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思いついてしまったラクガキ

 ジェスは激怒した。必ず、かの悪逆非道の作者を除かなければならぬと決意した。ジェスには物語がわからぬ。ジェスは、村の農民である。畑を耕し、遊んで暮らしてきた。両親はなく。妻もいない。妹がいるだけである。妹は兄が好きで、兄もまた妹を愛していた。

 ジェスは自分の現状があまりにもひどすぎると思った。なぜこんなにも鬱屈とした生活をしているのか、村のすべてがやけに重苦しい。神に尋ねた、返事はなかった。しょうがないから自分で答えた。

 「作者は人をいじめます」

 「なぜいじめるのだ」

 「小説を書くためだというのですが、だれもそんな小説を知りません」

 俺の苦労は作者のせい、はっきりと腑に落ちた。

 ジェスは暴れだした、作者が慌てて現れた。

 「どうしたにゃーん、落ち着くにゃーん」

 ふざけた男だ、ジェスはますます怒った。

 「皆を作者から救うのだ」

 なんだかジェスは立派になった気がした。

 なんやかんやあって、ジェスは処刑されることになった、作者の不思議パワアの前に動くことすらできなかった。

 ジェスは泣いて謝った、処刑されるのはごめんだ、妹の結婚をでっちあげて猶予をもらった。

 代わりにセッダを置いて行った。ジェスは言った。

 「まぁ諦めろ、俺は妹の結婚式にでなければならん、それまでの身代わりだ」

 「おまえに妹はいない、これはなんだ、なんで俺がこんな目に合うんだ」

 セッダは顔を涙でボロボロにしながら、なにかまくし立てていたが、よくわからなかった。

 ジェスは走り出した。友の命を救うために、なんだか恰好いいと思った。

 村への帰り道はいろいろあった。

 逃れてきた姫を助けたり、イチャイチャしたり、魔物に襲われる村を救ったりした。

 イチャイチャしながら悪の宰相を追い払い、姫が国に戻るのを手伝ったりした。

 魔物も悪の宰相も魔王の手先だったことがわかり、イチャイチャしながら魔王を倒し王国を救った。

 あるときイチャイチャしていたら、妹のことを思い出した。ジェスは村へ走った。

 ジェスが村に着くと妹はいなかった。そういえば脳内妹だった。相変わらず兄が好きで、かわいい妹とイチャイチャした。楽しかった。

 セッダが処刑されるらしい、哀れなやつだ、顔を見に行こう。

 処刑場となっている広場にジェスが現れるとセッダは泣いて喜んだ。これで助かると、ジェスが希望の光に思えた。すべてジェスのせいなのだが、セッダは絶望のあまりうまく判断ができなくなっていた。

 ジェスは作者に言った。

 「帰ってきたぞ、友を放せ」

 「遅すぎるにゃーん、それでもおまえは主人公かにゃーん」

 イカれた作者は呆れていた、むっとなったジェスはこれまであったことを話した。

 異世界に転生し世界を救うために勇者となった話や神としての役割を与えられ世界を守った話をした。姫とのイチャイチャ話がもっとも長かった。

 広場にたくさんの人が入ってくる。

 傾城の美王女アンジェリーヌ、魔王の右腕アジヴボロス、漂流の吟遊詩人スルバトゥール、護国の守人アルベルト、泉の女神ラーネイ――そうそうたる顔ぶれである。

 「ジェス様のために参りました、どうかジェス様の願いを叶えてください」

 「俺たちはジェスに救われた、今度は俺たちがジェスを助ける番だ」

 なんやかんや言ってるがジェスのために来たらしい。

 作者は憤慨した。なぜジェスは作者のいないところで面白そうなことをやっているんだ。文章に興せないではないか。怒りと悔しさのあまり血の涙を流して倒れた。

 悪は倒された!

 人々は歓喜の声をあげる、広場が祝福の祈りで満たされていく、一人の男の名前が声高に響き渡る。

 ジェス!ジェス!勇者ジェスがまた世界を救った!バンザイ!

 セッダはなんやかんや処刑された。

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