最 終 話 少年、作者になる
目の前には不敵に笑う天邪鬼。俺の言葉が、どうやら気に入らなかったらしい。
「突然現れて何を言い出すんだい?僕を倒す?どうやって?」
「そいつはネタバレってやつだぜ?天邪鬼さんよ。」
どうやらタイミング完璧で登場できたらしい。
雲外鏡の力は便利だな。どこでも好きなところに移動できるとは。
九尾やウミたちとのゴタゴタは解決したみたいだし、残るは鈴蘭だけ。
前線で戦えるの俺だけ。
最高に主人公じゃないか。
作戦はもう考えてある。原作者の知識を持ってる俺を舐めんなよ?なにせ、お前の倒した方知ってるんだからな。
あとは上手くいくかどうかだ。
「俺と座敷童子で天邪鬼と戦う。桃子は後方支援頼むな。」
「わ、わかったわよ。というかあんた、なんでそんな落ち着いてんの?」
「まあ、実を言うとここまでの戦い全部見てたんだよね。何回も助けに入ろうとしたんだけど、俺が首突っ込む次元じゃなくて、次々展開していくからさ。タイミングむずかった〜」
「あ、あんたね。誰か死んだらどうするつもりだったのよ。」
「二年ぐらいなら雲外鏡の力で時間戻せるからさ。そこまで心配してなかったや。それに、お前らなら大丈夫だって、俺知ってるから。」
「個人的にはあたしこの力使うのすごく躊躇ったんだけど、あんた次元超えすぎじゃない?」
「色々あったからね。……それでジンは霊力を最大以上に高めておいてくれ。」
「ま、待ってくれ。最大以上まで高めてどうする!?というか、俺にはもう霊力がない!」
「他のみんなから集められるだろ?集めて解き放つ技はひとつしかないだろ?ぶっつけ本番だろうけど、頑張れ!」
「無茶言うなよ!?」
「お前ならできる!」
ジンは納得しきれていない様子だが、霊力を高め始める。九尾と義はジンを支えるように、力を分け与え始める。
話が早くて助かる。
「俺は何をすればいい?」
「カイはジンを守ってくれ。最高のタイミングで残ってる霊力ジンに渡して欲しい。」
「むちゃくちゃだな。やれない事はないが。」
「任せたぜ!」
「やるだけやってやる!」
「どうやら死ぬ前の僅かな抵抗は終わったみたいだね。」
「僅かな抵抗かどうか、試して見やがれ!!!」
俺と座敷童子は掛け出すと、不規則に動きながら天邪鬼に近づく。
「無駄なことを……」
刹那。背後に現れる天邪鬼。俺は雲外鏡・繋の力で攻撃を避ける。
「繋・次元転移!!!」
「へえ、やるねえ。」
「がら空きじゃ!」
隙をついて蹴鞠を解き放つ座敷童子。
だが、天邪鬼に触れると蹴鞠は消失する。
「君には鍵を渡していたね?返してもらおうか!」
空中に舞い上がり座敷童子に近づく天邪鬼。
「させないわよ!!!」
桃子は扇子の力で風を起こすと、天邪鬼を吹き飛ばす。
さらに上空に上がる天邪鬼。
「厄介な片割れだ。」
そのまま急降下し、ジン目掛けて霊力を解き放つ。
「来ると思ってたぞ!……神槍術・上り大蛇!!!」
カイはすかさず槍を構えると、天邪鬼に向けると槍を突き上げる。
斬撃が直撃し、吹き飛ぶ天邪鬼。元の場所に着地する。
「柊・氷結!!!!」
オレはその着地を狙い、雪娘・柊の氷で天邪鬼の足を凍らせる。
「練・石撃拳!!!」
さらに俺は拳を、石妖・練の霊力で包み、石の拳で殴り続ける。
「今じゃ!ジン!」
「ダメだ……ダメなんだ!力が出ない!俺じゃ……俺に鈴蘭を救うことなんかできねえ!!!」
「バカ!何言ってんのよ!!!!」
「いつまで悩んでる!?今しかないんだぞ!ジン!」
「ジン!鈴蘭は俺たちのために、力を使って鬼に飲み込まれたんだ!だったら、助けるのが友達だろ!!」
「俺は!!!お前みたいに強くねえんだよ!!なんだよ!めちゃくちゃじゃねえか!なんでお前は妖怪であることをそんな簡単に受け入れられるんだよ!俺は怖い!この力を使うのが怖い!鈴蘭が望む世界を俺は壊そうとした!!!助けるなら、お前がやってくれよ!俺には無理だ!!!」
大粒の涙を流すジン。どうやら力を使うことに、抵抗が生じているらしい。
今の俺はジンにとって地雷らしい。
まったく。勝手なことを馬鹿みたいに大声で言いやがって。
妖怪だって受け入れたのが簡単だと?
こっちは人生何周もして受け入れたんだよ!!
そんなこと言っても今は仕方ないので、説得しようと試みる。
「俺には無理だ!お前にしかできない!」
「俺には……無理だ…」
その場に崩れ落ちるジン。
「くっそ!ジン!!!」
「いい加減殴られるのも飽きたね。」
刹那。鋭い眼光で睨んでくる天邪鬼。指で軽く触れられただけで、オレの体はジンたちの方へと吹き飛ぶ。
「ぐっあああああああ!!!!」
その衝撃と時間切れにより、四人での融合が解ける。
その場に練、柊、繋が実態化する。
「練に……柊……?」
「次期当主ともあろう人が気がついてなかったのか?練も柊も妖怪だよ。俺と契約してる。」
「ふたりが妖怪……?」
ジンは状況が理解できないのか混乱している。
「何悩んでるのか知らないけど。お前が鈴蘭が望む世界を壊そうとした?意味わかんないね。妖怪と仲良くしてる霊能者ってのは、鈴蘭が目指す形だろうが。練と馬鹿みたいに遊んでたお前は、妖怪と人間の共存、望んでたんじゃねえの?」
「オレは……ただ、何も知らず、遊んでただけだ。力だってそうだ。みんなみたいに強い想いがあった訳じゃない。今が楽しければ、それでいいって。できるから、それが役割だから、やってただけだ。」
「それでいいんじゃねえの?何がいけないんだよ?」
「え?」
「どっちも同じ意味だろ?それ。役割あるとかないとか、知ってるとか知らないとか、仮定の話だろ。今のお前はどうしたいか、だろ?鈴蘭助けられるのはお前だけの役割で、お前のやりたいことじゃねえの?」
「……なんだよ、それ。そんな簡単でいいのかよ。……練は妖怪だし、桃子もカイも創助も鈴蘭もみんな妖怪の力使えるし。別に俺、特別じゃなかったんだな。……じゃあ俺はとっくに答え得てたじゃねえか。……俺はみんなと海行きてえ!!!!」
迷いが晴れたのだろうか。
ジンの周りに青白い炎が燃え盛る。
「この手で琴上を止める。僕はそれだけだ!!!」
突撃してくる天邪鬼。
「持ってけジン!!俺たちの霊力を!!!最高の海パーティーしようぜ!」
刹那、カイが大声を張り上げ、そこにいた全員がジンに霊力を注ぐ。
みんなで楽しく海に行きたい。そんな小さな幸せが起点となって、俺たちの想いを繋ぐ。
「……起源術式『ぬらりひょん』。」
「なにぃ!?」
ジンは作り出した刀と共に、全力の一撃を天邪鬼に喰らわせる。
刹那、ジンに天邪鬼の攻撃が直撃したが、のらりくらりとジンは姿を消し何百という刀の一撃を与える。
「幻影剣・百鬼夜行!!!」
ぬらりひょんとは取り柄ようのない概念そのもの。
時代と共に変化し続ける存在。
例え最強の妖怪でも、ぬらりひょんを捉えることは出来ない。
「戻ってこいよ!鈴蘭!術式発動!強制分離!!!」
ぬらりひょんの概念に囚われ、鈴蘭と天邪鬼の心が別々になる。その隙をつき、ジンは妖怪と人を分離させる能力を発動させる。
刹那。鈴蘭と天邪鬼の肉体は離れ、白い百合のような髪の少女が現れる。
上空には一本の角を生やし、藍色の髪をした美少年が浮かんでいた。
「鈴蘭!!!なんで僕を拒絶する!!!!」
「全部見てきた。全部見てた。悪意に苦しむあなたを私は止める。」
「こんな世界!滅ぼしてくれる!!!」
「あなたの闇を私は祓う!!!『転生術式・天探女』!!!!」
黒い闇の塊を解き放つ天邪鬼。
それに屈することなく、眩い閃光を放つ鈴蘭。
「また会えるの待ってるからね。」
鈴蘭は優しく微笑むと、力を強める。
「僕は……どうして……」
刹那。天邪鬼の小さな声を拾うこともなく、光の渦へとその姿は消えていく。
「お前……鈴蘭なのか?」
「そうだよ。ジンくん。助てくれてありがとうね。」
「ばか!心配したんだから!」
「わわわ!?桃子ちゃん!?」
ジンと鈴蘭の再会の挨拶もそこそこに、桃子が鈴蘭に抱きつく。
「安心しろ小童。この世界では、お主が殺した妖怪は軒並み悪意の塊。気に病むことはない。それよりもこの先の人生を考えた方がよっぽど有意義だぞ?」
まだ浮かない顔をしているジンの肩に、座敷童子は軽く触れる。
「自分で確かめていくさ。自分で見て考えていくよ。」
「それが良い。」
座敷童子は安心したように微笑む。
「俺様と同じで馬鹿なんだから、難しく考えんなよ!」
「うるせ!同じにすんな!」
「二人とも同じぐらいだろ。」
ジン、練、カイはいつも通り微笑み合っている。練が妖怪でも関係性に変化はないらしい。
「助けるのにかなり時間を要しました。九尾様。」
「良い。お前は今、あの少年の元にいるのだろう?行ってやれ。」
「ありがたき幸せ。……人間に恨みを燃やすしか生きる道のなかった私に、道を示してくださりありがとうございました。」
「同じような境遇のお前を放っておけなかっただけじゃよ。」
「今度は家族でゆっくり出来ることをお祈りしています。」
「……そうじゃな。」
久しぶりの再会を分かち合う九尾と柊。
無事に約束を果たせてよかった。
義と九尾はお互いに寄り添うと、ジンを見つめて微笑んだ。
みんなボロボロで、色んなことを考えて決意してきたと思う。
俺が知ってるのは、ほんの一部の出来事だけ。
これからもドタバタとした毎日が続く思うけど、ひとまずは解決ってことでいいんじゃないかな。
この先こそが、本当の新しい物語だ。
俺はそんなふうに思った。
最後にひとりぽつりと佇む繋に、話しかけに行く。
「どうだ?原作よりもかなりいい形のエンドじゃね?めちゃくちゃに壊すより、こっちの方が楽しいだろ!」
「そうかもね。少しばかり楽しませてもらったよ。」
「そりゃあ良かった。」
「それで?君はこの後どんな物語を私に見せてくれるのかな?」
「ひとまず俺の物語を描いてみるよ。このドタバタとした毎日をさ。」
「それは楽しみだ。」
◆◇◆
あれから天邪鬼が出現させた妖怪たちは消え去ったという。
九尾達はまた姿を消したらしいが、原作とは異なり生きている。
まだ霊能協会や御三家との揉め事は片付いていないらしいが、そこはお偉いさんに任せようと思う。
それに成長したら、ジンや鈴蘭が何とかしてくれるだろう。
今日はみんなであの日約束した海で遊ぶ日。
モモコの別荘のプライベートビーチに来ている。
相変わらず日焼け止めをガチガチに塗る柊に、走り回る練。
カイとジンも海で楽しく泳いでいる。
桃子と鈴蘭はビーチバレーやバーベキューやで海を満喫するようだ。
気持ちの良い波の音。
少し冷たいが、心地の良い風。
俺はみんなを見守りながら一休みしていた。
同じく休憩に来た汐音がドリンクを手渡してくれる。
「あんたは、ちゃんと楽しんでるの?」
「楽しそうに見えない?」
ドリンクを受け取り、軽く口を潤す。
汐音は頑なに水着を見せようとせず、ずっとラッシュガードを羽織っている。
絶対かわいいのに、勿体ない。
「知らないわよ。アンタって昔からよくわかんないやつだし。……進路とかどうすんのよ?」
「急な質問だな。……子供に関わる仕事したいって思ってるよ。」
「へえ、意外。子供好きだっけ?」
「……俺みたいな子供時代を送って欲しくないなって。できることないかなって思ってさ。」
「……そう。わたしにできることあったら、言いなさいよね。」
立ち去ろうとする汐音。俺は思いっきて想いを伝えることにした。
「なら、ひとつだけ。」
「なによ?」
「隣にいて欲しい。」
「はあ。そうね。アンタって私いないとダメだもんね。」
顔を真っ赤にして、呆れたようにもう一度座る汐音。さっきより少し近くて緊張する。
「そーいうこと。マジ頼むわ、汐音!」
俺は照れ隠しではぐらかすように、おちゃらけて見せる。
「ちゃんと、告白してくれたら、いてやらないこともない。」
体育座りして顔を隠しながら言う汐音。
男なら、はっきり言う場面かもしれない。
俺は意を決して想いを言葉にする。
「好きだ。隣で支えて欲しい。」
「そういうことなら、隣にいてやる。」
思ってもみなかった答えに俺は驚いてみせる。
「え、OKなの!?」
「なんて告白したあんたがびっくりしてんのよ!?」
お互い顔を真っ赤にしながら、いつも通りのやり取りが始まる。
「いや、断られると思って!!!!」
「どう考えてもずっと好きでしたけど!?アピールしてたけど!?」
「え!?なんで!?いつから!?えっ!?」
「教えるわけないでしょ!!ばか!」
「えぇええええっ!?」
◆◇◆
それから数年。
とある専門学校の入学前セミナーで、俺は一人の青年と出会った。
名前は『浦河章太』。俺と同じようにネットに小説を載せている人だ。
なんだか出会ったのが、初めてじゃないみたいに趣味や共通点があって話しやすかった。
「助さんが描いてる小説も見せて?」
「え?俺の?……リンク送るわ。なんか恥ずかしいな。」
「これで合ってる?『パスタ・スケカヤ』って言う人?」
「そうそれ。」
「パスタ好きですもんね」
「まあ、かなり好き。」
「……なるほど。……おお、これ面白そうなことやってんね。読もうかな。読んでいい?」
「ああ、それね。一応俺の自信作だよ。読んでみて。」
「では、読んでみます。」
『転生作者のドタバタライフ』完。
最後までご愛読いただきありがとうございました!また、いつも応援とても励みになっています。よろしければ、感想や評価、ブックマークお待ちしております。
ここからは後書きとなります。興味のある方はどうぞ。
まずは、なんと言ってもとんでもないタイトル詐欺作品となってしましたが、楽しんで頂けたでしょうか。
『パスタ・スケカヤ』の一部の記憶を与えられた『茅野創助』が主人公の『作者』になるまでのドタバライフ……でしたね!
非常にややこしいですが、4章はびっくりする展開の連続だったと思っています。個人的には上手く仕掛けられたなと思っております。
10作目ということで、元々これまで描いた作品のキャラクターを出そうとは試みていたのですが、知人より『パスタ先生が鈴蘭の世界に転生して困る姿が見たい』ととんでもないお願いをされまして、制作に至りました。
鈴蘭の話をベースにしつつ、存在感の薄かったキャラクターの掘り下げや活躍の場を作れたと思っています。
実際には原作にあたる鈴蘭よりハッピーエンドになるというなんとも皮肉な話です。
九尾夫妻、創助、雪娘が生きているというのが大きな違いですね。
本来の世界からは変わってしまったけど、変わってしまった世界を捨てることもできない。そんな感じのところで落ち着いたと思っています。
作品のテーマについては、『自分は自分』でしょうか。周りと比較することで傷ついてしまったジン。自分は周りと変わらない普通だと周りを拒絶してしまった創助。この辺りが物語の核となります。
誰にもなることはできないし、唯一の自分を好きになって受け入れること、そんなことをテーマにしています。
汐音については少し掘り下げが少なかったので、解説します。
1章2章を通して、描いていたつもりですが、とにかく人同士の衝突を好まないタイプです。鈴蘭も桃子も友達で好き。だからこそ、内心はどうしたらいいかわからなかった、です。
そのうえで本来の世界では創助は家庭環境の悪化により塞ぎ込むようになります。唯一何も気にせず関われていた幼馴染の変化は、彼女には苦痛でした。なにも理解してあげられず、孤立させてしまいます。その結果彼女は自信を失ったのです。
このお話では自分でそれを乗り越え、前を向き自分の意見を言い出した創助に答えを得られた、それが好意に繋がっています。
もともと主人公を支えるヒロインとして制作しました。というのも桃子や鈴蘭とフラグを立てるのは色々まずいと思ったからです。最初の時点では読者目線だと創助は私だと認識されているので、とても塩梅には悩まされました。
友人は何を読み間違えたのか、カイに桃子がキスをするシーンで、創助にしたと勘違いして『ロリコンクソ野郎って言われないようにな』って言われて背筋が凍りました。なんなら創助は私じゃないし!とネタバレしてやろうかと思ったぐらいです。
汐音への想いも、序盤は娘に向けるような目線を強調していました。
話は逸れましたが、ちなみに、汐音の名前の由来は『キク科セネシオ属シロタエギク』という花です。花言葉は『あなたを支える』。
そこに物事を始めるのに良いタイミングという『汐』を組み合わせて『良いタイミンクで主人公を支える』そんな意味合いで名付けました。
内容としては以上となります。最後まで読んでくださり、ありがとうございます。もし作中に出てきた作品で気になるものがあれば、読んでみてください。
次回作はかなり濃厚な現代ファンタジーを予定しております。お楽しみに。
10作目まで応援ありがとうございました。ここまで描いてこられたのは、皆様のおかげです。
11作目以降も応援して頂けたら、嬉しいです。
それではまた、どこかでお会いしましょう。失礼致します。




