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ドラゴンの指輪  作者: ゆきめ
第一幕 幕開け
4/11

不思議な指輪

 部屋の中が嫌な雰囲気になりかけたとき、窓の方からにゃーおと鳴き声が聞こえてきた。振り向くとそこに2匹の猫が座っていた。


 白とグレーがかった綺麗な毛並みの猫サラと、真っ黒で艶がある毛並みをしている猫ショコラが縦に並んで座っていた。

 つばきはすぐに窓に近寄り、


 「2匹ともどこに行ってたんですの?」


 問いかけながら窓を開ける。


 「よくもまあ、こんな2階をひょいひょいと登ってくるよね、あんたたち」


 さくらは中に入ってくる猫たちに言う。


 つばきとさくらの部屋は2階にある。猫たちは玄関からはあまり入らず、木や屋根を登って2階にあるつばきの部屋に行く。

 

当初サラだけがこの方法で部屋に入っていたのだが、ショコラも真似をしてこの方法で部屋に入ろうとした。けれど、ある程度の木にしか登れなかったショコラ。サラの指導(?)のもと、今では楽々に登れるようになったが、当時は大変だった。窓の外でサラが怒鳴るような声をあげたり、ドスンというような落下した音がしたり。


 毎度ショコラは土埃にまみれ、擦り傷などの怪我をしてきた。つばきもさくらも怒ったのだが、それでもショコラはやめず、最後には呆れながらも応援していた。とうとう部屋に到着したときは、2人ですごく喜んでしまったほどだ。その時のサラは窓の外で得意げな顔をしていた。


 そんなことをふと思い出しながらさくらはサラの頭を撫でる。


 「あら?何ですの、それ」


 サラの後から数秒おいてショコラが入ってきた。しかしその口には何か箱らしきものを咥えている。


 「ちょっとショコラ!そんなものどこから持ってきたんですの!?」


 ショコラは床にちょこんと座りじっとつばきを見上げている。これを取ってと言わんばかりの視線だ。


 「まあまあ。ショコラ、それちょーだい」


 さくらが声をかけ、手を差し出す。

 ショコラはさくらのもとに行き、差し出された手に咥えていた箱を落とす。よくよく見るとそれは指輪が入っているようなケースだった。


 グレー色のとてもシンプルなケース。


 「誰かの落し物?」

 「この屋敷の中の誰かだとしたら随分と質素ですわね」

 「メイドも高級なの好きだもんね」


 ケースをくるくる回し、不審な点がないか確認する。傷も汚れもない、綺麗なケース。


 「開けてみようか」

 「ええ」


 猫たちも傍によってくる。


 ケースに視線が集まる。



 さくらがケースを開けた。すると中には、目を奪われるような指輪があった。


 それは、結婚指輪や婚約指輪などではない。


 この指輪を見た瞬間、目を惹かれるのはドラゴンだろう。そして一度見たら忘れられないであろう、ワインレッドに近い色をした宝石。


 指輪は見たこともないデザインだった。


 左を向いて、翼を広げているドラゴン。尻尾を丸め、体全体で宝石を囲むようにしている。まるでそれは、宝石を守っているような感じだ。


 宝石はワインレッドに近い色をしているが、少し違う。宝石としては、見たことない色である。


 そしてリングのふちの部分は独創的な模様をしている。何かの紋章のような模様だ。

 

 一目見ただけで目を奪われてしまう、魅了されてしまう、そんな指輪だ。


 「「・・・」」


 案の定、目を奪われていた2人。それほど美しく、神々しい。


 「よく分かんないけど、なんかすごい、ね」

 「ええ。一応指輪も確認してみましょう」

 「そうだね」


 つばきが手を伸ばし、指輪を取る。



 その瞬間、指輪が光りだした。


 「え、なに!?」

 「ななな、なんですの!?」


 指輪が光だしたと思った次の瞬間、目を開けてられないほどの眩い光が彼女たちを包み込む。


 「眩しい・・・!」

 「きゃあ!!」


 悲鳴を上げるとともに、徐々に意識が遠ざかっていく。




-------

----




 どれくらいの時間が経っただろう。指輪が光ったあの時から。


 「んー・・・?」


 先に意識を戻したのはさくら。体を起こし、正面を向くと、そこにあったのは、木。


 「・・・え?」


 すぐに周りを見渡す。映る景色は全て木。ここは森の中だった。


 「・・・嘘でしょ」


 呆然としていると隣でうめき声がした。隣を見るとつばきがうつ伏せに倒れていた。

 すぐに体を揺すり、声をかける。


 「つばき!起きてつばき!!」


 強めに体を揺すり、大きな声で呼ぶ。すると、唸りながらも目を開ける。


 「さくら・・・?」

 「良かった。無事だね?」


 体を起こす。状況が飲み込めていないようだ。


 つばきの近くに2匹の猫たちが倒れていた。どうやら2匹は眠っているだけのようだ。さくらは安堵のため息を吐く。2人は顔を見合わせ周りを見渡す。


 「此処は・・・どこですの?」

 「分かんない。でも・・・相当やばいかもね、あたし達」


 困惑のあまり、その場から動けない。



 辺りは薄暗く、不気味な雰囲気を醸し出している。


 灯りもなく、鬱蒼とした森が2人と2匹を見下ろしている。



 ザーーー



 風が吹き、木々が揺れる。


 それはまるで、木々たちが彼女たちを嘲笑っているようだった。


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