夢みる未来
さて、おじさんが訪ねてきてから結局数時間が経過した。ここで俺には懸念すべき事項が1つ浮上。何とかして優奈を退かしたいのである。
というのも、さっきから俺の足が痺れで悲鳴を上げており、寝ている優奈も優奈で恐ろしく寝相が悪い。抱きついたかと思えば、俺の股間に顔をうずめて涎を垂らしているので、これではまるで俺が漏らしたみたいになっているので早いところ何とかしたい。
でもってこの【放送禁止用語】みたいな恰好をされては俺のナニが反応してしまう。押さえつけるにも限界だ。しかも寝相の悪さに重なって、まあ動くこと動くこと。しかも寝ながら俺のナニに頬ずりとはこれ如何に。
起きたときの反応が逆に見て見たい気もするが、それでは俺が主に優奈という社会から抹殺されてしまうので一応回避しておくべきかと思う。
やがて、そんな俺が取った行動は――よくよく考えてみれば最善且つ直ぐ近くにあった手とも言えること。単純に優奈の頭を持ち上げ、俺の膝を抜き、適当に引っ掴んだクッションとすり替えただけ。
「……」
一連の動作を終えても尚、まだコイツは寝てやがる。とりあえず俺はズボンを変えて、気晴らしに外に出てみた。
「ん~っ」
うんと伸びをして、凝り固まった身体を解す――――
――――ここから2年が経過するまで、俺の周りでは"日常"が続いた。
相変わらずの優奈と"家族"や、騒がしい学校の"友達"――俺が心の何処かで望んでいた、何気ないやり取りの数々。
全部全部、いつかの俺が夢見ていた未来と同じ。とても楽しい日々だった。
「――いつまでも続いたら良いな」
「何が?」
時は卒業式の日。既にがら空きとなった教室には、日の光や春風と共に桜の花弁が舞って入ってくる。
優奈と2人、俺はこの教室で物思いに耽っていた。
「日常だよ。高校生としての生活は今日で終わり。でも、日常という掛け替えの無い幸せはいつまでも続いて欲しいって思う」
「……続くよ。ううん、続けさせるの。折角、傷の癒えた貴方だもん。私が支えてあげる」
「ははっ、まるで結婚してくれみたいな言い方だな」
「そうだよ」
「……?」
ふと、優奈は俺に唇を重ねた。
突然の事だったが――俺は驚くことも無ければ抵抗もしない。
「私、ちゃんと見てたから。貴方が一生懸命、人間関係を築いていったこと。誰かが死んじゃったり、過去を知られて嫌われたりしないかっていう恐怖に、ちゃんと打ち勝ったこと。そんな貴方はとても素敵だった。見てて強く惹かれた」
「優奈……」
「――裕也君。貴方の夢みる未来は何ですか?」
「……」
答えるまでも無いと思ったが、ちゃんと言葉にしておこう。
上目遣いの優奈を、真っ直ぐに見て。
「――いつまでも君が隣にいる未来」
その後の事や、俺とみんなが歩んだ2年間の軌跡。
これはまた、別の機会に話そうと思う。とても長くなるから。
伏線まくだけまいて、中途半端に完結と思った方も多いでしょう。ですがこれは意図的なものです。
主人公達の日常生活は、私としては夢みる未来をシリーズ化した上で、各エピソードごとに番外編のような形で綴っていく方針です。ですが次回作の投稿、風純蓮さんの都合もあるので作るだけ作ってそう簡単には更新できそうにないっぽいです(汗)
――水恋歌より