深水家は濃かった
迎えた翌日。掃除や荷物整理が終わり、ようやく俺は自分の部屋を入手できた。
「――」
で、思ったことと言えば。何でこの部屋を物置にしてしまったのだろうという激しい疑問だった。
先日まで埃だらけだったこの部屋は、隅々まで掃除した今になってある種のムーディースタイルの部屋に化けているのだ。
濃い茶色の家具とフローリング床が白い壁にマッチしており、猶の事明るさ調整できる蛍光灯の色がそれらを引き立たせている。
これなら1人で落ち着いて読書をするのも良いし、異性と2人になればきっと良い雰囲気になるだろう。
――まあ、そんな異性が居るはずもないんだが。一瞬だけ優奈の顔が浮かんだが、直ぐに振り払う。
「裕也く――おぉ、すごい部屋だね!」
音もなく突然入ってくるなり、自分も知らなかったかのように優奈は感嘆の声を上げた。
まあ、家具の新調があったからかもしれないな。数分前に掃除が終わった折、祐希と一緒に家具をここまで運んできたわけだし。
「いいなぁ、この部屋……きっとここで好きな人と、あんなことやこんなことしちゃうんだろうなぁ……きゃっ」
「……」
どうしよう。俺はどうすればいい。この妄想に耽っている女を前に、俺はどうすればいいんだ。
立ち去るか? いやそれは可哀想だ。ならば話しかけるか? いやどんな話を振ればいいんだっての。
俺が戸惑っている間も尚、優奈は赤らめた頬に両手を添えて身体をくねらせている。
「――オイ」
結局、俺は優奈の肩を叩いていた。
「――ハッ! 私ってば何を……!?」
「妄想もほどほどにな」
「も、妄想じゃないもん! いつか現実にしてやるんだから!」
「あぁ、そうかい。頑張れよ」
――深水家、キャラ濃すぎんだろ。