セカンドシーズン ハニームーン編 教会でアサシンバーガーを
「リオ、リオ、おい、起きろ、朝だぞ……」
うっすらと目を開けるとプラチナブロンドの髪が朝日にきらめいて、なんだか神々しいクリシュナの顔が目に入った。
リオ
「むにゃあ、もうちょっとだけ〜神さま……。」
リオがそういうとクリシュナが布団を引っ張ってコロコロ、どすん、コロロと床に転がされた。
リオ
「ひどいっす〜。」
クリシュナ
「いいかげん起きろ、コーヒー冷めるぞ。」
そう言ってクリシュナは部屋から出ていった。
リオ
「クリシュナめ、覚えてるっすよ。」
はたと、リオが動きを止めた。
リオ
(あれ…………?あれれ……?昨日の夜、なんかあったっす…。)
ものすごく大事な事があったような気がして、リオは昨夜のことを思い出した。
リオ
(えっと……、確かアサシン教団の本部に行って………隠し部屋に入ったら先輩方がたくさんいて………………。)
「リオが好きだ。」
クリシュナの思いつめたような顔。
リオ
(え…………そういえば………………。)
「俺を一生、アサシンとして守ってくれ!」
クリシュナの必死な顔。
リオ
(そ……そうだ………。そうだった…。)
「リオ、愛してる。」
強引にキスをしてくるクリシュナから逃げられなくて目を閉じた。
リオ
(お………思い出したっす!)
リオは赤面した。
リオ
(お………俺………誓ったっす。一生守って、愛するって……。)
リオはわめきながら頭を抱えた。
リオ
(なのに…さっきはクリシュナ、普通だったっす。どういうことっすか?)
リオははっと顔を上げた。
リオ
(夢、夢を見たんだ!でなければ、クリシュナがあんなに普通なはずない。)
リオはへにゃっと笑ってホッとした。
リオ
(な〜んだ、夢か!男同士でおかしいと思ったっすよ。)
リオはささっと着替えた。
リオ
「クリシュナおはよっす〜!」
いつものようにクリシュナの淹れたコーヒーにドボンと砂糖を入れて、ドボドボとミルクを流し込んで飲む。
クリシュナはすでにコーヒーを飲みながら何か書類に目を通している。
リオ
「はあ〜コーヒー美味しっす!」
クリシュナ
「半分は砂糖とミルクだがな。」
リオはへにゃっと笑った。
クリシュナはそれをチラと盗み見て、また書類に目を通す。
リオ
「そういえば、昨日面白い夢見たっすよ!」
クリシュナ
「ふうん。」
リオ
「クリシュナが俺に告白したっすよ!」
ぶはっーーーー!
クリシュナがコーヒーを吹き出した。
リオ
「ね、笑えるっすよね!」
クリシュナがテーブルを両手で叩いた。
皿やコップが1センチ浮いた。
クリシュナ
「夢じゃない。」
クリシュナがギロリとリオを睨みつける。
リオ
「マジスカ…………………。」
リオ
(どうしよう……。)
「頑張って愛するっす!」
昨日の自分の言葉が脳裏に浮かぶ。
リオ
(俺は、俺はどうすればいいっすか!愛するってどどどど…どうすれば。)
リオは頭をくしゃくしゃした。
リオ
「クリシュナ!俺に何かしてほしいこととか何か欲しいものとかあるっすか?」
クリシュナ
「はあ?べつに……。」
リオ
「そっすか。」
リオ
(………、なんだ、今までと変わらないっすね。)
リオはそれで悩んでいたことも忘れてプチトマトをつまんで口に入れた。
その瞬間、クリシュナがリオの唇にチュっと軽くキスをした。
リオ
「ぐっ………。」
リオはプチトマトを丸ごと飲み込んでむせた。
再びクリシュナは何事もなかったように書類を見ている。
リオも真っ赤な顔で無言で食べ続ける。
リオ
「ごちそうさま…。さて、仕事行くっすね。」
リオは皿を拭いて片付けるとギクシャクと窓に向かって歩き、何もないところでこけた。
クリシュナ
「リオ。」
リオ
「はいっす。」
リオは振り向きもしないで返事した。
クリシュナ
「ランチ、何食べたい?」
リオ
「アサシンバーガー!」
リオが目を輝かせて振り向いた。
クリシュナ
「じゃあ、リオ、買ってきて。教会の屋根で待ち合わせしよう。」
リオ
「了解!」
リオがへにゃっと笑うとクリシュナも優しく微笑んだ。
リオは赤面して窓から走って飛び出していった。
かと思うと戻ってきて言った。
「クリシュナ、トマト入れる?」
クリシュナは小さく笑った。
………………………
リオ
「ふんふんふ〜ん♩」
リオは依頼を受けるためにアサシン教会本部にやってきた。
リオ
「あ!ネマン導師だ!」
名前を叫ばれたマスターネマンはギクリとした。
ネマン導師
「何か用か?」
(まったく、こいつは苦手だ。)
リオ
「ネマン導師、ちょっと教えていただきたいっす。」
ネマン導師
「なんだ。」
リオ
「人を愛するって具体的にどうしたらいいっすか?」
ネマン導師
「………………は?」
リオ
「導師は奥様を愛してるっすよね。毎日何をしてあげてるっすか?」
ネマン導師
「お前は、そんな事を考える暇があるなら技を磨かんか!」
リオ
「わあ!す、すいません〜!」
リオは逃げようとしてこけた。
ネマン導師
「リオ!」
リオ
「ふぁい………。」
ネマン導師
「何かをしてやることが愛ではない。そもそも愛するというのは自然とそうなっているものだ。」
リオ
「自然と?」
ネマン導師
「そうじゃ、お前のは愛ではない。」
………………………………………
リオはアサシンバーガーセットをトマト入りで二つ購入して教会の屋根に座った。
膝を抱えて、難しい顔で考えている。
リオ
(あ〜もう、俺には難しいっす……。クリシュナは俺の事を愛してるって言ってたっす。自然とそうなったってことっすか。自然とそうならなかったら、永久に愛せないって事じゃないっすか。)
リオは手足を伸ばしてそっくり返った。
リオ
(それじゃ困るんすよ、約束したんすから…。)
リオは大きくため息をついた。
リオ
「もう…わけわかんないっす。」
リオの頭に大きな手が降りてきてくしゃくしゃっとかきまぜた。
クリシュナ
「なにがわからないって?」
リオ
「クリシュナ!聞いてたっすか!」
リオはばっと起き上がった。
リオ
「……………なんでもないっすよ。アサシンバーガー、食べるっすよ。」
クリシュナ
「サンキュ。」
リオ
「チーズとトマト入りにしたっす。」
二人は名物アサシンバーガーにかぶりついた。
セットにはポテトとチキンがついている。
リオ
「うわあ〜美味しっすね!」
リオはクリシュナにへにゃっと笑って目が合ったら、真っ赤になってそらした。
クリシュナ
「美味いな、お前と食べるとなんでも美味い。」
リオ
「え…………。」
リオはクリシュナの横顔を見て真っ赤になってまたそらした。
教会の屋根からは街全体が見渡せる。
美しい海岸、地平線、海に浮かぶ帆船、オレンジ色の屋根の家。
しばらく二人は黙って景色を見ながらバーガーセットを食べ続けた。
最後に一本残ったポテトをリオはクリシュナの口の前に差し出した。
クリシュナは無言でくわえた。
リオ
「クリシュナ…………俺、謝らないと…いけないことがあるっすよ。」
クリシュナ
「ん?」
リオ
「クリシュナを愛したいけど、愛せないっす。」
クリシュナ
「…………………。他に誰か愛してるのか?」
リオ
「いや、誰も愛してないっす。」
リオは眉をひそめて悲しそうな顔をした。
リオ
「ネマン導師が言ってたっすよ。愛するっていうのは自然にそうなるんだって……。俺はなってないっすよ。よくわかんないっすよ。」
クリシュナはリオの頰に優しく触れた。
クリシュナ
「キモいか?」
リオ
「え…………?別にキモくないっす。っていうかちょっと恥ずかしっすよ。」
クリシュナ
「なら見込みがある、だろ?これから愛するかもしれない。」
リオ
「そうっすかねえ………。そうだといいんすけど。」
リオは頬を赤らめている。
クリシュナ
「………………。」
リオ
「なんすか……………。ま、またキ…………キスする気っすか!俺がクリシュナの事好きになるまでさせないっすよ!」
クリシュナ
「…………………。」
リオ
「な………なんか言ってくれっす!」
リオはクリシュナの手を振り払った。
リオ
「もう、わけわかんないっすよ!」
リオはクリシュナから逃げ出して教会の屋根を走り出した。
リオ
「!」
クリシュナがリオにタックルして宙に浮いた。
リオの唇にクリシュナの唇が重なって、そのまま落下した。
リオ
(……………死ぬっす!)
ボスっと音がして、荷車に大量に積まれた藁の上に二人は包まれた。
クリシュナはリオにニヤリと笑ってみせた。
クリシュナ
「俺を甘く見るな。いつだってお前のキスくらい奪ってやる。」
リオの心臓がばくばくと音を立てる。
クリシュナ
「さ〜て、仕事に戻るかな。」
リオは真っ赤な顔でクリシュナをにらんでいる。
クリシュナ
「あ、そうだ、今夜は俺がカレーでも作るとするかな。」
リオの顔がぱっと輝いた。
リオ
「やった!カレーっすか!甘口で頼むっす!」
へにゃっへにゃっと笑っている。
クリシュナは口に手を当てて笑いながら走り出した。
つづく




