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夢みる未来  作者: 風純蓮&水恋歌
夢みる未来~本編~
12/22

胡蝶の夢

 ――これから俺はどうなるのか。


 また今までみたいに引き取り手を失い、いじめを受け続ける日々が続くのか。

 そして再び孤児院へと戻るのか。


 ――そんなの、いやだ。


 毎日のように自殺を考えるくせに、本能は本能に従ってのうのうと生きている。

 だったらせめて、楽しい事を考えよう。


 ――でも考えたところで、現実になるわけでもないか。


 少し眠ろう。百合の花があると、良い夢を見られるって聞いたし。




    ◇  ◇  ◇




 とある一軒家が、手入れもされていない状態で佇んでいる。

 窓は全て締め切られ、中では少年が眠っている。山という言葉さえ生々しいほど、沢山の百合の花を敷き詰めて。


「――」


 1人の少女が、その一軒家に近付く。

 右手には、身の丈をも越える大鎌が握られている。少女はその鎌を振るい、屈強な鉄製の玄関を容易く切り裂いた。

 燃えるような赤い瞳に、鮮やかで可憐な茶髪。そんな愛らしい見た目とは裏腹に力は強く、顔からは表情が消えている。

 しかし玄関から漂う百合の匂いに、少しだけ眉を顰めた。

「――百合の香り……なるほど、アルカロイドでの自殺か」

 少女は家へ入り、奥へと進む。

 迷うことなく歩き、辿り着いた場所は少年の眠る部屋だった。

 ドアを開けると百合の花が零れ落ち、あたり一面真っ白である。

「――死神としての運命から目を背け、自ら命を絶ったか。人ならざるモノの存在など、あって当たり前だというのに」

 既に息をしていない少年に、少女は無理矢理聞かせるように語り掛ける。

 死後間もないか百合の所為か、少年から異臭はしない。

「――夢ばかり見るな。記憶に鍵をかけ、自らに嘘をつくな。課せられた運命に向き合え」

 少女の手が、少年の頬に触れる。




 ――――君こそ幻想を語っているに過ぎないんじゃないか。




 ――――何処とも知らない場所で、誰とも知らない少女に、そう語っている俺が居た。




 ――――最早どちらが幻なのか、誰も分からないというのに。




 ――――俺の夢みる未来とは、一体どちらなのか。

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