3章1話 作者、悩み始める
琴上家の帰り。俺は石の妖怪だった魂と遭遇する。
ようやく桃子の件が落ち着いたと思ったのにこれだ。
次から次へとドタバタする毎日である。
どうやら、以前月花に浄化させられて、現在は戦う力を失っているらしい。
以前は恐ろしい石の妖怪だったと誇らしげに語ってみせる。原作での登場はもちろん知っている。しかし、現在目の前にいるのは、丸くてプニプニとしてそうな手のひらサイズのゆるキャラだ。
試しにその可愛らしい肉体で攻撃してきたが、まるで痛みを感じなかった。どうやら本当に危害を加えるつもりは無いらしい。
まったく引き下がる気がないので、家までの道中話だけでも聞くことにした。
「はあ。んで?なんで見張ってたの?まさかストーカーなの?変質者の魂なの?」
「っておいおい。さっきまで、怖がってたのに掌返しすぎんだろ!!」
「いやいや。怖がる訳ないでしょ。ゆるキャラにいくらペチペチされても怖くないから。」
「嘘つけやい!全身プルプルで話しかけてきただろうが!」
「はいはい。それでなんでなの?」
「ちぇ…!もうちょい漫才みたいなやり取りしたかったのに。……オレは月花の姉貴に言われて、鈴蘭の嬢ちゃんを見張ってたんだ。んで今は最近琴上家うろついてる座敷童子を探してたってわけよ。」
「鈴蘭を……見張ってた?やっぱ変質者かよ」
「ち・が・う!!!月花の姉貴に言われた言うとるやろがい!」
「どこの方言だよ。絶対間違ってるし。……それで?」
「それで今日オロチに襲われて、急いで姉貴を呼びに行こうとしたんだ。そしたら膨大な霊力を解き放つお前さんがいたって訳だ。」
「膨大な霊力?俺が?」
「ああ。最初は近くに感じた琴上の坊主を警戒してたんだが、草薙剣を抜いたお前さんは明らかにおかしなぐらい霊力が上がった。……そしてそんな馬鹿みたいに強い霊力を持っているのに、鈴蘭と同じように力の使い方を知らないようだった。……そんでぴぴーんと来たわけだ!お前さんが前に座敷童子が言っていた神獣の男の子だってな!」
なんでぴぴーんと来たのかは分からないが、座敷童子から俺の特徴でも聞いていたのだろうか。
それにしても神獣って。前も言われたな。たしか九尾がそんな設定にした気がする。『創助』ってそんな重要人物なの?この世界において。
ただのモブに転生したんじゃないの?なんだか嫌な予感が止まらない。
世界の歴史を知らないうちに、変えてしまっているんじゃないか。
バタフライエフェクトってやつなのか?
「とにかくだ。オマエさんは既にこの世界に足を踏み入れた。幸い月花の姉貴とも知り合いだ。こないだの俺の騒動に巻き込んでしまったのも聞いた。だから困ってんなら俺と契約してくれ。きっと力になれる。詫びって訳でもねえが、力を貸してやる。」
「契約って……いつでも契約を反故にできる、あってないようなやつだろ。信用できるかよ。」
俺は原作の知識を思い出しながら答える。
妖怪との契約なんて2話にしか出てこない言葉だ。
それも桃子や海が簡単に反故にされたものだ。信用なんてできない。
こいつが悪いやつではなくなったと知ってはいる。それでも、これ以上トラブルに巻き込まれたくない気持ちが強かった。
「ガード固いねえ。それは場合によるんだよ。まあいいさ。今日は話を聞いてもらうってだけだったしな。……いまは信用して貰えないみたいだし、また今度にするさ。」
そう言い残すと、人魂は消える。
ホント何しに来たんだアイツ。
だが、月花には相談しようと考えていた。人魂の話が本当かどうか聞くこともできるし、行ってみるのはありだな。
◆◇◆
それから数週間後。俺がこの世界に転生して1ヶ月。もうすぐ夏休みを控える今日この頃。
霊力に関してはあの日以降徐々に落ち着きを取り戻し、悪意のある妖怪とそうじゃない無害な存在と見分けられるようになった。
初日は世界が赤く染って見えたものだが、なんとか普通の視覚に戻りつつある。
コントロール?できているのかもしれない。感覚で何となくでやっているからあまり分からないけど。
ジンも霊能者関連のことで関わってくるかと思いきや、あれからそのことを詮索してくることはない。
そこら辺は触れてはいけないというルールでもあるのだろうか。各家の掟的な。それとも今は見逃されているのだろうか。
どちらにしろ、変化はない。
それとは別に、明日俺は月花に会いに行く。
陽太に月花と会える日を設定してもらった。
草薙剣を抜いたことで多分俺の体には変化が起きた。それの相談と人魂の話も相談したかったからだ。
教室ではいつものように鈴蘭、ジン、海、桃子の4人が騒がしくしている。
蟠りが無くなった4人はけっこう簡単に仲を深めて行った。
桃子は強気な態度や脅すような真似はやめて、今は自然体。むしろ鈴蘭と共に色んな人と関わりを持つようになった。
鈴蘭みたいに表立って、謝罪とかはしていないが、態度や行動でその変化を示していた。
からかうような奴やよく思わない人もいたが、4人がたいそう仲良くしているのを見て、どうでも良くなっていった、みたいな感じだ。
鈴蘭もグループワークでは積極的に話すようになり、ちょっとしたやり取りからクラスメイトと仲を縮めている。順調そうだ。
2人とも危うい場面は見られるが、事情を知ったのか仲を深めたのか汐音が上手くフォローを入れている。
男子の方はジンと海が流すのがうまい。空気が悪くなっても昼休みに全力で遊んだり、給食でおかわりジャンケンをしたりしているうちに元通りだ。まあ、男子なんてそんなもんだ。
俺は少しだけ彼らと距離を取っている。あまり深く関わらないように適切な距離を保っているつもりだ。
これ以上彼らの運命に干渉したくない。あれから事件という事件は起きていないし、問題が起きたとすれば、今俺の体に起きている変化だ。自分で蒔いた種だし、自分で解決しようと思う。そのために明日は相談に行くしな。
今日も仲良く会話に花を咲かせる4人。そんな4人の様子を俺は自分の席から遠目で眺めることにした。
「なあせっかく四人仲良くなったんだし遊ぼーぜ」
おお、どうやら4人で遊ぶ約束をしているらしい。
「お前ただモモコと遊びたいだけなんじゃねーの?」
海からの提案に、すかさず冷やかしを入れるジン。
それに対し海はモモコと鈴蘭に背を向ける形でジンの肩を掴み耳元である提案をする。
「なん・・・だと!?」
さすがに何を言ってるか聞こえなかったが、驚愕した表情を見せるジンの声だけは聞こえた。大方、鈴蘭と仲良くなれるチャンスだぞ、とかそんな話だろう。
二人がコソコソしているのを見たモモコと鈴蘭は何か悪巧みをしていると判断したのだろうか。少し仲間外れにされて不服そうだ。
「なーにコソコソしてんのよ!」
堪らず立ち上がり思いっきり海の足を蹴るモモコ。
「いってえ!!なにすんだよ!モモコ!!」
「フンっ!玉じゃなかっただけ感謝しなさい」
「・・・モモコちゃん」
卑猥な会話が苦手なのだろうか。鈴蘭は少し引いてしまう。
「なんでお前に感謝しなきゃなんねーんだよ!!」
「私が美しいからよ!オホホホ!」
「お嬢様かよ!」
「お嬢様ですけど、なにか?」
「うぜえ!!今日一うぜえ!」
「なんだかんだ仲良いのなお前ら。」
「いや二人ともジンくんのアホが移ったんだよ」
「さりげなく酷いこと言うなよ、鈴蘭」
モモコと海はアホな会話を展開させ、それを見ながら鈴蘭とジンも同じとまではいかないが似たような会話を繰り広げる。
まったく、お似合いの4人だ。
「おいおい、そろそろ夫婦喧嘩やめてもらえるか?」
「誰が夫婦だ!」
いつものようにツッコミを入れる海。
「あら、嫌なの?」
それに乗じて茶化すモモコ。
「・・・え?」
少しだけ、ドキッとしたのか赤面する海。このふたりは本当に微笑ましい。
ジンは2人の様子を見て笑いながら、話を戻す。
「俺ん家来るか?三人とも。空いてるぞ?」
「お、マジ?お母さんいんの?」
「おう、最近帰ってきたぞ」
「やったね、お前の母さんの作るお菓子美味いんだよな。」
「へえ。でも本当に大丈夫なの?」
急に押しかけるということで不安げな表情をする鈴蘭。
「ああ、大丈夫。本館は静かにしてなきゃだけど母さんのいる別館なら問題ない。」
「あの神社かあ。一度入ってみたかったのよね。」
モモコが瞳をキラキラさせて言う。
「じゃ決まりだな。明日土曜だしお昼ぐらいに来いよ。準備とくわ」
「はーい!」
三人は元気よく返事して見せた。楽しそうでなによりだ。
一通りやり取りを終えると解散し、男女別々に散っていく。
「新作のビューティフル見た?しずくちゃん超可愛くない!?」
「子役の子だよね。ファション雑誌にも載ってるの?」
「うん!まじかわだよ!私たちとほとんど同い年なんだよ!」
「えっ!そうなの!?すっごく大人っぽい!」
「でしょでしょ!今度家おいでよ!鈴蘭もお洒落しよ!」
「えぇ、似合うかなあ」
「似合うって!髪型もね、色々アレンジしようよ!ジンくんも喜ぶんじゃな〜い?」
「や、やめてよ!聞こえちゃう!」
「皆知ってるって〜!」
「もお!!桃子ちゃんこそ!どうなの!」
「順調そのものだね。」
「もお!面白くない!」
「ごめんて〜鈴蘭!」
おお。2人は女子トークと言うやつか。くっついたり騒いだり、桃子と鈴蘭は楽しそうに盛り上がっている。
「こらこら、顔キモイぞ」
「むぐっ!」
頬杖をつきながら眺めていると、汐音に反対側の頬をグイッと押し上げられる。
どうやら、女子トークを眺める変態に見えたようだ。
「おお、汐音か!おはよう」
「ん、おはよ。」
ランドセルをおろし隣の席に座ってくる。
汐音は少し遅めの登校だ。
「仲良くなったよね。クラスも前より明るくなった。」
「だね。いいことだろ。」
「そう?」
「ん?なんか不満なの?」
「アンタが誰とも話してないじゃない。」
「そうかな?」
「あんたのおかげであの4人は仲良くなったんだよ?それっておかしくない?なんか、こう、変だよ」
「みんなのおかげだよ。」
「……そうね。なんかごめん。上手く言えない。」
「そっか。ありがとね。」
「何が?」
「心配してくれたんでしょ?」
「……なんか大人みたいで創助遠い。」
「……気をつけるよ。」
汐音は鋭い。俺が4人を遠ざけているのを肌で感じ取っている。
仲悪くしているわけじゃない。ただ、積極的に関わらないのはどうして?そう聞きたいのだろう。
もちろん、他のクラスメイトともそうだ。
もうこれ以上物語に干渉したくない。その気持ちとどうしても彼らとは距離が遠い。
年齢の差なのだろうか。
どこか冷めた目で関わっている自分がいる。
俺はいつまでこの世界にいるのだろうか。
なんのためにここにいるのだろうか。
ドタバタな毎日に、次々に起こるトラブル。
流されている気がして、大切なことを忘れている気がする。
「よっ。創助!」
思考を続けていると、目の前に海が現れる。
「明日ジンの家行くんだけど、来るか?」
「あぁ、明日か〜ちょうど予定入ってて。すまん!また誘ってくれ!」
嘘ではない。ただ、さっきの汐音とのやり取りが引っかかる。あんまり良くないよな。この感じは。
横目で汐音を見ると、ため息をついている。
そりゃ、良くないよね。分かってるけども、本当に予定あるんだもん!
「まあ、急だしな。わかった。なら夏休み遊ぼう!前約束したろ?川でバーベキューどうだ!?」
「おおおお!そりゃいいな!」
空気を読んだのか海が新たな提案をしてくれる。これは助かった。
「よし決まりな!支倉は?どうする?」
「女の子も来る?」
「もちろん!てか、支倉から誘ってくれよ。」
「ああ、うん。確かに。……うん。」
あんまり乗り気じゃない汐音。というより、何かを考えているような様子だ。
そんな汐音に海は小さな声で何かを話している。
「……創助に水着見せなくていいのか?」
「は、はあっ!?」
突然大声を出し、立ち上がる汐音。バッチリ聞こえていたが、聞こていなかったことにしよう。海め、ろくな提案をしないな。俺に見せたい水着なんてある訳ないだろ。
「お、おお、汐音どうした?急に立ち上がって。」
「なんでもない!私も行く!普通に!普通にバーベキューね!!」
「学校の解放プールもいいな、どうっすかあ!」
「こ、この!!!」
「俺……泳げない……」
「あっ……」
「……そ、そうよ!そうじゃない!やっぱりバーベキューよ!!」
「ちっ……!仕方ない、バーベキューで進めるか。先生にも聞いてみる!大人いないと怒られそうだしな!」
「なんか……すまんな」
「いいってことよ!」
ひとまず夏休みに遊びに行くになった訳だが。
これぐらいはいいだろう。汐音も満足そうだ。
ひとまず明日。月花と会う。
心の整理もそれからでも遅くないだろう。
最後まで読んでくださりありがとうございます。よろしけば、感想や評価、ブックマーク等、よろしくお願い致します。作品作りのモチベーションに繋がります。
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上記作品、完結させております。読むとさらに本作品が面白くなるので、まだの方はぜひ、読んでみてくださいね!




