この町の謎
木立川学園――地図にも載らない町に建っている割には、何故か全校生徒人数が優に1000人を越えている謎の高等学校。
授業の難易度は至って普通。無勉強でも普通についていける程度である。なのにギリギリ進学校であり、しかも早稲田や京葉などの最上級大学への進学者も輩出しているというので驚ける話である。
コースは普通科に加えてコスモサイエンス、生物学、考古学、文学の4つ。このうち俺は考古学か文学へ進級しようと思っている。何故なら数学が苦手だからだ。
その学園を中心に栄える、俺の住まう町こと木立川町――地図にも載らない町の割には、交通機関が少ないだけで何故か繁華街を控えている謎の町だ。人口は約20万人程度。繁華街を除き、町の大半は景色が良いだけの田舎町である。
――引っ越してきて約1週間。大方この町の全体像がつかめてきた。
だが不信感が拭いきれない――というよりは、頭では理解できない謎が存在することに違和感があるのだ。
人口20万人と繁華街、これだけあれば町として地図に載るはずだが、何故載っていないのか――これである。
夢や幻想じゃあるまいし、これは紛いも無い現実であることに変わりはないわけだが。
「――おじさん」
「ん? どうした?」
夕食後の一家団欒。
隣で新聞を読む康弘おじさんに、思い切って聞いてみた。
「何でこの町は地図に載ってないんだ?」
「むぅ……」
するとおじさんは、考える仕草をする。どうやらおじさんも詳しく知らないようだ。
「――この町はな、実は1年前に出来上がったばかりなんだ。だから新しい地図には載ってないだけで、そのうち載るかもしれん。そういうことじゃないか?」
「なるほど」
それなら納得だ。出来て暫くも立たない町なら、そうなることもあるのだろう。
「――!?」
突然のことで、何も対応が出来なかった。
何故か襲ってきた強烈な頭痛に、俺は意識を落とす――