いつもの面子
「すっげぇよなお前。転校早々、師岡に喧嘩売るとかよ」
陽気にはにかむこの人は"立花雄介"(たちばなゆうすけ)。
いつも首にヘッドフォンをかけていて、"性格さえよければイケメンな人"とのことだ。
「ま、落ち武者扱いされりゃ誰だってイラつくだろうし、しゃあないか。ましてや相手は担任の師岡だし」
「その様子だと、よっぽど評判悪いみたいだな」
「悪いなんてもんじゃないぜ? なぁ?」
そう言って立花が話を振った先にいるのは、優奈の親友らしい女子生徒"真野愛美"。
何でも学園一の美女だとかなんとか、典型的な話なのに強ち嘘でもなさそうな人だ。
「う、うん。私もあの人はちょっと……」
「だよなぁ。ったく、何で俺があの師岡のクラスなんだか……」
とりあえず、師岡先生の評判の悪さはよく分かった。
現に教室のいたるところで「あの人いきなり師岡組って可哀想だよね」みたいな会話が飛び交ってるわけだし。
ここまで嫌われている先生が居ると他にも居そうなんだよな――そんな気がする。
「で、どういうつもりだ?」
「ん?」
「師岡じゃねぇけど、態々こんな田舎まで引っ越してくるとかさ。親の転勤か?」
早速俺の過去を弄りに来た立花である。
彼に悪気は無いのだろうが、こっちとしては絶対に聞かれたくないことなので、適当にごまかすことにした。
――のだが。
「立花君」
「ん?」
「その話、聞かないであげて。裕也君にとっては辛いことだから」
すぐに優奈のフォローが入った。ありがとう、優奈。
「あー、そうか……まあそれならしゃあないか。色々事情はあるんだろうし」
「……」
何だ、やけに物分り良いな。今まではこんなこと一度たりとも無かったぞ。
「わりぃ、変なこと聞いて」
「いや、平気だ」
「――そっか。サンキューな。とりあえず仲良くしてこうぜ」
何だこの爽やかな奴。普通に性格良いと思うんだがな――
「あぁ」
――と、こんな一幕があって以来。
俺のところには立花雄介、深水優奈、真野愛美の3人が集まり、これにて所謂"いつもの面子"が出来上がるのだった。