第38話 ポイズンワイバーンとの死闘
「グオオオオオンッ!!」
大気を震わせる咆哮と共に、変異したポイズンワイバーンが急降下してくる。その巨体から放たれるのは、生物の生気を吸い取るどす黒い魔毒の波動。だが、それに対するアルノの瞳に迷いはなかった。
「……システム、フル・アクティベート」
アルノが低く呟いた瞬間、彼の周囲の空気が爆ぜた。
かつて帝国最強の竜騎士として戦場を支配した全スキルが、農夫の皮を脱ぎ捨てて覚醒する。
(剣格闘士オン、魔術格闘士オン、槍術士オン)
(火術オン、氷術オン、風術オン)
(マスターオブソーズメンオン、ライドスクワッドオン、空戦オン)
物理、魔法、そして対竜戦闘に特化した最高位の技術。それらが複雑に絡み合い、アルノの身体能力を極限まで引き上げた。銀等級のプレートが、彼の放つ圧倒的なプレッシャーに共鳴して激しく震える。
「さあ、こい」
アルノは地面を蹴った。農夫の靴とは思えない速度で、垂直に近い岩壁を駆け上がる。
迎撃にワイバーンが口から毒液の塊を吐き出すが、アルノは空中で「風術」を編み上げ、自らの軌道を変えてそれを回避。そのまま「氷術」で足場を瞬時に凍らせて固定し、さらなる跳躍を見せた。
「――空戦術、第一式『昇竜断』」
手にした採取用の鎌に「火術」と「マスターオブソーズメン」の加護が宿り、白熱する魔力刃へと変貌する。
すれ違いざま、ワイバーンの翼の付け根を一閃。
肉を焼き斬る音と共に、変異した怪物の悲鳴が山嶺にこだました。
「グガァッ!? ギ、ギイィィ!」
「まだだ、これでおしまいじゃないぞ」
着地と同時に、今度は「槍術士」の技術を応用し、地面に落ちていた枯れ枝を拾い上げる。そこに莫大な魔力を流し込み、光の槍へと変えて投擲した。
ドォォォォォンッ!
槍はワイバーンの尾を貫き、岩壁へと縫い止める。自由を奪われた怪物は、必死に毒を撒き散らして抵抗するが、アルノの展開する「魔術格闘士」の防御膜を突破することはできない。
「ルファス、エトリエル! 動きを止めたぞ! 浄化と掃討、一気にやれ!」
アルノの怒号が響く。背後で待機していた二人の「規格外」たちが、主人の期待に応えるべく、その真の力を解き放とうとしていた。




