脅威の人脈
早速俺らは仕度して、オールラウンドホールとやらの前までやってきた。
色んな娯楽施設が1つにまとまった建物であり、地下にはパチンコやギャンブル施設なども完備されてるとかなんとか。
立花は今日、ここで丸1日はしゃいで楽しむつもりのようだ。
「――おーい! こっちだこっち!」
手を振る立花の姿が見え、俺と優奈はそちらへ駆け寄った。
右手側に真野、左手側に京橋を侍らせている――ようにみえる――立花は、まさしく"両手に花"状態だ。
そういえば立花たちの私服姿、初めて見るな。
「お待たせ~」
「うっし、遊ぶぜ! 俺がリードしてやっから、しっかりついてこいよお前ら!」
言うが早いか、早速立花は建物へと入っていく。
やけにハイテンションな様子に女性陣はやれやれと首を振るも、何だかんだで小走りでついていく。
出遅れるわけには行かないと、俺もみんなの後ろを追って建物内に入る――が。
「……」
肝心の建物内は、あまり賑やかではなかった。
まあ、知ってたけどな。何故なら今日は平日だ。仕事も学校も無しに遊んでいるのは俺らと、他に精々子連れの家族しか居ない。
閑散としてはいないものの、先程までの立花のテンションには見合わない静けさで包まれている。
「――え、何。どういうこと?」
「立花、今日は平日だぞ。午前中とか、遊びに来る人間なんて限られてるに決まってるだろ」
「ンだよ畜生!」
「……あーでもほら、あれだ。お前の知ってる人全員集めれば、それなりに賑やかになるんじゃないのか?」
「それだ! ちょっとまってろ、今すぐ全員掻き集めてやる!」
物凄い勢いでスマホを取り出し、立花は電光石火の如く文字を打ち込んでいく。
差し詰めメールを使ってるんだろうが、俺からしてみれば電話の方が早い気がするんだよな。
「?」
ふと女性陣のほうを見ると、必死に画面を操作する立花の傍ら、ボンヤリと遠くを見ている京橋の姿があった。
「――全員っていうと、どんなもんになるんだろうな」
何気なく話しかけてみる。
まあ黙ったままだろうな――と思っていたら。
「――計36人」
詳しい人数つきで返事が帰ってきた。
「36って、分かるのか?」
今度は頷いただけである。
理由は如何なものかと聞いてみようとしたら、横から真野が割り込んできた。
「立花君、クラス全員のアドレス知ってるんだよ」
「はい?」
「だから多分、クラスメイト全員呼ぶんじゃないかなぁ……?」
首を傾げれば桃色の髪が揺れる――って、そうじゃなくて。
「マジで?」
「う、うん……その、全員来れるかどうかはともかく、呼びかけはしてると思うよ?」
「立花……お前何モンだ」
すると立花は、丁度スマホをポケットに入れたところだった。
「ふぃ~――ん? どした?」
「いや何でも。で、誰か来るって?」
「今んとこ、来れるってすぐ返事が来たのは9人だけだ」
それは"だけ"っていう言葉で収めて良いのか。
っつーか返信はやいな、その9人。
「けど、まだ増えるはずだ。何せ31人にメールを一斉送信したからな!」
しかも京橋の予想当たったし。
「ゲーセンエリアで集合って言っといたから、何か遊びながら少し待とうぜ」