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夢みる未来  作者: 風純蓮&水恋歌
夢みる未来~本編~
2/22

やってきた木立川町

 電車に乗って、飛行機に乗って、また電車に乗って、バスに乗って、歩いて――と。

 俺こと"成瀬裕也なるせゆうや"はただ独り、半日と数時間にも及ぶ長旅を経て見知らぬ辺境へ来ていた。

 ここは北海道の中心――旭川だか上川だか分からんが、そこいらから少し東へ行った辺りにある、地図にすら載らない町"木立川"である。

 何で俺がここまで来たかというと、ここで新しい生活が"また"始まるからだ。

「んー……」

 9月とはいえ、残暑がないために北海道はもう寒い。ひんやりとした空気を目一杯吸い込み、長旅で溜まった心の淀みを吐き出す。

 時計を見て今気付いたのだが、高が長旅に15時間もかけてしまっらしい。朝の6時に出発したのに、もう夜の9時である。

 引越し屋に荷物全部預けておいてよかったと思う。何か1つでも大荷物があれば、きっと俺はどこかで力尽きていたに違いない。

「――」

 さて、俺は待ち合わせの約束を交わしてしている。

 俺の身柄を引き取ると言ってくれた親戚のおじさん"深水康弘ふかみやすひろ"さんだ。

 おじさん曰く、どうやら大きな木の下で待っているらしいが――

「――どこだ」

 普段言わない独り言を思わず呟いてしまう。

 というのも、ここは高原の一角だ。北海道の高原といえば街灯がなく、ましてや夜なので真っ暗だ。木なんて見つかるはずがない。

 ――と、俺はここで便利アイテムを鞄から取り出す。どこかのホームセンターで買った、数十メートル先まで照らせる懐中電灯だ。

 どうやらキセノンという特殊な素材を使っているらしいが――とりあえず高かったのは覚えている。

『おぉ』

 心の中で感動する。まるで車のヘッドライトを片手に持っているかのようだ。

 これなら探せるだろうと確信して、四方八方を隈なく照らしていく――と、何やら人影が照らし出された。

 近くには木の幹。間違いなくおじさんである。俺は早速駆けていった。

「おじさん」

「おぉ、来たか。写真より男前だな」

「ははっ」

 ――空笑い。

「改めて、深水康弘だ。成瀬裕也でいいか?」

「えぇ。初めまして」

 握手を交わす。農作業でもやっているのか、握った手は力強く逞しい。

 でもって、顔も何となく厳つい。こう言っては何だが、円熟味の増したデキるおじさんって感じだ。

「そこのトラックに乗りな。すぐ家まで連れてってやろう」

「ありがとうございます」

 先程は分からなかったが、確かに軽トラが停まっている。

 確か、海外では軽トラが普及していないんだっけか。どうでもいいことだが。


 軽トラの乗り心地は良くも悪くも無い。荷台が空っぽなために少々ガタつくが、まあこんなもんか、という感じだ。

 とりあえず普通の乗用車では味わえない、そんな変わった乗り心地だ。地味に視点も高いし、何故か何となく疾走感がある――

「ガハハ、誰もいない道というのはいいもんだなぁ!」

 違った。疾走感がどうのではなくて、実際に疾走していた。

 どうやら豪快なおじさんのようだ。何も通っていないのを良いことに、がらんどうの道を60キロ近くで走っている。

 しかも北海道の田舎道は高低差やカーブが激しいため、よりスリリングになるのは必至だ。

 っつーか軽トラ速いな。こんな速度出せたのか。

「おっと、怖いか?」

「大丈夫ですよ」

「そうかそうか! じゃあもっと飛ばすか!」

「いや飛ばせとは言ってな――」

 遅かった。アクセルを踏み込む事で急激にGがかかり、疲れきった俺の身体はそれに抗えず、思わず後頭部をシートに強打してしまう。

「ワハハハッ!」

「――」

 初日から色々と消耗しつつ、こうして俺は深水家までやってきた。

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