第43話 ユーミと行く野営地温泉ツアー!?
「――決定! アルノ、一緒にお・ん・せ・ん!」
「ちょ……待て待て、ユーミちゃん!?」
現れた魔王ユーミは、再会の挨拶もそこそこにアルノの右腕をがっしりと掴んだ。小柄な体躯からは想像もつかない魔王級の握力。二日酔いのアルノに振り払う術はない。
「ダメだってば!! ユーミちゃん……あんた、現在は魔王とはいえ一国の主、それ以上に年頃の女の子なんだぞ! それに、まだ結婚前だろ!? 貞操観念とか責任とか……!」
アルノが必死に倫理観を説くが、ユーミは頬を膨らませてジト目でアルノを見上げた。
「ええー? ……そんなの、関係ないもん。それに、それは……」
ユーミは少しだけ顔を赤らめ、アルノにしか聞こえないような小さな声で呟いた。
「……アルノが、なかなか……告白してくれないからでしょ」
(な……っ!?)
アルノが言葉を失い、心臓が爆発しそうなほど跳ね上がったその瞬間。
背後で成り行きを見守っていたエトリエルとルファスの視線が、鋭く重なった。
((……なるほど。そういうことね))
((……そういう仲だったんだ、アルノ))
精霊の鋭い洞察力と魔族の勘が、アルノの「過去のしがらみ」の正体を瞬時に察知した。元竜騎士と魔王。戦時中、何度も刃を交え(あるいは秘密裏に茶をしばき)、平和への誓いを共にした二人の間に流れる「特別な空気」に、二人は納得の声を(心の中で)上げた。
「ねえエトリエル、魔王様も入るって言うなら、私たちもご一緒しましょう?」
「いいよルファス! アルノを囲んで『温泉会議』だね!」
「おい待て、お前らまで乗っかるな! 話を聞け!」
アルノの抵抗も虚しく、銀等級の農夫、上位魔族、高位精霊、そして現役魔王という、歴史上類を見ない豪華(かつ地獄絵図)な温泉パーティーが結成された。
湯煙の向こうで待ち受けるのは、安らぎか、それともアルノの理性の崩壊か。
リーディアの夜は、まだまだ更ける気配を見せなかった。




