恋人
※この作品は短編集です。
貴方が好きだと口からこぼれる。
そばにいて欲しいと抱きしめる。
貴方の肌は柔らかく、私の孤独を包み込む。
パパもママも反対しているの。
私が貴方を好きだってこと。
貴方と結婚したいって言っているのに、そんなことは無理だって言うばかり。目を覚ましてくれと言うばかり。
どうして許してくれないのかしら。
私は本気よ。貴方さえいればなんにもいらない。パパとママの言うことなんて聞かないわ。
貴方も私と同じ気持ちでしょう?
そうよね、貴方はいつも私の味方。私のやりたいようにやらせてくれる。ずっとずっと微笑んで。
その笑顔がひどく愛おしいの。
「先生、娘は一体どうしてしまったのでしょう……」
「あの子は毎日のように『彼』と話しているのです。私や妻がいくらやめろと言っても聞かないのです。」
「……私にも詳しい事は分かりませんが、もしかしたらお嬢さんはある種の『恋』をしているのかもしれません。」
「ええ……。それは薄々感じておりますわ。」
夜もふけた暗い建物の、ある部屋の電光灯がやんわりと輝いている。
「ですが!おかしいですよこんなの!よりによって、なんで……なんで!」
男の声が虚しく響く。それに同調するように、電光灯の光が強くなったり弱くなったりを繰り返した。
「お父様、気持ちは分かりますが落ち着いてください。」
「じゃあどうしろと!娘は……娘は治るんですか!?」
「それは……」
『先生』と呼ばれたその男は言葉を濁して俯いてしまった。その前に座る女は、声を押し殺して泣いていた。女の夫と思われる男はそのやるせなさから自分の膝を力なく叩くばかりであった。
そんなことはつゆ知らず、『病室』にいる少女はいつまでも語りかける。返事が来るはずもない『彼』に向かって。
明日はどこへ行こうかしら。
ねぇ、貴方はどこに行きたい?
え?公園?素敵!そうしましょう。
パパとママなんか置いて、ふたりだけで行きましょう。
もしも結婚するならば、森の奥にある小さな小さな教会がいいわ。
ささやかな式でいいの。
だって私と貴方はずっと一緒にいると約束されているのだから……。
少女にとって『彼』が全て。『彼』と共にあり続ける日々が、彼女の人生そのもの。
少女の『病』は一生治らないだろう。
『彼』がいなくなるその日まで。
彼女はそれでもかまわない。治らない方が少女にとって幸せだと感じているから。
あるいはもう気づいているのかもしれない。自分が狂気じみていると。
それでも少女は幸せならばと気づかないフリをしているのではないか。
どちらにせよ、異常なことには変わりないが……。
部屋からは少女の声しか聞こえない。
これは、人形遊びに魅入られた少女の話。
初めまして、中原春瑠です。
今回は初めてのダーク物ということで、緊張しています……!
そのため、文章がまとまっていない話がとても多くなると思いますが、作者は日々精進してまいりますので、温かい目で見てください。
そして、このサイトでの初投稿作品ともなりますので、ご意見・ご感想、質問等があればいつでも言ってくださいね!
善処できるところは善処いたします。
まだ高校生で文学的な言い回しなどができないので、そういったアドバイスなんかも頂けると大変ありがたいです。
長くなってしまいましたが、初投稿作品『愛と狂気を少しだけ』をどうかよろしくお願いします。