エメラルとルベル 5
……後から思えば。
このノインという天使は、エメラル達にとって劇薬以外の何者でもなかった。
なんせ彼は、良くも悪くも沢山の知識を持っていたのだから。
生物学、地理学、物理学、化学……ありとあらゆる書物を読み漁り、実験を繰り返す。
この世界を解き明かそうとする異端中の異端児――それがノインだった。
だからこそ、その考え方はそもそも普通ではない。
独特だった。
哲学者のように理屈っぽく、夢想家のように自由で、子供のように無垢でもあり、冒険家のように未知の可能性を信じている……。そんな一言では言い表せない人物だった。
ルベルがエメラルには理解出来ない違和感や悩みを話しても、ノインは真剣に聞いた。面白がってもバカにはしなかった。
それどころか、ノインはルベルに対し客観的な視点で分析してみせた。
「はっきりとした性自認を持ち、鉄の体に違和感を持ち、色々なことに興味を持つ……かぁ。君はもしかしたら、生まれつき生体パーツの方にアイデンティティが傾いているのかもしれないねぇ。そっちの感覚を大事にしている……というか」
「……言われて見ればそうかも。アーカイブに入るより、実際に体を動かした時の方が、習熟度も高いし」
「へぇ。それは面白い。君の中には、他の天使にはない視座が眠っているんだねぇ。興味深いよぉ、本当に」
それからノインは何を思ったのか、ルベルを外に連れ出すようになった。
デート……と言えば聞こえが良いが、実際のところは、ノインの趣味である自然調査などの雑用役としての抜擢だ。後は魔力汚染の浄化作業の補佐役か。
ともかく色っぽいものとは無関係だった。
そのためエメラルとハナビも面白そうだからと連いてくれば、丁度良いとばかり、容赦無くこき使われた。
要らぬ苦労を増えたが、しかしノインの良いところは、いちいち話が上手く、楽しませようとしてくれることだった。
――悪魔も魔獣も掃討されたハウダロン領。
一時的にだが安全地帯となっており、戦場から離れた部分には、まだ綺麗な森や草原、湖が残っていた。
そんな場所でさえエメラル達にとっては新鮮で、不思議なこと、疑問に思ったことがあれば、すぐにノインが解説してくれたのである。
とても分かりやすく、そして丁寧に。おかげで思わず聞き入ってしまい、随分と“色んな知識”が増えた気がする。
自然の中で出来る遊びも、この時教えてもらった。
特に身近な素材で作れるエルフォリア・ハリルの制作は、その後もエメラルの趣味として続くこととなる。
ノインとの大事な思い出だ。
ハナビの方も、ノインに影響された。
きっかけは、ノインが気まぐれに話した異世界の知識。
「そう言えばこういう深い森の中には、かつて忍者が潜伏してたというお話しが……」
「ん? 忍者? 何ですかそれ?」
「えーと、なんて言うか密偵? 間者? 異世界にはそういうのがいたって本に書いてあってぇ……でも、実在したかはちょっと謎でぇ……あ、丁度ハウダロンに来る前に、持ってた物があったんだよぉ」
そうしてノインが懐から取り出したのは 一冊の本だった。
それは所謂漫画本で、当然ながら漂流物なので文字は異世界独自のものだ。
だがその下には赤ペンでこっちの言語の文字で訳が書かれてある。しかし翻訳はまだまだらしく、これだけは持ち歩いているらしい。
なんでもその肝心の中身こそ、忍者が活躍するバトルアクションものだと言う。
タイトルは「ナヌトスレイヤーズ」だの、なんだの……。
「でも異世界の文字を翻訳出来るなんて、普通は無理ですよね? どうやって解読したんですか?」
「んーとねぇ、まずは映像媒体と、それを流すためのデヴァイスを用意して、映画とかアニメを流すでしょ? すると時々下に字幕があるのに気付いたんだよぉ。後、物によっては複数の言語に切り替えることが出来て……それがきっかけで、発音とかが分かったんだよねぇ」
「へぇ」
とは言えその作業量は膨大だったはずだ。
ようやったなあ……そうエメラルとルベルが感心している横で、ハナビが「中がどんな風か気になる」と言い始めた。
まあハナビの趣味は読書だし、漫画本なんてこっちの世界では生成AIが主流だから、人の手で描かれたものが珍しいのだろう。
だからか、ノインは快くハナビに漫画本を渡したのだった。
「うん。途中までは翻訳してるから、楽しめると思うよぉ。どうぞぉ」
「ありがとうございます! やったー!」
と……そういった経緯でハナビの手に渡った漫画本。
実際にエメラルも一部見せてもらったが、確かに面白かった。ルベルはよく分からないと言っていたが、それでも斬新さは感じたようだ。
で、そんな漫画本、たった一つだけ問題があった。
実は登場人物の口調の語尾に、すべて“ござる”がついていたのである。
ノインの翻訳は完璧に近いが、忍者=ござる口調が多かったために、そのセオリー通りに訳してしまったのだ。
結果――
「いやあ、マジハンパなかったでござるねぇ。マジ、ヤバかったんでござるよぉ」
などと怪しげな口調で笑うハナビが爆誕した。
それと何故か性格も変質し、若干ハイテンションにもなった。
どうしてこうなったのだろう。初めてこの様子を見た時、絶句したのを良く覚えている。
ノインの「ごめんなさい」という申し訳なさそうな顔が酷く印象的だった。
「ハナビさんが……私のハナビさんがぁ!」
「すまんでござる、エメラル君……けど口調は治りそうにない……いや治したくないんでござる、拙者は!」
「は?」
とエメラルが固まったのを気にせず、ハナビは熱を込めて語り出す。
目をキラキラとさせて。
「拙者、こんな世界があったなんて知らなかったんでござるよぉ! 忍法に手裏剣、熱い友情、努力、勝利……熱いパトスが弾けた結果、忍者の言葉をラーニングしたのでござる! 元に戻るということは、それを失うことと同義! 嫌なんでござる!」
「は、はいーーーー!?」
「もし拙者を元の自分に戻したければ、勝負に勝ってから申されたし。そういう展開が漫画であったでござる!」
「いや漫画にあったのかよ」
ルベルが突っ込むのをよそに、だったらとエメラルも燃え上がる。
意外と子供っぽくムキになりやすいのを、彼自身自覚などまるでしていなかったのである。
そこからエメラルは、あらゆる勝負をハナビに仕掛けた。
腕相撲、音楽ゲーム、しりとり、その他etc……。
その尽くをハナビは圧勝せしめ、エメラルは惨敗して更に闘志を煮えたぎらせた。
「うう、次こそは、次こそは絶対勝つ!」
「なははは! またの挑戦受け付けるでござるよー!」
調子良く笑うハナビに、エメラルはむうと拗ねたのは言うまでもなかった。
以来、事あるごとに勝負をしては、エメラルが負け続けるというのが恒例行事になっていく。
……十七年経った“現在”では、その機会は数える程しかなくなったけど。
この時は仲良く遊んでいるように見えたのかもしれない。
その様子に、ルベルから呆れたように呟かれた。
「仲良しだなあ」
微笑ましいものでも見るかのように。
苦笑混じりで。
――それは戦場から離れた、一時の平和な時間だった。
◆◇◆◇
と……こんな風に、エメラルとハナビに多大な影響を及ぼしたノイン。
再度繰り返すが、彼は前述した通り普通ではなく、エメラル達にとっては劇薬だった。
その存在を持ってエメラル達を大きく変えてしまった。
だがノインの一番厄介なところは、実のところその思想ではなく、いつの間にか人の懐に入り込み、惹きつけてしまう部分にあった。
それはカリスマとはまた違うものだ。
この人なら大丈夫かもしれない、という油断を誘うような包容力。加えて命の恩人という信頼出来る立場の人物が、今までになかった価値観を面白くおかしく話すのだ。
しかもこれで一切騙そうという気持ちがないのである。
だからこそ否応なく引き込まれてしまうのだ。
いつの間にか、その異端の思想を受け入れてしまう。
いつの間にか、その思想を許してしまう。
正直言えば、あの異世界の漂流物を見せられた時点で、エメラルの中でもノインに疑念が生まれかけていたのだ。
もしかしたら、ルベルから引き離したほうが良いのではないか、と。
しかしノインと接するうち、警戒心なんてのは溶かされてしまって、逆にノインの価値観に染まっていく自分を感じた。
ありのままに、心の赴くままに、笑い、泣くノインは、本当にキラキラして見えたのだ。
彼は楽しそうだった。
こんな風に自分も生きたいと思わせる程に、ノインの在り方はエメラルに少なくない衝撃を与えていた。
ならばエメラルとは別に、ルベルにはどんな風にノインは見えていたのだろうか。
エメラルでさえこんな有り様だから、好意を抱くルベルにとって、この異質な天使はさぞ魅力的に思えただろう。
そんな奴がささやく知識、常識が、それこそ根底から世界をひっくり返すような物だったのは想像に難くない。
とは言え、実のところルベルが魔女になったのは、そう言ったものだけでなく、この自然観察の中で数々の生き物に触れ合ったことも大きかった。
例えばある時、丸々とした果実を実らせた大樹を見つけたことある。
その実は赤く熟しており、名前は甘露林檎と言って、その名の通り甘くて美味しいことで有名だった。
実際その大樹には小鳥や動物が集まっていて、一心不乱に黙々と林檎を食べていた。
だが天使からすれば、それはあまりにも不便な行動に見える。
エネルギーを補給すれば良いだけの自分達と違い、非効率的な体の作り方だ、とエメラルは思った。
むしろ体内に異物を入れるなど、とても出来るとは思えない。
それが一般的な天使の思考である。
つまりは食事の行為そのものが生理的に無理なのであった。
けれど。
ここに普通ではない者が二人――そう、ノインとルベルだ。
ルベルだけは何かを感じたように林檎をじっと見つめており、そしてノインはそれを察してか、その果実を取ってルベルに渡したのだった。
「食べるの、試してみる?」
と。
「げぇ……」
思わず引いてしまったエメラルとハナビ。
二人を他所に、ルベルは驚きつつもやがておずおずと受け取り、シャクリと林檎に齧り付いた。
モグモグと口を動かし……やがてパッと顔を明るくさせる。
「〜〜〜〜! 何これ、すごい! ジュワッてしててて、すごく中で広がってる!」
「そうだねぇ。それが甘いって感覚だよぉ……エメラル達もどう?」
「え、いやいやいや! 無理無理無理無理!」
「そっかぁ。うーん、気持ちは分かるからなんとも言えないねぇ……
と、そうしてノインは困ったような笑顔を浮かべ。
自身の分も林檎をもぎ取って一口食べると、
「うん。刺激としてはまずまず……この甘味の由来は地質によるもの、それともこの遅れてくる風味は……ぶつぶつ……」
なんて呟く。
それは食感を楽しんでいというよりは、どちらかというと、毒を打ち込んでその反応を確かめ、面白がっているのに近かった。
まあ……実質、そういうことをノインが裏でこっそり日常的にやっていたと知ったのは随分と後だったが……これを機にルベルが食事という概念を知ってしまったのは間違いない。
このことをきっかけに、彼女はすっかり食べることが趣味になり、釣りをしては魚を焼き、狩りをして野鳥を捌いて、試行錯誤をしながら料理にハマった。
相変わらずそんなルベルをエメラルとハナビのコンビは“ヤバい”と思っていたが、一応飲食をしても平気な肉体構造を天使はしているので、何とも言えなかった。
それに美味しそうに食べてるルベルが自然体だったのも大きい。
でもルベルだって、エメラル達の困惑には気付いている筈だった。
それでも食事の趣味をやめなかったのは、一つはノインが肯定してくれたから。そしてエメラル達もノインの価値観に染まって、変わってしまっていたから。
今更自分まで取り繕たって……と思ったのかもしれない。
とは言え配慮はしていてくれたようで、こっそりと誰も見ていないところで食べていたが。
だがその興味の対象は、生き物の食性にまで向かうこととなった。
――しばらくしてから、ノインは余計な動物まで観察し始めたのだ。
それは死屍鳥という鳥だった。
見た目はハゲワシにそっくりだが、愛情深く繊細で、頭の良い鳥だ。
ただ何故こんな不吉な名前かと言うと、彼らの主な食事が腐敗肉だからである。
他の捕食者の食べ残しを狙うスカベンジャー。
それが死屍鳥という生き物の習性だ。
仲間の亡骸も例外ではない。
子供であろうと大人であろうと、たとえ一番偉い長であろうが、死んでしまえば死屍鳥にとってはただの肉となる。食糧難に合えば、この死肉を奪い合い、仲間割れを起こすこともあるという。
ただし普通の状況下であれば、身内の死肉を食べる行為は彼らの中で特別な儀式と化する。
食べる前には必ず死謝舞と呼ばれる踊りを行い、厳密なルールに従い、順位の高い者から肉を食べ回すのだ。
一説によれば、これは死屍鳥なりの葬式であるらしい。
彼らは優しいからこそ、死体であっても尊厳を踏み躙ることなく、敬意を持って残らず死肉を食べ尽くすのである。
だがそのような死屍鳥の行動を、エメラルとハナビは心底エグいと感じた。
野蛮であるように感じられたのだ。
死体をリサイクル方がよほどマシだろうこれは……という天使ならではの見下すような考え化が原因だった。
ただし……やはりここでもルベルの反応は、他とはまったく違っていた。
感心するような、それでいて惹かれるような……。
死屍鳥の番が子に餌をやる時、それがいくら酷い死体であっても目を背けることはしなかった。
まるで、あの鳥に共感しているようだった。
もしかしたら、彼女は命のサイクルの輪の中に入りたかったのかもしれない。
普通に生きて、普通の自然の中で死んでいく。
それがきっと、ルベルにとって一番の幸せだったのだろう。
そんな風に思うルベルは、やはり天使として欠陥品だった。
その精神性はエラー塗れで、ありもしないものに焦がれ続けていたのだから。
そうしてついには――動物の繁殖行為まで目にしてしまい、エメラル達がゲンナリする中(体の一部を内に入れるなどどうかしている)、彼女だけは食い入るように顔を真っ赤にさせ、以降頭の内でどう結びついたのか、狂ったようにノインのアーカイブ内にある漂流物の恋愛本を読みまくり、“結婚”なる概念を知ってしまった。
当然、様子はどんどんおかしくなっていった。
妄想が膨らんだのか、ノインの鎖骨や首筋に視線を移動させるだけで、頬を染めるようになったのである。
それからノインに確認するようにモジモジと、
「あ、あの、ノインはさ、俺と話すのとか……結婚……とか、特別な関係の先になるのとかって……嫌じゃなかったりする?」
などと言ったりもしていた。
それは最早告白に等しかったが、そのことを分かっているのかいないのか、ノインはうーんと真面目に考えて、
「そうだねえ。そうなった場合もまた、面白いかもねぇ。君と一緒にいると楽しそうだし」
「そ、そうか!? じゃ、じゃあ……」
「あ、そうなると名前はやっぱり変わるのかなぁ。ケルビムを苗字とすると、ルベル・ケルビムになるとか……」
「ふぇ……」
するとルベルは惚けた顔で、「ケルビム……ケルビム……ケルビム……」と呟き始めた。
クリーンヒットである。
ノインは更に流れるように追い討ちをかけた。
「うん。思った通り、君は本当に興味深いねぇ。自然観察に連れてきて正解だったよぉ」
「へ?」
「君は僕にすらない思考を持ってる。故にこそ、君を介することで、また物事に対し違う解釈をすることが出来るんだ……君と過ごす時間は僕にとってもすっごく有意義なんだよぉ。ありがとうルベルちゃん」
そう言われ、途端にルベルは動揺して目を泳がせる。
満更でもないくせに、そんな馬鹿なとかみたいな顔をするので、始末に置けない。
と、ここでトドメと言わんばかりに、もう一押し。
「これからも近くで、君の考えや意見を聞かせて欲しい。僕と共に、一緒に来ないかい?」
そして、この後も一緒に戦ってくれる? と。
真っ直ぐに真正面からノインは頼む。
その眼差しに、嘘は微塵も見当たらなかった。
だからこそルベルは嬉しそうな顔で微笑んで、思いっきり頷いた。それはもう思いっきり。
きっと彼女は舞い上がってしまっていたのだろう。
初めての恋に夢中だったから。
――その後に訪れる悲劇のことなんて、思いもせずに。
◆◇◆◇
こうして数週間はあっという間に過ぎていった。
当然ノインは別の場所へ移動することとなり、だがそれにルベルもまた同行することとなった。
上層部にもルベルの活躍は聞こえていたらしい。スピード出世で地位が上がったからこそ認められた栄転だった。
と言っても寂しくなるのに変わりはない。
別れ際には涙ながらにお礼を言われた。
「エメラル、ハナビさん。二人のことは一生忘れない。本当にありがとうございました!」
「うん。そっちこそ元気でね!」
「ああ。――またいつか!」
そう言葉を交わして、離れていく背を見届けた。
だがこれが今生の別れではない筈。
もう一度会えるだろう。
エメラルはそう信じていたし、ルベルも同じように思ってくれたに違いない。
そしてその後エメラルとハナビもハウダロンから移籍し、輸送任務の部隊であくせくと働いた。
危険な任務も多かったが、それなりに楽しい毎日だった。
だが……それも長くは続かず。
再びエメラル達はこの世の地獄を経験することになる。
それは実に約一年後のお話である。
まさか、あんなことが起こるとは思わなかった。
――ずっとマザーのためセラフィムの地位を目指していたノイン。
そのノインは大半の自我を焼き切られ、マザーの本体に組み込まれた。
マザーのワガママによって。
それが――ルベルが魔女に堕ちるそもそもの始まりだった。
ざっくり設定18
天使の食性、性行為に関する感覚
天使は基本的に飲食をせず、むしろ生理的に忌避する傾向にある。彼らにとって体内に異物を入れるという行為はあまり好まれず、同様に性行為すら拒否感を感じる。とは言え飲食自体は可能。大抵の毒物は分解出来るし、生肉もいける。時々その味にハマり料理をする天使も中にはいるが、大半は変態と見做されその意味で言えばルベルは相当な変わり者。ニョクス時代になると化け物扱いである。
一方で当然ながら性行為をすることは不可。せいぜいがキスをする、軽く触る、触れ合う、翼を弄る、などのスキンシップが中心であり、おしべめしべが販売するエロアニメも実のところこういった場面を切り取った微エロと呼べるかどうかの代物である。
しかし更に過激な現実寄りのAVがおしべめしべにより発売されているとの噂もあり、夜な夜な仮想空間でファンにより取り引きされているという……。色々と彼らは末期である。
甘露林檎
赤く水々しい林檎。その名の通りたいへん甘く、中に蜜がたっぷり詰まっている。
ルベルが初めて食べた物で、大好物。この林檎を使ったアップルパイが彼女のお気に入り。自分より他人に作ってもらう方が嬉しいらしい。
死屍鳥
世界に広く分布する腐肉食動物の鳥。見た目はハゲワシに似ているがそれよりも一回りは大柄。厳密には完全な腐肉食ではなく、狩りも行うし果実も食べる雑食性。どんな死肉でも食べることが出来、仲間の亡骸ですら共食いするが、愛情深く仲間思いなことから、死体を無駄にせず順に食べ回す“葬式”の儀式を行う。
魔獣化した種類も存在し、そちらは死呼怪鳥と呼ばれる。七つの大罪の一人、〈暴食〉のベルゼブブが使役する使い魔として有名。
こちらのタイプは体長二メートルにも及び、魔力汚染のせいで中身自体が腐敗したゾンビの魔鳥。骨が剥き出しの翼と腐敗で溶け出した肉体の通り知性はなく、死体そのものが魔獣となったよくある例の一つである。