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夢みる未来  作者: 風純蓮&水恋歌
夢みる未来~本編~
14/22

師岡の噂と無口な少女

 翌日、当然俺は学校を休んだ。

 一晩寝たおかげである程度熱が下がったため、行こうかとも思ったのだが優奈がそれを許してくれなかったのだ。

 そうして迎えた更に翌日、俺は心配する優奈を尻目にマスクをして家を出る。

 咳も出るし声も調子悪いが、転校して早々長らく休むなどあってはならない。

「おいおい、大丈夫かよ?」

 早速立花たちが心配してくる。

「大丈夫だよ、ちょっと疲れが溜まってただけだ」

「あー、そういえばお前、ここに来るまでかなり長旅だったらしいしな。そりゃ熱も出るか」

「寧ろ、出すなってほうが無理だっての」

「だよな」

 こうして立花をはじめクラスのみんなは心配してくれたのだが、師岡先生だけは相変わらずだった。塵も積もればなんとやら、師岡先生への悪い印象がどんどん膨れ上がる。

 それにここ数日で、俺は師岡に対する奇妙な噂を聞いている。何でも師岡担当の指導部は伏魔殿であり、指導対象となった女子生徒を"食っている"とか何とか。

 しかも案外しっかりとした噂であり、教師間でも話題に出ているくらいだ。しかし今のところ被害に遭ったのは1名だけらしいが、この先も噂の信憑性は変わらないだろうとのこと。ましてや食われた女子生徒は自殺しており、遺書すら残っていないと聞くから。

 片や師岡はというと、当然というべきか、その噂を真っ向から否定している。

「――?」

 うちのクラスは基本的に騒がしい。だからこそ、静かな人物には逆に目を惹かれる。

 教室の端で静かに本を読む女子生徒がいて、俺は何となくその人を見ていた。

 確か、名前は京橋雫きょうばししずくだったか。薄紫の短髪に琥珀色の瞳と、まるでアニメに出てきそうなほど可憐な容姿である。

 いつも黙っていて声を聞いた事が無い。授業中に当てられても黙ったままであり、俺からすると本を読んでいるイメージしかない人だ。

「――雫ちゃん?」

「?」

 真野が隣から話しかけてくる。

「綺麗だよね、あの子」

「ま、まあ……否定はしない」

「お? 何か興味ある的な発言かそれ?」

 更に立花が絡んでくる。

「いや、俺あいつの声聞いたこと無いなと思ってさ。いっつも本読んでるイメージしかない」

「俺もそんなイメージしか抱いてないぜ? 去年同じクラスだったけど、アイツが喋ったところ、見たことないんだよな……」

 やっぱりか。

「儚げで可愛らしい容姿は人気だけど、私もあの子の声聞いたことないなぁ」

 愛美でさえこの反応である。

「私も……っていうか、先生も声聞いたことないらしいよ?」

 更に学年位置の人気者である優奈でさえこう言っている始末。

 こうしてみるとやけに気になるな、あの京橋って人。

「あ、でも噂なら掴んでるぜ」

「?」

「あいつ、今度師岡の指導を食らうらしいな。あんまり喋らないから、性格を矯正させるって話だけど……」

「――それ、いつの話だ?」

「さあ? 校則通りに話が進めば、今日にでも指導じゃねぇの?」

「マジか」

 ――何故か俺は、師岡の指導部まで訪ねてみたい気になった。

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