城についたのは午後3時ごろだった。


古城は古いがきれいに手入れされてある。


三角錐のとんがった塔が三つ付いている物語に出てきそうな城だった。


背中の折れ曲がった年配の御者兼ガイドの男が旗を持って城を案内する。


リオはクリシュナとピーテの姿をキョロキョロ探しながらツアーについて行った。


フィカス王が手入れしていたという薔薇園や、フィカス王が描いた膨大な絵画、演奏会が行われていたという舞踏場、謁見が行われていただろう王座の間など、当時の内装そのままに残された部屋を見学し、最後に城の外にある食糧貯蔵庫に連れていかれた。


「うわあ!なんだかちょっと怖いわね。」


「君の後ろ!」


「きゃん!」


五人のツアー客きゃあきゃあわいわいと騒いでいると、突然入口の扉が閉まった。



「何かしら…」


「あれ、ガイドはどこへ行ったの?」



リオはちりちりと皮膚が危険を告げるのを感じ、とっさに棚の横にかくれた。


その瞬間、食糧貯蔵庫に悲鳴が響き渡った。


5人のツアー客のうちの二人の首筋に人間が噛み付いた。


二人は目を見開いて身動きしない、やがて噛みついていたやつらが離れるとぐしゃりと床に倒れた。


噛みついていた人間は若い男女で口の周りが血だらけだ。


目が猫の目のように金色に光っている。


それを見て悲鳴をあげ逃げ惑う残り3人も、ものすごいスピードでこの二人の人間に襲われてぐったりと倒れた。


そのスピードは人間を凌駕していて、リオには全く見えなかった。


リオはじっと息を潜めて耐えた。


ツアー客達は皆、床に崩れ落ちて身動き一つしない。


目は見開かれて首からは血を流している。


五人を襲った人間は口についた血液をぬぐいながら笑顔を浮かべた。


「やだ……殺しちゃったよ。」


「俺も…」


「ああ〜まいったなあ。」


「自分たちの保存食を作る練習だったのになあ。これじゃ無理だ。」


「腐る前に土に埋めなきゃ。」


その時扉が開いて、あの御者が入ってきた。


御者

「お前たち! まったく何度殺せばわかる!」


「ごめんなさ〜い。きゃはは。」



御者

「む…6人いたはずだが…。」


「え……。」





………………………………………………




その時すでにリオは貯蔵庫を脱出していた。


辺りは夕暮れになりオレンジ色に染まっている。


とりあえず、食糧貯蔵庫の隣にあるワイン貯蔵庫に逃げ込んだ。


まだここには大量のワインが置いてある。


リオ

(このままじゃ帰れない…クリシュナとピーテ先輩を探さないと。)


その時ワイン貯蔵庫の奥から声が聞こえた。


「誰だ、誰かいるのか。」



リオ

(クリシュナの声だ!)


リオはゆっくりのぞいてみると、クリシュナとピーテがワイン貯蔵庫の壁に手首を固定されて貼り付けのようになっている。


首からは二人とも血が流れている。


ピーテの首はがっくりと垂れてピクリとも動かない。


クリシュナ

「リオ……………。来たのか…。」


クリシュナはしまったという顔をしながら、小声で言った。


リオ

「クリシュナ、大丈夫?」


リオは駆け寄ってクリシュナの頰を手のひらでつつんだ。


クリシュナ

「リオ、逃げるんだ。あいつらはお前の手には追えない。」


リオ

「待って、今外すっす。」


リオはブレードでクリシュナの手錠を外そうとする。


クリシュナ

「あいつらが来る、早く逃げるんだ。そして、本部に戻れ。」


リオ

「クリシュナとピーテ先輩はどうなるの?」


クリシュナ

「…………気にするな。」


リオ

「気にするっすよ。」


クリシュナ

「リオ、リオ、俺を見ろ。」


リオは手を止めてクリシュナを見た。





クリシュナ

「お前を愛してる。だから…生きて欲しい。」


クリシュナは優しく笑った。





リオ

「あ〜………………。」


リオは少し考えた。



リオ

「クリシュナが死ぬなら、俺も死ぬっす。」




クリシュナ

「だめだ!」



クリシュナ

「リオ…頼むから、俺の言うことを聞いてくれ。」



クリシュナは弱った顔をしてリオに哀願した。



リオ

「クリシュナ、俺にも言いぶんがあるっすよ。」



リオはクリシュナの顔を両手で掴んだ。




リオ

「もともと親にも捨てられ、仕事もロクにできない俺っすよ。俺もクリシュナと一緒で何も欲しいものないし特にしたい事もないっす。だけどそんな俺をクリシュナが必要としてくれたっす。クリシュナが生きる意味をくれたっすよ。だから…俺はクリシュナがいない世の中ではもう生きてなくてイイっす。」





リオはへにゃっと笑った。




クリシュナは目と口を大きく開けてリオを見つめた。




クリシュナのまわりの世界は一瞬で景色を変えた。


キラキラと虹色に輝く光に満ちた世界だ。


そして身体が中心から温まり全てが満たされた。





その時、入口の方から声が聞こえた。



「そこにいるのかな〜、声が聞こえたよ〜。」


「出ておいで〜。」






リオ

「でも俺、まだ諦めてないっすよ。」


リオはチュッとクリシュナの唇にキスをした。



そして素早く天井の梁に登った。



口が血だらけの二人の男女がゆっくりとワイン貯蔵庫の奥に入って来た。


リオはダブルで暗殺のタイミングを計る。


「おい、保存食、誰か来ただろう?」


クリシュナ

「ああ、来たよ、ブロンドの素っ裸の女だったかな…。」


「はっ?」


その瞬間リオが飛び降りてブレードを男と女の首に突き刺した。


そして、距離をとって様子を見る。


二人の男女は倒れもしないで首をさすっている。


「ああ、いたいた。」


「何かさしたわよ。もう〜。」


クリシュナ

「リオ、逃げろ!」


リオはまた攻撃を仕掛ける。


だが、攻撃したはずの男の姿がない。


「なんだ、こいつ…。」


リオは後ろからものすごい力で手首を掴まれた。


リオ

「うう……。」


「あら、不思議な髪の色…目も!」


「それに……なんつうか……なんだこの匂い………。」


「うん……やだ……よだれ…出ちゃう…。なに、この子…。」


「同時にいくか…?サラ。」


「いいわよ、ラブ飲みね!」


二人はリオをレンガの壁に押し付けた。


クリシュナ

「くそっ!やめろ!」




男がリオの首左側に、女が右側に唸りながら噛みついた。


リオ

「ああああああああ!」


リオの悲鳴がワイン貯蔵庫に響き渡る。


クリシュナ

「やめろおおおおおおーー!」



その時、男女がパッとリオから口を離して後ずさった。


二人の口の端からはダラダラとリオの血が流れている。


「なんだ………なんかおかしい……。うう……。」


「おかしいわ………、トーマス………気分が悪い………。」


二人は唸り声をあげながら苦しみだした。



そしてばたりと床に倒れると一瞬にして細かい砂になって散らばった。


リオは首から血を流しながら、呆然としている。


リオ

「俺の……血?」


クリシュナ

「リオ、来るぞ!」


入り口からものすごい勢いで腰が折れ曲がった御者の男がリオの方に襲いかかってきた。


とっさにリオはブレードに自分の首の血を擦り付けて、そいつめがけてつきだした。


御者の男の胸にブレードが深々とつきささる。


御者の男はまたも苦しみながら砂となって崩れ落ちた。


リオ

「はあ、はあ、はあ………。」


クリシュナ

「リオ!」


リオはクリシュナに振り向いてへにゃっと笑った。


クリシュナも笑った。




その時また入り口から足音が聞こえた。


「おいおい、何事だ。」


長身のがっしりとした男だ。


短い黒髪で切れ長の目がキラリと光っている。


整っている美しい顔は青白く生気を感じさせない。


襟付きのシャツに黒いパンツとブーツ、その上から黒いマントを羽織っている。


「うわっ!お、お前!」


その男はリオを見て怯んだ。


リオはブレードを構える。


「ま、待った!何もしねえ、だから、落ち着け。な。」


リオ

「本当っすか?」


「ああ、俺はガウラ、この城の主人だ。」


リオ

「この城はもう人が住んでないって聞いたっす。」


ガウラ

「いや、この城は俺の兄貴のフィカスっていうヴァンパイアが住んでたんだ。だが、兄貴はもういない、必然的に俺の城だ。」


リオ

「ヴァンパイア って、伝説の!?」


ガウラ

「ああ、俺はヴァンパイア だ。今お前が殺したやつらもな。」


リオ

「えええ!」


ガウラ

「しかし、まだ子孫が生きてやがったのかよ、サナガ族は。」


リオ

「サナガ族?」


ガウラ

「お前の一族だよ。その髪、その目、間違いねえ。ヴァンパイアの天敵だ。」


リオ

「マジっすか!」


ガウラ

「お、おい、近づくなよ、すげえ、いい匂いしやがる。それに釣られて一滴でも吸ったら最後あの世行きだ。」


リオ

「近づいて欲しくなかったら、二人を解放するっす。」


ガウラ

「も、もちろんさ!」


ガウラはすごいスピードで動いてクリシュナとピーテの手枷を強引に壊した。


崩れ落ちるピーテをクリシュナが床の手前で支えた。


リオ

「ピーテ先輩!ピーテ先輩を助けるっすガウラ!」


ガウラ

「オッケーオッケー。」


ガウラは床に膝をついて、ピーテの首の傷をペロペロ舐めた。


そして、ポケットから緑色の小瓶を取り出すと一滴口に垂らしてやる。


すると不思議なことにピーテははっと目を開けて飛び起きた。


ピーテ

「あ、あいつらは!」


クリシュナ

「ふう……。」


リオ

「ピーテ先輩!」


ピーテ

「リオ!どうしてここに!」


ピーテは満面の笑みを浮かべた。


ガウラ

「じゃ、じゃあ、俺はこれでいいかな…もう俺の前に現れないでくれよ。サナガ族はこりごりだ。」


クリシュナ

「待て。」


ガウラ

「なんだ?」


クリシュナ

「もう一つ手を貸して欲しい。」


ガウラ

「なんだと…。」


クリシュナ

「コデイン教の聖地に乗り込んでコデイン教を壊滅させる。」


ガウラ

「はあ?なんで俺がそこまで…!」


リオがガウラの顔の前に指につけた血を差し出した。」


ガウラ

「わ、わかった!やる!か、壊滅させる!」


クリシュナ

「頼んだぞ。ヴァンパイア 。」


ガウラ

「ああ、そういえば死んだ仲間が言ってたな、お前に暗示が通じないと。なるほど、お前、エルヴィア王家の人間だろう?」


クリシュナ

「………。」


ガウラ

「エルフっぽい匂いがしやがる。はあ……何の因果かねえ。エルヴィア王家には振り回されっぱなしだ。俺の一族は。」


そう言ってガウラは霧のように姿を消した。


リオはふうっと息を吐いて床にしゃがんだ。


クリシュナ

「リオ!大丈夫か?」


リオ

「うん、大丈夫っすよ。ホッとしただけっす。」


クリシュナはスカーフをリオの出血している首に巻いてやる。


ピーテ

「帰って、ちゃんと手当したほうがいいですね。」


クリシュナ

「ああ……。」


クリシュナは一度強くリオを抱きしめた。


クリシュナ

「帰ろう。」


リオは返事をする代わりにへにゃっと笑った。


つづく

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