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夢みる未来  作者: 風純蓮&水恋歌
夢みる未来~本編~
13/22

高熱以上の温もり

「……?」

 目を覚ますと、俺の部屋だった。

 なんだろう。なんか変な夢を見ていたような気がするが、気のせいだろうか。

「――あ、やっと起きた。もー、なんかいきなり倒れたから心配しちゃったよ。大丈夫なの?」

 傍らには少しむくれた優奈がいる。そういえば俺、頭痛で気絶したんだっけ。

「あぁ、わりぃ」

 軽く返事をしておくが、優奈の機嫌は収まりそうに無い。

 さてどうしたものかと考えつつ、無理矢理に身を起こす――が、若干身体が重い。それに熱っぽいし、風邪でも引いたか。

 それにしても、突然倒れた俺に対して救急車を呼ばない辺り、流石は田舎である。

 まあ、呼ばれたら呼ばれたで困るんだけどな。

「凄い熱だけど、ほんとに大丈夫なの?」

「何度?」

「40度」

「何だってぇ……?」

 まさか本当に風邪だとは。

「――ねぇ、無理してない?」

「ん? 何が?」

「だって裕也君、ここへ来たときからすごく辛そうな顔してるんだもん。表面的には笑ってるけどさ……」

 ――優菜には敵わん。このとき俺はそう思った。

 確かに務めて平静を装っているが、本当は泣きたいくらいだ。自分で言うのもなんだが、それくらい俺の過去は壮絶である。

 いじめを受けなかったときなど無く、孤児院でさえ身を狭くして暮らし、周囲の優しかった人たちは皆挙って死んでいく――

 もう心が折れそうだ。

「――裕也君」

「?」

 すると優奈は、俺の手を握ってきた。

 40度の高熱を出しているはずなのに、何故か優奈の手の方が暖かく感じる。

 これは――

「私の手、あったかい?」

「――うん」

「だったらそれは温もりだね」

 ――ぬくもり。懐かしい響きだ。

「私はいつも此処に居るから。絶対何処にも行ったりしないから、どうか温かい気持ちを思い出して」

 ――そうだ、これだ。

 おぼろげながら優奈に母親の姿が重なり、まだ小さかった俺にくれた人間のぬくもりを思い出す。

 両親を失くして以来、俺が心のどこかで求めていたもののひとつ――

「……ありがと」

 こんな気味の悪い男に対してなんて優しいんだ。

 くそっ、こんなときに限って語彙が少なくなる自分が腹正しい。

 お礼しか言えないなんて。

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