4章5話 少年、主人公になる
目の前に立ちはだかる雲外鏡。俺と瓜二つの姿で不気味な笑みを浮かべている。
世界を救うために、己と戦え。そんなふうに言われている気がする。
鏡に映る俺は酷く邪悪に見える。
これが、罪の意識なのだろうか。
「創助くん。私が勝てば、全ての世界を崩壊させてもらうよ?」
「ああ。俺が勝ったら、ジンや鈴蘭を助けるのを手伝ってもらう。いいな?」
「契約成立だね。では、始めよう。……と、行きたいが、三対一はフェアじゃないね。少しだけ、お遊びに付き合ってもらおうか。」
「なに?」
雲外鏡は俺たち三人を見やると、両手を広げ不敵に微笑む。
「『第一の世界・sinner chronicle』より出でよ、『奈良沢 朱葉』。さらに応えよ『第九の世界・ハザマのアクマ』より出でし、『ナーヴァ』。」
「なっ……!?」
雲外鏡の広げた掌から黒い影が生まれ、徐々にそれは人の形を成していく。
ふたつの影から生まれたのは、一人の黒髪少女と、一人の銀髪天使であった。
「おいおい、マジかよ!?ナーヴァってあのナーヴァか!?」
「あの白い翼を持つ者、知っているのですか?」
練は驚いたように話すと、柊が質問する。
どうやら、天使の羽を生やす女性に心当たりがあるらしい。
ナーヴァと呼ばれたその女性は、銀色の髪の毛に青い瞳、背中から生える美しい翼を持っている。人間らしからぬことは明白だろう。
「ああ、間違いねえ。俺様と鈴蘭が読んでた『ハザマのアクマ』に出てくるキャラだ。見た目はどう見ても天使だが、あいつは悪魔だ。両親をアンリマユっていう魔王に殺され、復讐を望んでいるんだ。」
「で、では、もうひとりの少女は?」
「あの子もこの世界の神様が作ったひとりだ。……タイムマシン開発の陰謀によって、研究者だった両親を亡くした女の子だ。」
俺は見覚えのある少女の方を柊に説明する。実際に見たのは初めてだが、詠唱が全てを物語っていた。
作者が生み出した1作目、sinner chronicleのヒロインだ。
中学校の制服に身をつつみ、鋭い瞳と軽快に揺れるポニーテールが印象的だ。
「そうか、そうだったね。君には『第四の世界・インバート・マリス』まで知識を与えていたね。……なら、もうわかるだろう?朱葉の中には殺人鬼の記憶と人格が植え付けられている。……ほら、朱葉好きに殺していいよ?」
「おいおい、たまんねえなあ。好きに殺していいのかよ?女とガキを殺すときが1番たまんねえんだよな!!!!さっきは婆さんだったからなあ!!!」
可愛らしい見た目の少女から、放たれたとは思えない暴言。黒髪の少女、朱葉は表情を歪ませて微笑む。
どこからか取り出したかわからない包丁には、赤黒い血が染み込んでいる。
『さっきは婆さんだった』という言葉から察するに、一番最初の朱葉だろう。
彼女は自分の手で、愛する祖母を殺したんだ。すべて人体実験の影響によって。
俺目掛けて、襲いかかってくる朱葉。
「ククク、四肢を順番に切り裂いてゆっくり殺してやるからなぁ!!!!」
酷く歪んだ顔で俺に包丁を向けてくる朱葉。
鋭く、読めない動きで迫ってくるが、丁寧に避けていく。
強さ、というより恐怖が先行している。
死臭というのだろうか。彼女からは、死を想起させる匂いが漂う。
「続いていこうか。ナーヴァ。あそこにいる茅野創助くんは、世界の神様だ。君の両親を殺したのは、アンリマユでも、悪魔でもない。あそこにいる少年が君を苦しめるために殺したんだ。シナリオのひとつとしてね。」
「……なに、それ。じゃあ、パパとママが死んだのは、ただの遊びってこと……?」
「そうさ。神にとって、我々はただのおもちゃでしかない。どうだい?憎いだろう?」
「あいつが……パパと……ママを!!!!」
とてつもない殺意が俺に向けられる。雲外鏡は俺がこの世界の作者だと、ナーヴァに言い聞かせているらしい。
酷いやつだ。さっきは俺に作者であるということを妄言だと突きつけておきながら、今度はナーヴァにその妄言をさも真実のように突きつけている。
「もうひとつ言っておくとね、彼には君のパパとママを救う力もあるんだ。でも何故か、其れを彼は拒絶している。なんとか説得できないかな?死なない程度に痛めつけて欲しいんだ。君なら、できるし、君にとっても、有意義なことだろう?ま、殺してしまっても構わないよ?君に任せる。」
「ああああああああっ!!!」
嘘は言っていない。ただ言い方がナーヴァを誤解させるように誘導している。
ナーヴァに殺意を向けられる覚えは無いが、これが作者としてあろうとした俺の報いなのだろうか。
「主!!!!」
ナーヴァは肉体から桁違いのオーラを溢れさせる。見たこともない種類の霊力だが、紛れもなく、この場において最強クラスの霊力だろう。
俺目掛けて飛んでくるが、間に柊が割って入る。
「邪魔を……するなあああああ!!!」
「誰と主を勘違いしているかは知りませんが、あなたはあの鏡に利用されています!!!全てデタラメです!!!騙されてはいけません!」
柊とナーヴァは交戦状態となり、俺は朱葉によって身動きが取れない。
朱葉もナーヴァもなんで簡単に雲外鏡の言葉を信じて、疑わないのだろう。
それに言葉の力が強すぎる。まるで洗脳のような雰囲気さえ感じる。
「二人を元の時間に返してやれ!!!世界をこれ以上歪めてんじゃねえ!!!」
練が雲外鏡目掛けて拳を繰り出すが、体をすり抜け転がる。
「なにっ!?」
「今は楽しむ時間だよ。石妖。」
「しまった!?」
転がり倒れている練の四肢はみるみるうちに石化していく。
「こいつは俺様の……!?」
「言ってなかったかな。私は神がつくりし世界の能力全てを使えるんだ。君の能力も、もちろん使える。」
「嘘だろ!?んなもん、反則じゃねえか!!!」
「世界の真実を知る妖怪だよ。これぐらい余裕だよ。」
勝てるのかこんな奴に。いや、違うだろ。俺達は勝たなきゃいけないんだ。
つい弱気になる自分を鼓舞する。
状況は気持ちいいものではないが、立ち向かうと決めたのだ。進むしかないだろう。
なにより時間が惜しい。
さっきまでの俺なら、作者であり続けていたら、きっと辛かったんだろうな。
でも今の俺は───────茅野創助だ。
俺は作者ではなく、茅野創助。こんなふたりに手間取っている場合ではない。
「避けてばかりじゃあ、死が近づくだけだぞ!!!」
「わかってるよ!そんなこと!!!」
俺は大振りな朱葉の一撃を交わし、包丁を持っていた腕に拳を振り下ろす。
「ぐあ!?」
うまく肘関節に当てることに成功し、包丁は宙を舞う。
そのまま俺は朱葉の腕を捻る。
「あああああっ!!!?」
悲痛な悲鳴が上がり、朱葉は黒い影に飲み込まれる。
恐らく雲外鏡の能力から解放され、元の次元に戻るのだろう。
「なん……で、お父さんとお母さんは生き返られなかったの……?」
殺人鬼から、一人の少女へ戻ったのか、涙を浮かべて俺に聞いてくる。
「俺は作者じゃないからわからない。でも、流れてきた記憶では、悩んでた。そのことをずっと。決して、遊びなんかじゃなくて、本気で悩んでた。でも助ける方法が思いつかなかった。」
「そう……だったんだね。」
「その答えはきっと、光真が導いてくれる。君にとっては、まだまだ先の未来だし、そこに収束するかは分からないけど、彼はずっと研究を続ける。君の隣でずっと。」
「……わかった。信じてみる。あなたの言葉を。……そして、私の大好きな人のことを。」
朱葉は最後に笑っていた。
これでいいのだろうか。
俺には分からない。
それでもきっと、雲外鏡の言うような登場人物をおもちゃにするような、人ではなかったと思う。
「あーらら。つまらない。消えちゃったか。」
不服そうにため息をつく雲外鏡。身動きの取れない練の横に座り込みこちらを見据える。
「主、疲れているかもしれませんが、お力を貸してください!此奴、強すぎます!」
「わかってる!!!行くぞ!」
「はい!!!」
交戦中の柊から声がかかり、俺は意識を集中させる。
「それは止めようかな。……ん?」
「残念だったな。クソ鏡。」
俺の集中を止めようとした雲外鏡であったが、足元が石化していた。
どうやら、練の石化が効いていたようで、身動きが取れなくなっていた。
「よくやったぞ!練!」
「おうよ!行っちまえ!相棒!」
俺は再び、意識を集中させ、柊と感覚を繋いでいく。
二年に及ぶ修行の成果見せてやる。
『……銘打つは我。汝と契りを結ぶ。……我が契約に答えよ!雪娘・柊!……我が体を依代とせよ!』
刹那。目の前のナーヴァは氷漬けになっていた。
ただ一瞬、融合しただけで、意識することもなく目の前の相手を氷漬けにしていたらしい。
「元の時間に還るといい。貴方が炎を燃やすことは、誰も望んでいません。……きっと、お優しい貴方を幸せにしてくれる方が現れますよ。」
「知ったような……事、言わないで……」
「わたしが仕えていた主も、今復讐に身を焦がしているのです。だから、私もやるべき事があるのです。貴方もそうでしょう?復讐をするにしても相手が異なります。ここにいるのは、ただの創助さんですよ。」
「そう……だね。私、どうして……」
刹那。眩い閃光が放たれると、氷は弾け飛び、中にいたナーヴァも消えていく。
降り注ぐ、光と氷。俺の意識と柊の意識は切り離される。
「作者の紛い物が相手だとこの程度の効力か。……『リジェクト』」
何やら、疲れたように呟くと雲外鏡の石化は解ける。
「おまえ、言霊を使っていたな。性格終わってるぞ!!あんな2人と戦わせるなんて!!!」
「言っただろう?私はね実験をしていると。君を本当の作者だと認識したら、世界はどうなるのか、試していただけさ。まあ、結果は何も起こらず、と言ったところか。元の世界に戻り、今ここで起きた記憶は世界によって修正されたようだ。」
「そりゃあ良かったぜ!!!ナーヴァちゃんの隣には清直がいねえとな!!!」
いつの間にか石化から抜け出していた練は俺の隣に並び立つ。
「さすがに自分の能力は、効かないか。」
「あたぼうよ!」
「これで、振り出しだ。降参するか?」
「まさか。君たちは疲労困憊。私は無傷。追い込まれているのは、そっちだよ?」
「じゃあなんで攻めてこない?チャンスだろう?」
「俺様、わかっちまったぜ。お前さんの弱点をな。」
「ええ、私もです。」
「私の弱点?そんなものはないよ。」
「ならなんでお前さんはハザマのアクマでもっとも、厄介なアンリマユを呼び出さなかった?あいつ出せば、勝ちみたいなもんだろ?」
「…………。」
「ええ、それに全ての世界の能力を使える、でしたよね?主を氷漬けにしたり、石化させたり、できたはずです。それにもっと厄介な力も、世界にはあったのではないですか?」
「…………。」
「最後にお前はわざわざ朱葉やナーヴァに洗脳みたく言霊を使った。呼び出した登場人物はお前の支配下にある訳じゃなく、しかもそれ相応の戦う動機が必要だ。違うか?」
「何が言いたいのかな。」
「つまりは、お前には戦う力はない。攻撃を受け流したり、反射したり、すること。攻撃をするためには、相手から攻撃を喰らう必要があり、さっきみたく別世界の登場人物を呼び出す必要がある。」
「……半分正解だ。ククク。」
楽しむように拍手をしてみせる雲外鏡。
「私は鏡だからね。映る対象があってこそ、存在できる。
さっきのように認識できない攻撃には対応できないし、攻撃を受けないと力を発揮でない。
さっき使った『リジェクト』は、『第八の世界・神成のジェネシス』の『サタエル・ルキファー』の力だが、一度別の世界で彼から技を受けて、ようやく発動できた。
お陰で霊力もカラカラさ。」
「なら俺たちの勝ちだな。約束は守ってもらうぞ。」
「勘違いしないでもらえるかな。半分正解と言っただろう?『バリアランス』」
「なっ!?」
刹那。雲外鏡の背後から無数の長方形の塊が出現し、俺の四肢を拘束する。
「創助!?」
「主!!!」
「そんな!?霊力はもう切れたはず!!」
「まあ、そうだね。『この世界での霊力は』尽きたかな。それじゃあ『呪い』。」
「ぐっ!?」
刹那。今度は柊が倒れ足を抑える。
「柊!!」
「てめえ!!今度は何をしやがった!というか、さっきから何してんだよ!!!」
臨戦態勢となり、練が雲外鏡に問う。
「創助くんには、『第三の世界・能天気バリア使い』の『バリアランス』を、雪娘には『第六の世界・ヒトツメ』から『山の妖の呪い』を与えたまでだよ。そして君には『第五の世界・白銀勇者』より『サラマンダーフレイム』を与えよう!」
「ぐっ!?うわああああああ!!!!」
再び、呟く雲外鏡。刹那、練の肉体は炎に包まれる。
「練!?」
俺は動くことすら出来ず、ただ見ていることしか出来ない。
「愚かなものだ。肉体という脆弱な枷を得たことで、石妖は炎をその身に受け、雪娘は妖の呪いを受ける。クックックッ。そして作者の紛い物は、奇しくも作者をモデルとした主人公の力で、身動きが取れない!滑稽と言わずして、なんと表現できる!?」
高笑いを続ける雲外鏡。
考えるんだ、俺。何か奴を倒すヒントがあるはずだ。
いつものように冷静に状況を整理するんだ。
いつだって、そうしてきたように、この危機も乗り越えるんだ。
信じて一緒に戦ってくれている仲間のために、この世界のために、俺のために!!!!
考察から改めないといけない。雲外鏡は半分正解と言っていた。つまり、能力を跳ね返すだけでなく、受けた力であればいつでも発動できるということ。
獲得には霊力を使うみたいだが、獲得してしまえば、異なる世界の力。霊力なんて関係ないということだ。
奴はまだ戦える。幾つもの、切り札を持っている。
奴は言った。『肉体という脆弱な枷』と。人間であることに、この世界に留まることに執着をするから、限界が生まれる。
融合する時もそうだ。存在に固執するとうまく行かなかったじゃないか。
本来、練は石の妖怪。火なんて効かないはずだ。
そして、柊は妖。呪いなんて、むしろかける側だ。
ふたりとも、肉体に囚われているから今の状況に陥っている。
そして俺も。本来なら、体を守る力であるはずのバリアをその身に受け、拘束されている。
すべて肉体に固執しているからだ。
俺はまだ自分を受け入れられていなかったらしい。
ようやく、打開策が浮かぶ。きっと、2人ともそうだ。どこか俺に遠慮しているんだ。
なら、俺が受け入れることができれば、簡単に乗り越えられるということ!
「さあ、どうする!?創助くん!私と共に世界を作り替える気になったかい?なにも崩壊がメインじゃなくてもいい。世界を救うために、その力を使ったっていいんだ。君は間違いなく主人公だよ?」
雲外鏡は歪んだその顔で近づいてくる。もう勝利を確信しているらしい。
今はっきりと、理解した。
世界を玩具にしようとしているのは、紛れもなくこいつだと。
こんな奴に踊ろされていたんだから、滑稽と言われても無理もない。
だが、主人公になるって言うのはいいかもしれないな。
作者に認知もされていなかった俺の物語。ここから始めてやろうじゃないか。
「雲外鏡……それなら、言わせてもらうぜ。」
「何をだい?」
俺は雲外鏡に笑いかけて、決意し、そのまま言葉をぶつける。
「この世界も救えないやつに他の世界救えると思ってんのか?まずはこの世界の主人公になってやるよ。俺の枷を脱ぎ捨ててな!!!」
「……なに?」
「俺は『茅野創助』!!この世界で生まれ、この世界で生きる茅野創助だ!!!人間でありながら、その身を妖怪に落とした茅野創助だ!!!!」
「まさか!?」
俺は体の奥から溢れる霊力全てを解き放ち、ずっと押さえ込んできた『妖怪の力』を解放する。
「俺に遠慮してんじゃねえ!ふたりとも!!!俺はお前らの主だろ!!!持ってけよ!俺の霊力!鏡なんかに負けねえよな!?練、柊!!!」
「ですね。ただの杞憂でしたね。本気で行きます!!!」
「熱くなんかねえな!!!こんな炎!!!!だってよぉ、俺様の心の方が数倍アチィからな!!!」
「馬鹿な!?」
俺も、柊も練も、拘束、呪い、炎を簡単に打ち破りその肉体を妖怪へと変貌させる。
ドロドロと醜い牛の姿。
凍てつく氷を纏う人ならざるもの。
大きな石の化け物。
全員それが本来の姿で、それも含めて己である。
そんなのとうの昔にわかっていたはずなのに、認められずにいた。
「俺は人間であり、人間でありたいと願い、人生に絶望し、そしてこの姿になった。妖怪であり、人間だ。そして、これからもこの先も自分が主人公だ。お前を倒して、世界を救う!そんでもって、めっちゃ幸せになる!」
「今世で受けた恩を主と九尾様にお返しし、今度こそ、人間との楽しい日々を送ります。恋をしたり、夢を語ったり、そんなありふれた普通を望みます。それが私の願いであり、夢です。」
「俺様はただ一つ。後悔だらけだった生き様を、くっそ楽しいもんに変える。今度はぜってえに後悔しねえようにな!」
全員の気持ちがひとつとなり、それぞれに奥に秘めていた想いが溢れ出す。
「盛り上がっているところ悪いが、君たちがいくら攻撃しようとも、私を強くするだけだ!!!!」
「なら、試して見やがれ!!!!」
雲外鏡は余裕そうな表情で腕組をする。練は構うことなく、拳を繰り出しその巨体で体当たりする。
「ふん。無駄だと分からないのか。」
「まだまだ行きますよ!!!」
続いて柊が巨大な氷柱を形成すると、次々に雲外鏡にぶつけていく。
「だから無駄だと……なに?」
瞳を閉じていた雲外鏡だが、焦ったように瞳を開ける。
「もうおせえよ!!!!」
最後は俺が突撃し、渾身の一撃をお見舞いする。
「なぜだ!?なぜ無力化しない!!!それどころか、反射も獲得もできない!!!」
「出来るわけねえだろ!!!」
「なに!?」
「貴方は意識できない力を、反射も無力化も獲得もできない!」
「まさか……それじゃあこれは、一体何を認識できないというんだ!!!」
「世界で遊んでるお前に!!!全力で生きてきた俺たちの『想い』が認識出来るわけねーだろ!!!!!」
「そんな……不確かなものに……この私がぁあああああああ!!!!」
刹那。パリン!とひび割れるような音が世界に響き渡り、白い世界は終焉を迎えた。
◆◇◆
白い世界から、俺の家にもどると、俺たちの目の前にひとつの鏡が置いてあった。
「完敗だ。ちゃんと負けたよ。」
どうやら、雲外鏡は俺の姿から元の鏡にもどったらしい。
「約束通り契約するぞ。言い残すことはあるか?」
「ずっと退屈してたんだ。同じ結末に、分かりきった世界。決められたルールに。
だから壊してみたくなった。誰も見た事ない最高の景色があるって思ったからさ。
私はただ、世界を変えたかっただけさ。決まりきった結末しか用意されていないこの世界を、めちゃくちゃにしてやりたかったのさ。私たちはおもちゃではないと。世界のどこかには私の知らない楽しい世界があると。
……でもそうだな。私こそが世界で遊んでいた、か。いやまったく。その通りだね。私は結局、楽しんでいただけのようだ。
思い知らされたよ。私程度の『想い』じゃ、世界なんて変えられないとね。」
「なんでもわかるって言うのも大変なんだな。……てかさ、本当におもちゃなんだとしたら、用意された結末すらないと思うけどな。」
「どういうこと……?」
「Web小説なんて、結末を描き切ることなく、消える作品とか沢山あるだろ。お前の話が本当なら、この世界の神様は九作品も描いて、ぜんぶ終わらせてんだろ。何時間、何年、かかるんだよ、それ。たとえ趣味だとしても、本気じゃねえの?」
「そう、かもな」
「だったら、つまんねえ事なんか気にせずにさ、この世界も、お前も幸せになればいいんじゃねえの?
最高に楽しくなればいいんじゃねえの?
だからって色んな世界巻き込んだら、たまったもんじゃないけどさ。
……真っ当に楽しんだ先にそれこそ、お前の見たことない世界が生まれるかもよ?
だってそうだろ?真実を知るお前が今、俺たちに負けたんだからよ。この展開、ここまでの流れ、お前は知ってたのかよ?」
「……まったく、君は。もう主人公気取りかい?」
「人生の主役は誰だって、自分だろ。みんな主人公の、最高の作品があったっていいじゃないか。」
「……そうだね。」
ただの鏡に感情も表情もない。
だからこれから知っていく他ないだろう。
なにより、俺にもうひとつ目標ができた。
こいつにこの世界の結末を、観測してもらう。
絶対に面白くなるはずだから。
世界をぶっ壊すより、絶対予想もつかない物語を見せてやる。
俺と契約するからには、退屈させねえぜ。
◆◇◆
その後、俺は雲外鏡と契約を結んだ。
柊と練からは、裏切るかもしれないと念を押されたので、裏切ることの出来ない服従契約を行った。
与えた名は───────繋。
理由はどうあれ、俺を救ってくれたのは繋だ。
そこからたくさんの出会いと経験を積み、今俺はここに立っている。
かけがえのない繋がりを持つことができたと思っている。
そして、これからもたくさんの縁を繋いでいきたいと思っている。
そんな想いで名づけてみた。
「さ、こっからが本番だ。練、柊、繋。鈴蘭とジンを助けるぞ。」
「任せておけ!」
「どこまでもお供いたします。」
「せっかくだ。楽しませてもらうよ。君が言う、面白い世界ってやつを見せてくれ。」
「ああ!!!」
最後まで読んでくださりありがとうございます。よろしけば、感想や評価、ブックマーク等、よろしくお願い致します。作品作りのモチベーションに繋がります。
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