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学園×ミヤ  作者: 森本枦絵
生徒会
7/8

逆狩 鏡夜

「…えっ!…先輩っ!?大丈夫ですか!?」

 私は『彼』が私を庇って殴られたことをようやく理解し、その場にしゃがみ込んだ


 途端に止まっていた聴覚がふと戻ったかのように、私の耳は周囲の音を感知する

 生徒たちの大声と悲鳴。こちらに駆け寄ってくる足音や走り回る音。そして他の教師たちの慌てた声。喧騒が私の耳に響いてきた

 当の戸部先生を見ると、先生は茫然とした様子で佇んでおり、他の教師たちに半ば引きずられるように体育館を出て行った。それに気付いた何人かの生徒たちはばたばたと体育館の出口へと走っていく。先生を追いかけていったらしい

 一方で、館内に取り残された私たちは『彼』と殴られた男子生徒の応急処置を始めていた

 『彼』は額からの出血量がかなり多く、鮮血が制服や床に滴っていく

 それを見た何人かの女子生徒が悲鳴を上げ更にパニックが広がっていく

 少し離れたところで倒れ込んでいたもう一人の男子生徒は気を失ってるらしく、介抱している生徒たちが必死に男子生徒の名前を呼び掛けていた

 「救急車呼んだぞ!」

 「おい誰か保健室から包帯とってこい!」

 「いや保健室のせんせー呼んだ方が早いだろ!」

 「何でもいいから早くしろよ!」

 集まってきた周りの生徒たちが口々に叫び始めた

 私も他の生徒から受け取ったガーゼを『彼』の額の傷に当てようとしたその時

 「…君、令柊さん…だったね…」

 朧気に『彼』は私の名前を呼んだ

 突然のことに、私は『彼』に伸ばしかけてた手を止める。

 周りの生徒たちも『彼』が口を開いたことに気付き、動きを止めた

 「……そう、ですが」

 ゆっくりと頷いた私を見て、『彼』は僅かに微笑み口を開いた――


 …それはあまりにも微かな囁き。私は『彼』が何を言ったのか聞き取れなかった。

 …声が途切れる寸前、最後の「裏で待ってる」以外は



 『彼』と男子生徒は誰かが呼んできたのであろう、養護教諭と共に救急車に乗せられ、搬送されていった

 追っかけの女の子らしき子たちが一緒に乗りたそうにしていたが、養護教諭や『彼』のそばにいた男子生徒たちに窘められていた

 そのうち諦めたようにゆっくりと館内を後にし、自分たちの教室へ向かって行った

 

 館内に取り残され、ぼんやりと救急隊員たちを見送った私も彼女たちのように自分たちの教室に戻るべく、立ち上がった


 「ほかの奴らには聞かれてなかったようだな」

 突然真後ろから低く囁くように声をかけられた

 茫然と立ち尽くしていた私はハッとして背後を振り向く

 とても背の高い男子生徒が立っていた

 エンブレムの色が私たちと違う

 恐らく彼も先輩なのだろう

 「…あなたは」

 「あぁ、驚かせてしまったのなら悪い。俺は3年の新須幹生(ニイスカンナ)。運ばれてったアイツの友人だ。」

 こちらを一瞥する様子もなく、新須は無表情で自己紹介をした

 「新須さんに、逆狩鏡夜、さん…」

 無意識に新須は苗字、『彼』はフルネームで呼んだ私を気にすることも無く、新須は一つ頷く

 「話がある。放課後、鏡夜と校門裏で待っている」

 そう言って彼は踵を返して去っていった

 『彼』と新須が何故私と話をしたいのか、この時の私は全く分かっていなかった



 結局あの騒動の後は生徒も教職員も体育館に残ることはなく、入学式はそのままお開き状態となった



 私が教室に戻ると登校前よりもクラスメイトの人数は少し減っていた。どうやらあのまま帰宅した子たちがいるらしい

 それでも担任の常原先生は何事もなかったかのようにホームルームを始め、明日以降の授業についての伝達事項を淡々と話していた

 「…では、明日は通常の登校時間となりますのでくれぐれも遅刻しないように。それではホームルームを終わります」

 そう言い残し、常原先生はさっさと教室を出て行ってしまった

 「…」

 半ばあの騒動で放心状態だった私たちは顔を見合わせつつ、ぞろぞろと教室を出ることにした

 

 「……みやちゃん…大丈夫、なの」

 玄関で靴を履き替え、そのまま校門前まで歩いていた私は、隣で一言も発さなかったリオちゃんにぽつりと尋ねられ、彼女の方を向いた

 さっきの出来事のことなのだろう、私はゆっくりと無言で頷いた

 「…私は大丈夫。そうだリオちゃん、連絡先交換しよう」

 私は曇らせかけた表情を明るく変えてリオちゃんに提案する

 少し納得がいってなかった様子だったけど、リオちゃんは「わかった」と答えてくれた

 最近私たちの世代で流行しているチャット系メッセージアプリを起動させ、リオちゃんと無事連絡先交換をする

 彼女の使っているアイコンが白と茶色の猫2匹が並んでいる1枚でとても可愛い

 「じゃあまた明日。ごめんね、今から用事あって」

 「…いいよ。またね、みやちゃん」

 「ありがと。あとでメッセージ入れとくね」

 手を振りつつ、ゆらゆらとした足取りでみやちゃんは校門前に設置されている信号機まで歩いて行った

 私も自宅に帰る――ふりをして学園敷地の柵伝いに歩き校門裏を目指した



 正確な時間なんて聞いていない

 ただ“放課後待っている”と言われただけ

 ホームルームなんて終わる時間がクラスや学年でバラバラなんだし都合よく会えるとは到底思えない

 ―なのに


 『やあ、来てくれてありがとう』


 誰もが認める爽やかな笑顔と共に『彼』こと、逆狩鏡夜は校門裏に腰掛けて脚を組んでいた

ご無沙汰しております。

誤字、脱字等御座いましたらご連絡ください。


少しずつ書きたい部分が出てきました。のんびりとお待ちいただけると幸いです。

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