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004[ちしゃの森での出来事1]

「ムー君」とは、何処から出て来た名称だろうか?

僕が一人、ミツキさんに運ばれながら、色々な意味で驚いている中、

『何時も、こんななのよ』と護姉さんが楽しげに笑っているので、

僕は、気になった事を訊ねる事も、変に抵抗する事もできないくて、

本当に困ってしまう。


で、辿り着いたカウンター席では、ミツキさんにされるがまま、

背の高い椅子に座らされ、そのカウンター越しに、

これまた、護姉さんの高校の同級生で、バイト仲間の店員さん。

日本人形の様な髪型で、眠そうな表情のヤマネさんを紹介され、

『私の弟になりそうでならなかったみたいな「迎君」だよ!

よろしくね!』と、護姉さんによって、僕がヤマネさんに紹介された。


ヤマネさんは細い目で僕を見て、軽く会釈し、護姉さんに対して、

『御注文は?』と言う。すると、護姉さんは、

『社割でムー君にランチセット&私にケーキセットよろっ!』と、

言った後、僕に『奢ったげるから、遠慮なく食べなね!』と言った。


こうして、有りがたい事に僕は、

その場の勢いで、護姉さんに昼ゴハンを御馳走して貰う事になり、

序に、「ムー君」の出所が何となく、発覚する。

因みに、食事をする店に入るのも、そこで食事をするのも、

護姉さんと一緒に食事を取るのも、

護姉さんに「ムー君」って呼ばれたのも初めての経験です。

「もう、どう言う態度を取って良いのか見当もつきません!」と、

僕はお手上げ状態。


更に、ヤマネさんがオーダーを通し、暫くして、コック服の男の人が、

カウンターの奥のオープンキッチンから持って来たのは…、

大皿プレートに、3個の器が配置されたランチのメニュー……。

それをヤマネさんが受け取り、僕の前に配膳するのを見ながら、

僕はどうしようもないくらいに、ドキドキしていた。


一つ目の器には・・・

千切ったチシャ菜と、塩もみ千切り大根&人参入りの、

パリパリシーチキンサラダの玉ねぎドレッシング添え。

二つ目の器には・・・

チシャ菜と、紫蘇の千切りに、明太子を塗して焼いたパスタ。

3つ目の器はマグカップで・・・

みじん切り人参&その葉とチシャ菜入りコンソメスープ。

大皿プレートの空きスペースには・・・

チシャ菜を敷いた上に・・・

一口カツレツ3枚。一房のチシャ菜と、スライス玉葱とケッパー、

スモークサーモンを巻いた生春巻き1本を半分に切ったのが2つ。

別で、小さな籐の籠に・・・焼き立てのテーブルロールが2個。

と、言うボリューム満点で、

やたらと「チシャ菜」と言う名前の「サラダ菜」押しが強い、

料金的に高そうなヤツが出て来てしまったのだ。


これまた初体験ですよ!僕、ヤバイ!マジで、緊張するよ!

食べ方が分らないぞ!と、手を出せないでいたら……。

ヤマネさんが、態々カウンターから出て来て、僕の耳元で、

『食べ方は気にしないで…、全種類、味を見て、感想が言えたら無料、

味が落ちない内に美味しく食べてね……。』と箸を渡してくれる。

どうやら僕は、ヤマネさんに、

緊張し、色々な理由から食べるのを躊躇している気持ちを読み取られ、

「ホークやナイフが使えない」のだとも、判断されたらしい。

間違っては、いないかもしれない。僕的に食事マナーは意味不明だし、

ホークとナイフを使う食事なんてした事が無い。


でも、「無料」と耳にしてしまって僕は・・・

『美味しいです!』としか言えないのに、それだけを単調に伝え続け、

ほぼ、手掴みで、がっつり残さず食べてしまいました……。

知らないけど、絶対、マナーとか違反しまくり…だよね?多分、

あぁ~!何か…ごめんなさい……。


そんな僕を横目に護姉さんは、生クリームの上、

黄色いマロンクリームとチョコの斜線模様の中央を陣取る渋皮煮。

その一粒の栗を食べた後、

柔らかそうな茶色いスポンジに挟まれた切り口に、

生クリームと甘露煮の姿が見える。その残りのケーキを前にして、

その後は手を出さず。

懐中時計をポケットから出し、その懐中時計の裏蓋をカチリと外して、

鍵の様なモノを懐中時計に突き立てて、螺旋を巻き、裏蓋を閉めて、

次に表の蓋を開け、時計の針を合わせていた。


護姉さんは、僕がランチメニューを食べ終え、

護姉さんを見ていたのに気が付くと、

首から下がった懐中時計の螺旋を巻いた鍵の様なモノを服の中、

胸元へと、ストンと落とし、

パチンッと懐中時計の蓋を閉め、ポケットに入れ、

にっこり微笑んでから、ケーキの角を一口分、ホークで掬い上げて、

『迎君、はい!あぁ~んして……。』と僕の口元に差し出して来る。


僕は護姉さんの行動にびっくりし、

護姉さんが、そのホークで渋皮煮の栗を食べていた事を思い出し、

護姉さんの綺麗な色の柔らかそうな唇を見ながら、

「関節キス」と言う単語をも一緒に思い出してしまって、赤面する。


そんな僕の気も知らないで、護姉さんはクスクス笑う。

『恥ずかしがらずに食べなよ!自分も食べたくて見てたんでしょ?

羨ましかったんでしょ?ケーキ!』と言って、身を横に少し乗り出し、

『さぁ~どうぞ!』と言ってくれた。


僕は、その護姉さんの勘違いを否定したくなくて、

差し出されたホークにゆっくりと口を近付けて行く、その途中…、

『あ、エロガキ発見!』と、誰かが叫ぶ……。

僕は、その言葉に過剰反応してしまい、

護姉さんの居る隣に乗り出し掛けた体を勢い良く戻し過ぎてしまって、

カウンターに合わせて作られた背が高く、細長い回転椅子と一緒に、

グラリと斜め後ろに向かって倒れて行く。


その時、僕は・・・

後ろに向かって倒れて行く視界の端に、

今では、朽ち掛けた裏野ドリームランドの看板の中にだけ存在する。

裏野ドリームランドのオリジナルキャラクター「裏野ウサギさん」。

その、不気味に笑う。ピンクのウサギのきぐるみを見た気がする。

その後、店内に『キャ~!』と言う風な、女の人の物であろう悲鳴と、

ガタァ~ンと、大く派手な音が鳴り響いた。


駆け寄る足音。『ムー君』と呼び、叫ぶ様なミツキさんの声と、

焦った様子の護姉さんの声が、遠くから聞こえて来る。


僕はどうしてしまったのだろうか?

僕は背の高い椅子から後ろ向きに倒れた筈なのに、

何処も痛くない気がする。でも、僕の視界は暗くて白かった。

もしかしたら、明るい中で、目を閉じた状態なのかもしれない。

と、しても…、それなら何故?僕は目を開けないのだろうか?

僕は目を開けているつもりなのに……。

と、思っていたら、後頭部と背中に激しい痛みを感じ、

さっきのが夢だったかの如く、痛みで目が覚め、現実が戻ってきた。

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