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元竜騎の俺は郊外に住んでいたが王国騎士団長は俺をどうやら冒険者にしたいらしい  作者: みなと劉


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第13話 ギルドの罠と消えた安息

昨日の骨粉撒きで、土の状態は最高だった。

 アルノ・ステルモは、朝の清々しい空気の中で「今日こそは、誰にも邪魔されずナスに支柱を立てるんだ」と心に決めていた。

 だが、世の中というものは、往々にして一人の男のささやかな平穏を許してはくれない。

 ――またしても、あの聞き覚えのある重厚な軍馬の足音が近づいてくる。

 「……嘘だろ」

 アルノが腰を上げた瞬間、家の前に現れたのは、もはや我が物顔で馬を降りるセルマ・アンドルフだった。

 「おはよう、銀等級のアルノ。今日も良い朝だな」

 「はいはい、おはようございますセルマ騎士団長どの。……で、何か? 今日は非番か? だったら自分の家の庭でも手入れしてろよ」

 「残念ながら公務だ。いや、正確には君の同行だな。ギルドへ本日も顔を出すのだろう?」

 アルノは手に持っていた支柱を地面に突き刺し、呆れたように言い放った。

 「何を言ってる。俺は一度きりだと言ったはずだ。一回仕事をこなしたんだから、もう『引退した冒険者』でいいだろうが」

 すると、セルマはわざとらしく小難しい顔をして、懐からギルドの規約書のようなものを取り出した。

 「いや、それがだな。基本、一度登録をした所属ギルドの一員は、緊急時の連絡体制を維持するために、数日に一度は顔を出す決まりがあるのだよ」

 「……は?」

 アルノの動きが止まる。

 「な、なにぃ……!? そんな話、聞いてないぞ!」

 「特に君のような銀等級は、王国の防衛戦力の一端とみなされるからな。所在不明は困るのだよ、アルノ。冒険者は自由な職業だが、その分『義務』もあるというわけだ」

 「俺のスローライフはどこだ!?」

 アルノの絶叫が、静かな郊外の空に虚しく響き渡った。

 庭先で小鳥たちが驚いて飛び立つ。

 「まあ、そういう感じだ。さあ、馬を出せ。遅れるとボリスがうるさいぞ」

 「だ、騙された……!? だってマスターのボリスは『一度だけやってみて、嫌だったら辞めていい』みたいなことを言っていたはずだぞ!」

 「ああ。それは『能力的に無理だ』と判断された場合の話だろう? 君、昨日の今日で『無理でした』は通らないぞ。あんなに完璧に魔物を細切れにしておいて……」

 「……!! ……あ」

 アルノは昨夜の自分の大暴れを思い出し、言葉に詰まった。

 確かに、あんな実力を見せつけた後で「実力不足なので引退します」などと言っても、誰も信じるはずがない。むしろ、ボリスやセルマのような食えない男たちが、その「力」を手放すわけがなかったのだ。

 「くっそ……あの強面親父め、最初からこれが狙いだったか」

 「人聞きが悪いな。人助けだと言ってくれ。さあ、行こう。今日はギルドの後に、美味い昼飯の店を教えてやろう」

 「飯で釣られると思うなよ!」

 そう言いながらも、アルノは渋々家の中へ戻り、昨日脱いだばかりの冒険者装束に手を伸ばした。

 どうやら、彼のスローライフへの道のりは、想像以上に高い壁がそびえ立っているようだった。

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