レースゲーム
「――かーっ! また負けた! なんでグリップ効かねぇんだ!」
「何でタイヤがレーシング用なんだ立花。ウェットコンディションで溝無しとかそりゃ滑るわ」
「くそ、ここは過給器とエンジンバランスチューンを……」
「話を聞け。ってかそれ暴れ馬になるぞ。峠で足回り意識しないとかありえねぇっつーの」
とあるレーシングゲームで盛り上がっていると、いつの間にか立花の知り合いによるギャラリーも増えてきた。
優奈や京橋たちは他に女子を数名引き連れ、プリクラを撮りに行っている。即ち今ここには華が無く、男ばかりの無法地帯となっているのだ。
「っつーか立花、運転下手だよなー」
「な。コーナー手前でブレーキしないから壁にぶつかるんだよ」
「おめーら、言いたい放題言いやがって!」
でもってギャラリーもギャラリーで、揃って立花を罵倒している。
「見てろ! ドラッグレースなら絶対負けねぇからな!」
「お? 勝負するか? ギアチェンジもロクに出来ねぇ奴が?」
「ごめんなさい」
――俺もその一員だ。
「こんなんじゃ車の免許、取れそうにねぇなー……」
「所詮ゲームだ、あんまり深く考えるな」
「いやだって、リアルを極限まで追求ってのがこのゲームの売りだろ!? これで運転下手とか、俺どうかしてるぜ!」
「それグラフィックの話じゃねぇの? 操作性までリアル追求してたら、ドリフトで減速しない車とかありえねぇから」
「いや減速するだろー。80キロくらいから一瞬で0キロに」
「それぶつかってるだけだろーがっ」
――こうして遊んでいるうちに立花の呼んだ面子が全員揃ったので、俺らは改めて遊びに出かけることとなった。
とはいえ、この建物から離れる気配はなさそうだが。