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夢みる未来  作者: 風純蓮&水恋歌
夢みる未来~本編~
15/22

伏魔殿の真実

 やがて放課後になり、俺は確信した。

 ホームルームで師岡が京橋に「この後指導部まで来い」と言っていたのだ。

 師岡の指導がこの後すぐ始まると思うと、何だか嫌な胸騒ぎがしてならない。

 俺は急いで荷物をまとめ、京橋のあとを追いかける――


「――?」

 やがて指導部の前まで来た――のだが、京橋は現れた師岡の後についていった。

 一体どういうことだろうか。とりあえず更に後を追うしかなさそうだ。


 ――やがて辿り着いたのは、旧校舎と呼ばれる場所だった。

 ここは名の如く古い校舎であり、平時も解放しているが、専ら物置と化しているため立ち入る生徒や教師は少ない。

 ――なるほど、ここでなら安心して"食える"だろうよ。

 俺は足音と息を潜ませ、物陰に隠れて2人の様子を窺う――


「お前、何故喋らない? 障害でも持っているのか?」

「――」

 まあ、答えないだろうなとは思ってた――のだが。

「別に」

 しかし大方の予想に反し、京橋は口を開いた。

 アルトとソプラノの中央に位置するような、消え入るような声色は何とも涼やかで美しい。

 流石に師岡を前に黙りきることはできなかったのだろう。

「授業中に当てても黙ったままだな? 問題が分からないのか?」

「――」

 物陰に隠れているせいで見えないが、多分京橋は頷いただろう。

「だったら分からないと言えばいいだろう。喋れない理由でもあるのか?」

「――声、小さいから」

 うん、確かに小さいね。

「言っても聞き返されるばかりで、うんざり」

 ――なるほどな。喋るのが億劫になったと。

「そうか」

 さて――ここいらが潮時と見た。師岡は如何出る――

「ならば声出しの練習だな」

 声出しの練習――なるほど、態々ここまで京橋を連れて来た理由はそういうことだったのか。

 ここなら確かに、声を出す練習をしても誰にも迷惑がかからないだろうし、練習にはうってつけである。

「――?」

 しかし、納得しかけていた答えは一瞬で否定に帰す。

 声出しの練習という割には、京橋の悲鳴にも似た息を飲む声がしてきたからだ。ついでに、何かをカチャカチャさせる音も。

 ――思考が不健全だ、と言われればそれまでだが、より一層嫌な予感が拭えなくなってくる。

「これを使えば、確実に声は出るだろう」

「い、嫌……」

 ――これは。

 俺はポケットからスマホを取り出し、カメラ機能を呼び出す。

「ずべこべ言うな!」

「嫌、放して……!」

 ――明らかな悲鳴から遂に確信へと至り、俺はスマホのカメラを構え、素早く物陰から飛び出てシャッターを切った。

「なっ……!?」

 相手にとっては、よほど不測の事態だったのだろう。

 カメラに収まった画像には、情けなく男の象徴を丸出しにする師岡の姿と、あからさまに嫌がる京橋の姿が写る。

 ――俺というイレギュラーが出現して数秒、その場が固まった後。京橋は隙を見て師岡の手を振り払い、俺の元へと駆け寄って背後に身を隠した。

 目には若干の涙が浮かんでいる。これは明らかに忌々しき事態だな。

「証拠画像、ここに撮影、収めたり……なんてな。まさかこれで肖像権訴えるとか、ガキみたいなことはしないだろうなぁ?」

「……何をしている。京橋の指導の最中だ」

「ケッ、これが指導とか――落ち武者なのは俺じゃなくてアンタじゃねぇの?」

 ――言い争っていると、後ろから複数の足音が聞こえてきた。

「お、おいおい……何だよこりゃ?」

「も、師岡先生、何見せてるんですか! 破廉恥です!」

「うひゃー……あの噂、本当だったんだ……」

 やってきたのは、なんと立花たちと――

「何事だ!」

 生徒会長だった。

「お、お前ら何でここに?」

「そりゃ、お前が血相変えて走ってったんだ。何かあったのか気になるっての!」

 好奇心でついてきたのかよこいつら。

「全く、廊下を走る生徒がいて注意しようと思っていれば……とんでもない現場に出くわしたな」

 黒髪ロングが美しい事で知られる生徒会長――名前を天城涼香という。

 話には聞いていたが――確かに美しいの一言だ。凛とした眼差しや姿勢が、より一層その美しさを際立たせている。

「――」

 やがて、その場の空気は一気に固まり――――

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