少年
革命は国全土へ広がっていくことになってしまった。そしてヘルヤ家の大きな屋敷に火炎瓶などが投げ込まれるようになってしまい、ヘルヤ家は国民に怯えることとなった。すべてはべジュンのせいなのに、なぜ関係のない人物まで非難されなきゃいけないんだとヘルヤ家は絶望をしていた。べジュンも焦りに焦って地下へと逃げようとしたのだが、侵入者が次々と屋敷へ入ってくるとべジュンはすぐに捕まってしまった。この屋敷には優秀な戦闘能力を備えた「メイド」がたくさんいたわけだが、そのメイドたちは仕事をすることはなかった。ヘルヤ家のある人物によって革命前夜に全員解雇、避難させられていたのである。つまりべジュンが「助けてくれ」だの「俺が王だぞ」など言ったとしても連行されていくのである。べジュン以外の家族は必死の抵抗と説明、調査によりべジュンに操られていたことが分かったが、国民の監視体制の元にさらされた。べジュンは怒りに狂った国民たちに広場のある台に乗せられた。「やめてくれ」「もうやらないから」とその汚い唾と、国民の血税で豊かに膨れた腹を見せつけたべジュンは、ギロチン台に乗せられた。ギロチンは良い処刑装置で、即死ではないのが、国民にとっては至高であった。刃は少し錆びて茶色くなった刃物を取り付け、その刃を惜しめもなく降ろす。べジュンの首にめがけて降りた刃はスパっとその首を切ることができない。徐々に、徐々に切っていくのである。また刃が降ろされ、人々は酒を片手に笑いながら、また刃が降ろされ、娯楽の一部として革命を楽しむ。べジュンの叫びも、首の血も、何もかも国民のこれまでのものと比べたらまだ少ないほうで、不満が国民から消えることはなかったが、しかしべジュンは嗚咽と笑い声に囲まれて国民に処刑された。革命は、成功に終わったのである。
それもつかの間、べジュン以外の家族も皆殺しにしてしまおうとしたわけである。べジュンの血筋、DNAはこの世から消さねばならないと考えたのである。しかしヘルヤ家は上手いことその場が盛り上がっている中、拘束状態のまま亡命をすることに成功したのである。どこへ行ってしまったのかは誰一人として気にはしなかった。殺すことはできなくても、王も政治体制も変わることになる。それが国民にとっては嬉しくて仕方がないことであった。王に任命されたのはエボバルトで、妥当だろうと皆が口をそろえた。
しかしその革命が成功していたという事実はすぐに覆させられた。ヘルヤ家の者は一人だけ残っていたのである。「ヘルヤ=シリュー」。幼いこの少年がなんと家族の亡命にも置いて行かれてしまいこの国に残ってしまったのである。つまりまだこの子供が残っている限りは政権はこの子供に残っており、国民はこのシリューをも殺そうとした。しかしそれを止める者がいたのである。あくる日、まだ革命の火がほとぼりを感じない、そんな夜にシリューはうろついているところに目をつけられた。人々が目をぎらつかせたとき、「シリュー様は私が守ります……」と現れたのはヘルヤ家に仕えていた凄まじい戦闘能力のメイド。そのメイドがヘルヤ家、いやシリューの味方をし始めたのである。誰も、このメイドに勝つことはできなかった。その路地裏には、メイドの足跡のように人が倒れていた。
なぜメイドがこのシリューの味方をするのか。それは、革命前夜でメイドを避難させたのは、紛れもないこのシリューなのであったから。まぁただそれだけでメイドがシリューを一生涯支えようとは思わないだろう。シリューが、街で歩けば誰もが眩しすぎて目を細めてしまうほどに、美少年でなければこんなことにはならなかったであろう。しかも無垢である。依存などしてしまえば、これ以上もこれ以下もないではないか。




